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裏で猫に懐かれた髑髏

 マリーンを彼女の隠れ家の近くまで運んだ僕は、追手が居ない事や周辺の安全をしっかりと確認した後、手ごろな空き家内にマリーンを運ぶと、マリーンを出来るだけ優しく床に降した。

 しかし相変わらず僕に対して強い警戒心というか、不機嫌な様子を見せ続ているマリーンだけど、まぁこんな怪しい格好をしたヤツにいきなり抱きかかえられて運ばれたんなら、当然の反応だよなぁ……


(このまま様子を見て居てあげたいのは山々なんだけど、この様子だと僕がこの場に残っている方が彼女の精神衛生上良くなさそうだ)

 そう思った僕は、そのまま何も言わずしてこの場から立ち去ろうとする。


「……お礼なんて言いませんよ。 別に助けて欲しいなんて頼んでないですし!

 そもそも裏で『悪党』を裁いている人が『小悪党』は助けるなんて、笑えない冗談ですよね?」

 マリーンはこの場から立ち去ろうとした僕に対して、皮肉の混じった言葉を良い放ってきた。

 だけど僕はそんなマリーンの言った皮肉に対して一切腹が立たなかった。

 というより「自分に素直になれない年相応のちょっとませてる生意気な子」にしか見えなかったから、そんな彼女を可愛らしいとさえ思ってしまう。

 そんな感情を抱いてしまった所為か、僕は髑髏の仮面の下で少しニヤケけしまっていた。

 正直言ってこの時ばかりは、素顔が兜で完全に隠れている事に大いに感謝した。


 でもマリーンの言う通り、裏で悪党に裁きを与えている髑髏の闇騎士(ダークナイト・スカル)が”泥棒行為”という悪行を行っている銀青の(シーヴィング)泥棒猫(・コラット)を助けるなんて、僕の正体も事情も知らない彼女からしたら不思議な話に思えるんだろうね。


(変声の魔道具で声で僕の事がバレる事はないだろうから、助けた理由ぐらいは説明しておこうかな)

 正体がバレる事はないと考えた僕は、マリーンに何故僕が彼女を助けたのか簡潔に説明する事にした。


「確かに君がやってる事は確かに法の上では悪なんだろうね。

 だからと言って君が行っている悪行と言うのは、罪が無い人間に対して行っているのかい?」

「違う! 私がお金を奪っているのはアーサニーク・ファミリーからだけで、罪のないこの町の人からは何も奪ってないし、奪ったお金は全部本来の持ってた人に返してる!」

「そうか。

 だったら君のやってる事はこの町にとって正しい事じゃないのか?」

「え……?」

 マリーンは僕の言った事が意外だったようで、驚きの表情を見せたまま固まっている。


「少なくとも僕は、この町にとって正しい事を行っている者に対して『裁きの鉄槌を下す』なんて馬鹿げた事をするもりは一切ないよ。

 それに法の上では悪党かつ『例えやり遂げた所で最終的に何も帰ってこない……』

 そんな虚しい最後が待っていると分かっていても、心に渦巻く復讐心に駆られて悪党に挑み続けているのは、僕だって同じだ。

 だから僕は君のやっている事に裁き所か、文句を言う資格すらないよ」

「……」

 僕はマリーン自分の想いを正直に伝えると、マリーンは何も言わずただ黙って僕の方を眺めているだけだった。

 きっと僕の言う事に色々思う所があるんだろうけど、僕としてはこの言葉を聞いた上で、今後の行動はもっと自分の身の安全をしっかり考えた上で決め言って欲しいという願いもあった。

 そして、出来る事ならコレを機に「悪党専門の泥棒稼業から足を洗って欲しい」とさえ僕は思っている。


 だけど彼女の行為は、町の人達が悪党から不当に奪われたお金を「直ぐに持ち主に還せる」という意味では大いに助かっている一面もある。

 実は僕が領主として市政の一環で悪党から回収したお金や、エレン達騎士が悪党が不当に集めたお金を回収出来たとしても、まずはお金の出所を調べる事から始めなくて行けないので、直ぐに奪われた人達の手にお金が戻る訳ではない。

 それに僕ら市政の人間や騎士達が回収したお金は、調査の進み方次第では持ち主不明となってしまい本来の持ち主の戻らないことだってある。

 そして何より奪われた物が戻らない間は、奪われた者は苦しい生活を強いられるので、奪われた物を即持ち主に返すマリーンの活動は、現状この街の住民の助けになっている側面も強い。


 そして何よりに彼女が復讐を糧に生ている状況は【大切な人達を失った事で復讐に走っている者同士】その気持ちは嫌と言うほど分かるし、復讐を糧に生きている僕に彼女の行為を止める権利はない。

 そんな複雑な思いを胸に秘めつつ、僕は今日も闇の中を一人で駆け抜けた。



(……()()()なのか)

 マリーン事、銀青の泥棒猫を救ってから一週間が過ぎ、僕は何時ものように闇夜に紛れて悪党達に裁きの鉄槌を下す活動を続けているのだけど、ここ最近ずっと活動中に()()()()を感じるようになった。

 その視線の正体はマリーンであり、どうやら彼女を助けた一件からマリーンは僕の活動に大いに興味を持ってしまったみたいで、僕の存在を彼女が得意とする風魔法で察知すると、僕の目が届かない範囲から僕の様子を伺っているのがここ最近続いている。

 もっとも僕としては、いくら裏で悪党と戦っている者同士であっても馴れ合うつもりは一切ないので、あえて気が付いてないフリをしているけど、僕の探知範囲内に居るとどうしても気にはなってしまう。


(それに完全に気配を消すまで追いかけてくるのも、困るんだよなぁ……)

 どうやらマリーンは僕の活動を手助けしようと思っている節があるみたいで、この前騎士達に追われている際に”明らかに不自然な風が吹いた”事で、壁に立てかけてあった木材が倒れて騎士達の行動を阻害した事があった。

 そして風魔法の発生源を探知してみれば、その先には青銀の泥棒猫が僕の視界に入ると同時に、得意げにしている様子が見えたので、彼女の仕業だと直ぐに察した。


 そして皮肉な事に、僕が大体的に暴れ回っている時に彼女が悪党から資金を回収してくれるのが”彼女にとって比較的安全に仕事を成功させることが出来る状況”だという事に、彼女が気が付いた事も彼女が僕に付き纏う理由の一つのようだ。

 僕としてはマリーンの安全が確保されるのは願ったりな事だけど、だからと言って時折猫のように割と気まぐれかつ突拍子に動く彼女動きを、ある程度把握している訳でも掴んでいる訳でもないので、僕としては色々と彼女に対する不安の種は尽きない。

 もし彼女の行動を少しでもこっちが把握しつつ、その動きをコントロール出来たらこの不安のいくらか減るんだろうけど、だからと言って積極的にマリーンと関わるつもりは決してないので

(この問題をどう対処したらいい物か……)と、バーでグラスを拭きつつ頭を悩ませていると


”ガチャ”


 バーの扉が開く音が聞こえて来た。

 どうやら新しいお客さんがやってきたようなので「いらっしゃいませ」と声を掛けた後に、扉の方を振り向けば、あまりにも意外な人物が扉を開けて立っている。


「失礼だけど、ここはお嬢さんが来るにはまだ早いお店だと思うよ?」

「……そうですよね」

 最近の悩みの種の一つであるマリーンが、突如バーにやってきたので僕は内心


(もしかして正体がバレたのか?)

 と、焦りつつ、まだマリーンがこの店に来るには早いと伝えて様子を伺ってみたけど、ソレに対するマリーンの返答があまりも素っ気なかったため、マリーンの意図はまだ見えてこない。


(落ち着け、まだ”正体がバレた”と決まった訳じゃない)

 自分にそう行かせた後、僕は無心でグラスを拭く動作を続けて一旦動揺した心を落ち着かせた後、何故マリーンがこの店に顔を出したのか?

 その理由を訪ねてみる事にする。


「ソレを分かってこのバーを尋ねて来たという事は、お酒を飲む以外に何か用があるのかな?」

「……お願いです。 ここで働かせてください」

 そう言ってマリーンは頭を下げて僕にお願いをしてきたが、これまたあまりも予想外の答えがマリーンから返ってきたので、再び僕の中に動揺が走るであった!

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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