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動き出す悪

「ちくしょう!

 なんだってんだよ、ここ最近の調子はよぉ!!」

 ア―サニーク。ファミリーのボスであり、モーリス・タウンの現統率者であるアーサニークは大いに荒れている様子を見せるが、それもそのハズ。

 なんせここ最近自分にとって良くない事が立て続けに起きれば、誰だって荒れるだろう。

 例えばアーサニークが賄賂を贈る事で、自分が行った数々の悪行を見て見ぬ振りするように抱き込んでおいたモーリス・タウン在中の騎士達が、次々と不正行が発覚して捕まった事で、今まで見逃されていた違法行為が白昼堂々と出来なくなくなってしまったのだ。

 コレはアーサニークにとって様々な面で大きな痛手となった。


 そしてアーサニークにとって不都合なこの街の法令の抜け道として、これまでは町の行政に関わっている者達に美味い汁を吸わせ、この町の住民に重税を課している事や、不当な理由で財産を搾取している事を黙認させていのだが、この件に関しても”この町の騎士達の見逃し行為”を調べる過程で、行政の不正が摘発されてしまった為、アーサニークが事を有利に進める為に丸め込んでた人間達は、次々と捕まっていった。

 更に極めつけとして、自分の直属の部下達が髑髏の闇騎士(ダークナイト・スカル)と呼ばれる者に次々と倒され、追い打ちをかけるかのように悪事の証拠と共に聖騎士(パラディン)達に逮捕されてしまい、アーサニーク・ファミリーの力も徐々に削がれ始めている。


 おまけに圧政を加える事で黙らせていたモーリス・タウンの住人達は、最近再び八年前にこの町を支配する前の如く強い反抗の意思を示すようになった。

 その原因がファミリーから金品を数年に渡って奪い続けているコソ泥事、銀青の泥(シーヴィング)棒猫(・コラット)がファミリーから奪った金品を、本来の持ち主達に渡す際に

『どうかアーサニーク・ファミリーの支配に屈さないで!』

 と訴えかけているのだが、その訴えが切っ掛けとなり、一度恐怖で黙らせた住人達が反抗の意思を再び持つようになったことも、アーサニークにとっては無視できない問題だった。


 こうしてアーサニークにとっては面白くない出来事ばかり起こり、イライラが募っているアーサニークは今日もヤケ酒を煽っている。

 だが、いくら酒に溺れようともアーサニークの怒りが静まる訳でもなく、むしろ酒が回って益々苛立ちは増している。


「ちくしょう、このままだとせっかくここまで築き上げた俺の楽園がぁ!」

 アーサニークは()()()()の依頼で、サナッタ・シティを他の大勢のマファイ達と共に攻め込んだ際【どうすれば己の欲望を優先的に満たしつつ、受けた依頼をこなせるのか?』

 という自分の欲望に忠実ながら、依頼はこなそうとする狡猾な一面を持った男だった。

 だからアーサニークはサナッタ・シティに攻め込む際、もっとも自分にとって()()()()()()()()かつ、最もこの街の政庁所在地からの監視が行き届きにくい地域を事前に調べ、己の欲望を満たしやすい条件が揃っているモーリスタウンを侵略したのだから。


 アーサニークは正直サナッタ・シティ全域をを支配しようなどとは思っていない。

 だが、自分の理想郷は欲しいので「自分とって出来る限り都合が良く、自分が完全いコントール出来る範囲」での支配域を作り上げる為に行動している。

 そしてその欲望を満たす事が、()()()()を達成するのに必要な事に繋がっていたので、特に依頼者からアーサニークのやり方に関してお咎めはなかった。


 しかし、八年前に起きた”サナッタ・シティとマフィア達の抗争”において、前地域統治者を始末して地域統治者に成り上がったマフィアの者達が命を落としたり、犯罪を公にされた事で統治者の座から失脚する者が現れた事も、アーサニークにっては良くない流れだ。

 なんせある存在から受けた依頼の達成より、己の私腹を肥やす事に力を入れていたアーサニークは、依頼達成に力を入れていた5人の同僚達が居なくなった事で、アーサニークはこれまで順調に進めてきた【自分にとっての楽園】を築き上げる事より、依頼達成に力を注がなくてはならなくなってしまった。


「クッソ! 依頼達成の為に力を注げば、せっかく築き上げた俺の楽園の管理が疎かになるし!

 だからと言ってあの依頼を蔑ろにもできねぇ!!

 ああぁぁぁぁぁ!!!! 考えれば考えるほどイラ付いてくるぜぇ!!!!!!」

 アーサニークは再び酒を煽りながら現状に対しる苛立ちを顕にして怒り狂っていた


「どうやら大変お困りのようですね?」


「なっ!? お前何もんだぁ!?? どうやってこの部屋に入ったぁ!????」

 突如聞きなれない女の声が自分の部屋に響いたので、声が聞こえた方を振り向くとそこにはローブで身を覆った者が一人窓際に立っている。

 窓や扉は全て閉めていたし誰かがもし強引に入ればセキュリティ用の魔導具が作動する仕掛けになっているアーサニークの自室。

 だというのに、侵入した音もなければ気配もない。

 もちろん魔道具も作動した様子も見せない。

 だからアーサニークは侵入者の存在に驚きを隠せないし、非常に苛立っていたから己の部屋に音もなく侵入してきた存在に対して殺意を向ける。

 そして


「死ね!! 爆炎(ブラスティング)(・フレイム)!!!」

 アーサニークは己が得意とする魔法八階位における第二位属性である【火】の魔法を、容赦なく侵入者に向けて放った!


 ”ボシュ……”


「な……俺の魔法がこうも簡単に!」

 アーサニークの放った渾身の火属性の魔法は、侵入者に届くどころか静かに消される。


「アーサニーク様、落ち着いてください。

 私はあなたの敵ではありません。

 コレを見てもらえば、私が何者か分かるかと」

 アーサニークに殺すつもりで魔法を放たれようとも、ローブを纏った侵入者は特に怒った様子を見せない。

 それどころか落ち着きを感じさせる優しさ感じる女性の口調で、アーサニークに語り掛ける余裕を見せつつ、侵入者はアーサニークに向けて”六芒星の中に縦に目が描かれている奇妙なシンボルを模った濃紺のネックレス”を、ゆっくりと掲げた。

 アーサニークは侵入者が掲げたペンダントを目にした瞬間、顔は一瞬にして真っ青に変わると同時に、恐怖の表情を浮かべる。


「こ、これは……大変失礼な事を! ど、どうか命だけは!!!」

「構いませんよ。

 私も何も言わず部屋に入ってますから『失礼なのはお互い様』という事で」


「あ……ありがとうございます。

 寛大な心に感謝いたします。

 そ、それより、俺の元にい、『イルミナーテンの大司教殿』が現れるなんて、いっ、一体どうゆう風の吹き回しで?

 も、もしかして依頼の達成状況を聞きに?

 そっそれに関しては先日状況報告書を送らせて頂きましたが……」

 アーサニークは顔を真っ青にしたまま恐る恐る大司教と呼んだ者に尋ねるが、アーサニークの様子からイルミナーテンが依頼主であると同時に、アーサニークが恐れ慄く存在だというのは明白だった。


「フフ、安心してくださいアーサニーク様。

 私は枢機卿からのご命令で、あなたの計画の手助けする為にこの場に赴いた者です」

 その言葉を聞いたアーサニークは「ホッ」っと胸を撫で下ろす様子をみせた後、恐怖も少し和らいだのか、先程まで蒼白だった顔面に少し血色が戻る。

 どうやら自分が”今すぐ始末される対象ではない”という事を知って、安堵したようだ。


「そ、そんな! こんな計画に大司教殿の手を患させる訳には……」


「その心遣いは嬉しいのですが、果たして今のアーサニーク様には我々の依頼を達成できる力がおありでしょうか?」


「ど、どうゆう事でしょうか?」


「私達イルミナーテンが何も知らないと思いですか?

 ここ最近あなたのファミリーが急速に力を失っているという事を」


「そ、それは

 事が計画書通りに進めば問題なく…」


「でしたらこの問題はどう解決するおつもりで?」

 そう言った後ローブを纏った者は、アーサニークに一枚の紙を手渡すのだが、その紙を見たアーサニークは、何も言えず只黙るしかなかった。

 なんせその紙には、つい最近アーサニークが依頼主であるイルミナーテンに提出した計画に関して、一切の容赦もないし、なおかつ的確過ぎる数々の指摘が記載されていたからだ。


「アーサニーク様の計画自体は悪くないと私も思いますよ。

 ですが、実施するに当たってあまりも合理性に書ければ、現実身もない。

 要は今のあなたの勢力では問題点があり過ぎて、計画実行どころのお話しではありません」


「こ、コレを送る前までは、問題なく遂行できたハズなんです……ですが最近あまりに邪魔するヤツが多くて!」


「そうでしたか。

 でしたらその件に関しても今からゆっくりお話を伺させて頂きますね」

「は…はいぃぃぃ」

 アーサニークに柔らかい物腰で大司教は話しかけるが、アーサニークにとって目の前の人物は余程恐ろしい人物なのだろう。

 その証拠にアーサニークの顔が再び真っ青に戻っていたのだから。


・・・

・・


「そうでしたか。

 アーサニークさんも自分の縄張りを荒らされて大変でしたね」

「そっ、そんな事は」

 アーサニークからファミリーの現状を聞いた大司教は、相変わらず柔らかい口調でアーサニークに話すが、アーサニークの顔は未だに青褪めていた。


「そう謙遜しないでください。

 あなたがせっかく作った縄張りを崩されていく様は、あなたにとって辛い事だったでしょう。

 それにこの況下であっても、あなたは良く持ちこたえている方だと思いますよ」


「……そう言って頂けるのは幸いです」 


「それにちゃんとアーサニークさんは、私達の依頼もこなそうと頑張っているみたいですからね。

 それに関しては特に枢機卿も気にしていないみたいですから、安心してくださいね。

 そんな事より先程頂いた情報で非常に気になるお話がありましたね!」


「えっと……やはり聖騎士の件でしょうか?」


「違います。

 私が気になっているのは『髑髏の闇騎士(ダークナイト・スカル)』様のお話ですね!」

 大司教が興味を持った話題が意外だったのか、アーサニークは呆けた表情を浮かべていた。


「どうしたんですか? そんな意外そうな表情を浮かべて??」


「……てっきり一番被害を与えてる聖騎士の話題が気になったのかと」


「アーサニークさんにとっては、聖騎士が今の所アーサニークさんの縄張りに最も直接的な被害を与えてますからそう思っても仕方がないかと思いますが、我々からすると聖騎士達なんて問題に感じる相手ですらありませんので」

 大司教と呼ばれた者は悠々とそう語るが、アーサニークには言っている事のスケールが違い過ぎて、この言葉をどう返せばいいのか困っている様子を見せる。


「そんな事より、私達が髑髏の闇騎士様を気にしているのは『私達の情報網を持っても、彼の正体が未だに掴めていない』という事に大いに興味を持っているだけですから、アーサニーク様は今後も自分の縄張り作りに励みつつ、私達の依頼を熟せるように頑張ってくださいね」

 その言葉を聞いてアーサニークは、薄ら笑いを浮かべつつ頷く事しか出来なかった。


「さて、そろそろ私はお暇するとします。

 また近いうちに姿を見せますから、次は訪問する前にちゃんとお手紙を送りますね。

 そして次に会う時までに、計画の最低限の準備ぐらいは進めておいてくださいよ?」

 柔らかい口調でそう言った後、大司教の周囲に霧が一瞬舞い上がった。

 かと思うと霧は一瞬で晴れるのだが、既に大司教の姿は消えていた。

最後までこの話を読んで頂きありがとうございます。

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