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町を巡る情勢

第二部開始です。

 サナッタ・シティの夜が更けると、ならず者や無法者といった表の世界を嫌う人間が動き出す時間となった。 

 サナッタ・シティにおいて最も広大な区域である”モーリス・タウン”を支配しているマフィア事アーサニーク。

 そしてアーサニークがボスを務めるマフィアのファミリー【アーサニーク・ファミリー】の拠点の一つにおいて、金庫番を務めている二人の男は退屈そう見張りを続けていた。


「……なぁ、最近思うんだけどさぁ、ウチのファミリーってぇ……なんかヤバくねぇ?」


「ちょー! お前ココでその話題はマズいってー!!」


「大丈夫だっってぇ! 今この部屋周辺には誰もいねぇ時間帯だからさぁ。

 そんな事よりお前はどう思ってんだよぉ、ウチのファミリーの現状」


「……正直良い状況だとは思ってねーよー」


「やっぱお前もそう思う?」


「そりゃなー!

 何か最近買収して黙らせといた騎士や行政官がどんどん捕まってる所為で、前みたいにこの街で好き放題やれなくなったしなー

 その所為でここ数カ月ウチのファミリーの勢いが目に見えて落ち込んでってるのは、誰の目から見ても明らかだしよー」


 金庫番の二人が言うように、ここ最近アーサニーク・ファミリーの事情は良くない方向に進んでいる。

 その原因の一端は、金を握らせ望む物を提供してやる事で、この町の行政官や、治安維持を担当する騎士といった自分たちの活動の障害になる存在を黙らせていた。

 さらにこの街ことサナッタ・シティには、八年前に起きたこの街と大規模マフィアの集団における抗争において、マフィア達はこの街を構成する13の地域の内、6つの地域の支配権をマフィア達は強奪した。

 もっともこの街とマフィアの集団における抗争の決着は、マフィアの集団を取り纏めていた首領が死んだ事で、この街の勝利という形で終わっている。

 しかし、このサナッタ・シティに拠点を構える事でこの街に根付き、この街に眠る【ある物を探すように”ある存在”から指令を受けていた】マファイ達はその目的を達成させており、尚且つこの街における自分達の支配域を広げよようとしていたため、実際の所この街とマフィアの戦いはまだ終わっていなかった。


 特に地域支配権を得たマフィアの中で、最も堅実で着実な考えを持ち己の保身を優先して動く男であるアーサニーク。

 彼は自分が支配する地域モーリス・タウンは、この街で力を持った地域である”アーク・タウン”から最も遠く離れている場所かつ、自分が侵攻する時点で最も様々な方面における力を持っていない地域である事。

 そして自分以外のマフィア達が【我先にと、()()()()()()()()()()()を達成するのを優先し、派手に立ち回る事】を見越していた。

 もっともアーサニークも同じ指令を受けている以上、他のマフィア達に対して援助はするが自分のやってる事が明るみにならないように努める事を優先しつつ、ある存在に対しても指令は遂行している様子を見せつつも、アーサニークは自分の城の守りと私腹を肥やしていた。

 こうしてアーサニークの思惑通り、表立ってこの街にちょっかいを掛けてくれる()()()()のマフィア達を隠れ蓑とし、アーサニークはモーリス・タウンを自分にとって都合の良い場所に徐々に変えていた。

 

 しかしこの八年の中の一年で起きたこの街の情勢の変化は、アーサニークにとって思わしくない事ばかりだった。

 始まりはアーサニークと同じマフィア派閥のブローウニンが何者かに惨殺されたのが始まりで、その後数年毎に派閥のマフィア達は姿の見えない何者かの手によって、司法の元で裁きを受けた事で、アーサニークの隠れ蓑が次々と姿を消していった。

 最もいつか自分以外のマフィア達が「いつかこの街から消える」可能性も見越してアーサニークは動いていたが、予想以上に早い期間である【たったの七年で】マフィア達の勢力は、アーサニークを残して次々と何者かの手で次々と消えていってしまった。

 これはアーサニークにとっては大きな誤算であり、今まで自分の隠れ蓑としていた存在が一人も居なくなってしまった事で、今まで目立たないようにしてやり過ごしてきたこの街の治安と行政の目が、アーサニークの支配するモーリス・タウンに強く向けられるようになったのだ。


「でもさー、やっぱりファミリーの勢いが落ちた切っ掛けってさー

 やっぱりアレの所為じゃねー?」


「それなぁぁ! やっぱアレの所為だよなぁ? 何って言ったっけぇ?? 漆黒の髑髏???」


髑髏の闇騎士(ダークナイト・スカル)だってのー!

 ウチのファミリーに大々的に喧嘩売って来る奴の名前ぐらい覚えとけよー……」

 そう!

 金庫番を務めている男二人が話題に出した髑髏の闇騎士こそ、アーサニーク・ファミリーにとっては最も厄介な存在だなのだ。

  その名は闇夜に悪を叩き潰す姿を見たこの街の住人によって名付けれらた異名でしかなく、騎士と呼ばれているが何処かの騎士団に属している訳ではない。

 そしてどこからともなく現れる神出鬼没の存在で、率先してマフィアのようなこの街を危険に晒す存在と戦っている。

 要は「悪事を働く存在」に対して容赦なく裁きを下す活動を裏で行っている彼は、アーサニーク・ファミリーを含む悪党と呼ばれる存在とっては邪魔なのだ。


そして、その実態は謎に包まれている存在である為、その行方を血眼になってファミリーは探してはいるが、何の足取りも掴めていない。

 それに髑髏の闇騎士はこの街の治安を維持する騎士団に対しても一線を引いた行動を取る為、裏の情報網にも表の情報網にも引っ掛からない存在である。

 そのため【髑髏の闇騎士に関しては例えどんな情報網を辿っても何の情報も得る事が出来ない】とされ、この街の住民にとっても謎に満ちた存在であった。


「ファミリーに喧嘩売って来る奴と言えばさぁ、聖騎士隊(パラディン・ナイツ)って奴等も大概うちらに喧嘩売ってきてるよなぁ?

 何かこの前もウチのファミリーが経営するパブに突如入ってきたと思ったらぁ、瞬く間に店員に扮したファミリー達をボコボコしちまった後にぃ、パブに隠してた裏取引に使う武器を強引に押収していったらしいぜぇ」


「うっわ……俺等も悪モン扱いされてっけどさー、その話聞くと聖騎士隊もあんま俺等とやってる事は変わんねーよなー!」


「ホントだよなぁ。

 それにアイツ等がファミリーの飼い犬の騎士達の事を調べ始めたのが切っ掛けなんだろぉ?

 飼い犬共が次々と俺等のシマから締め出されてるのってぇ」


「聖騎士ってのもロクな事しねぇなー

 アーサニークさんがさっさとアイツ等丸め込んでくれねぇかなー?」


「アーサニークさんも最初はそのつもりだったみたいだけどよぉ。

 その前に俺等のシマに居る騎士が俺等のやってる事見逃してんの、髑髏の闇騎士に知られた直後に聖騎士隊にも知られちまったから、アイツ等買収するのも難しい状況みたいだぜぇ」

「あ゛ぁぁ~!

 コレだから王都から来た真面目だけが取り柄のクソ野郎共はー!!

 ってかさー、この数か月で何人ウチのファミリーの人間ムショ送りになったっけー?」


「そんなの数えてねぇけどぉ……ざっと100人近くは冗談抜きでムショ行ったんじゃねぇ?」


「そんなにかよー!?

 そりゃウチの勢いも落ちて来るわなー!!」


 自分の支配する地にて力をファミリーの規模で示しつつ、例え力以外の面である司法や行政といった多方面からいらぬ横槍が入れられそうになったとしても、アーサニークは他所から横槍を決して入れられる事がないように、本来モーリス・タウン住民の味方となる行政から司法、そして治安、要は町の全てをアーサニークは牛耳る事で、この町を内外から自分を守る鉄壁の要塞にしようと企てていた。

 しかしそんなアーサニークの築いた鉄壁の要塞に、正面から堂々と横槍を入れようとする存在が現れる!

 それこそこの世界を統治する王国から訪れた王国騎士の特別隊である”聖騎士隊”なのだが、要らぬ横槍を入れようとする聖騎士隊であっても、いつかは「モーリス・タウンの騎士達の様に買収するなり弱みを掴んで、自分の城を守る為の駒の一部にしてやろう」とアーサニークは目論んでいた。

 だがその計画は、髑髏の闇騎士がファミリーの拠点の一つを襲撃した際に、ファミリーとこの町の騎士が癒着している証拠と現場を聖騎士隊に発見されてしまったのが切っ掛けで、本格的にモーリス・タウンに対して様々な方面から横槍が入るようになってしまった。

 こうしてアーサニークの築き上げた鉄壁の守りは徐々に崩され始めた。


「そういやさぁ、この前72番通りに集金行った時の話だけどさぁ。

 今まで大人しく俺達に従ってた町の人間達がよぉ、また八年前に抵抗してきた時みたいに調子付いて俺らに反抗してくるから、無駄に集金に時間かかったんだよなぁ」


「あー、それなー! 

 この前集金行った時もさー、アイツ等が突然前みたいにやたら反抗してきたから集金に手こずったんだよなー!

 大した金を寄越せと言ってる訳でもねーのにギャーギャーと喚くもんだから、ホントメンド臭かったぜー!!」


「やっぱそう思うよなぁ!

 俺また今度の集金も担当なんだけど、前みたいにギャーギャー喚く奴等を殴って黙らせられないから、メンドくて仕方がないんだよなぁ」


「オマケによー、ここ最近ファミリーが上手く回ってないのもあって何かとボスの機嫌が悪い時が多いから、ちょっと集金に手間取ったのがボスに知られると上からもどやされるしよー」


「……そう言えば最近俺等に対するボスや上の当たりがやたら強いよぁ……

 別に俺等が何かした訳でもねぇってのにさぁ」


「上の人間は良いよなー! 下っ端の苦労なんて気にしないで上からから物言えば良いだけなんだしー」


「「ハァ~……マジで最近いい事ねぇよな…………」」

 ここ最近のファミリー事情が何かとよろしくない事と、自分達を取り巻く環境に対する不満を嘆く二人の男は、揃って深いため息を付く。

最後までこの話を読んで頂きありがとうございました。

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