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制裁と償い

(ふぅ……どうやらマリーンは無事みたいだ)

 サナッタ・シティとマフィアとの抗争が勃発する以前の話になるけど、僕やエレンに良く懐いていてくれていた一人の女の子が居た。

 その子はつい面倒を見たくなる僕にとっては”妹分”とも言うべき存在だったけど、その子はマフィアとのこの街の抗争に巻き込まれて命を落としてしまった……

 あの子がこの世を去る前に助けに行くことが出来なかった自分の力の無さや、二度と会えなくなったと分かった途端に「もっといろんな事をしてあげればよかった」なんて激しく後悔したりもした


「もしもあの子が生きていたら……」

 そんなタラレバを、もう決して叶わない事を何度も考えた事もあったけど、そのタラレバがまさか実現するなんて誰が予想できるだろうか? 

 そう! 今僕が助けようとしている銀青の泥(シーヴィング・)棒猫(コラット)こそ、もうこの世を去ったと思い込んでいたあの子事、マリーン・モーリスだった。


 僕は彼女が7年前モーリス・タウンをマフィア達が襲撃した際に、マリーンの家族と共に【その命を落としてしまった】と聞いていたので、彼女はもうこの世にいないと思い込んでいたけど、事実は違ってマリーンは実は生きていた事を、僕は三週間前に偶然知った。

 そしてマリーンが生きている事を知ると同時に、僕は彼女がこの町で何年もの間一人で悪党専門の泥棒として、たった一人でこの町の悪党と戦っていた事も知る事になる。


 そんなマリーンの姿を見て、僕は単純にマリーン生きてくれた事や、僕意外に悪党と裏で戦う存在が身近にいた事は喜ばしい事だったけど、そんな人生を歩んでる彼女が最も救いを求めていた()()()に、僕は自分の事ばかり考えていて『彼女が本当に苦しんでいる時に何もしてやれなかった』という目を背ける事が出来ない僕の行いに罪悪感を感じてしまった。


 しかしそんな罪悪感に苛まされようが、僕は以前良く懐いてくれて妹のように可愛がっていた子が、危険に晒されそうになるのを只黙って見ているだけなんてとてもできなかったので、ついマリーンの仕事を陰ながら手助する事を始めてしまう。

 こうして僕が過去にマリーンに対して犯した罪の贖罪の意味も込めて、僕はマリーンに気付かれないように三週間ほどマリーンの泥棒稼業を手助けしていたのだが、まさかこれがマリーンに余計かつ過度な自信を与えてしまったのはとんだ誤算だった。

 僕が人知れず手助けした事で、スムーズに泥棒行為が上手くいっていた事を「全て自分の実力」だとマリーンは勘違いしてしまった結果、マリーンに過度の自信を与えてしまったのだ。


 こうして過剰な自信を得てしまったマリーンは、無謀にも「自分の実力には不相応な仕事」をこなそうとしていたので、その事に気が付いた僕はマリーンに無茶をさせないように、今日のアーサニーク・ファミリーが行う取引現場付近でマリーンを止めようと考えていた。

 しかし、この三日間に限って僕の表の活動が非常に多忙を極めていたため、僕はマリーンがファミリーの取引現場に潜入するのを事前に阻止する事は叶わず、僕が表の仕事を終えた後に急いでマリーンの狙うファミリーの取引現場に向かっていたら、マリーンがアーサニーク・ファミリーの人間達に追われている気配を感じとった。


 この状況ハ只事ではない! と察した僕は、いざ大急ぎでマリーンの気配を感じる場所に向かってみると、マリーンを小太りの男が乱暴しようとしているのがこの目に入った。

 そしてその光景を目にした瞬間僕の中で【怒りと憎しみの感情が蠢く】のがハッキリと分かったので、僕はその感情従って僕の可愛い妹分に手を出そうとした男に、容赦なく鉄拳制裁を加えてやった!

 そしてマリーンの無事を確認した後、周囲に注意を向ければ、どうやらまだマリーンを狙う者がこの場に大勢いるようだ。


(さて……僕の可愛い妹分を危険に晒したその罪! しっかりとその身で償ってもらうよ!!)

 今回ばかりはその身に沸き立つ怒りと憎悪にから生まれる「奴等を皆殺しにしたい」という感情に、()()()()その身を任せた僕は、何か”ギャーギャー”と喚いている連中に裁きの鉄槌を下すべく、未だに何か喚いている連中達の元に一直線に向かった。


 *


(もしかして……私を助けてくれるの?)

 髑髏の闇騎士(ダークナイト・スカル)が、私を追ってきたアーサニーク・ファミリーの追手を次々と倒す光景を見て一瞬そんな気持ちが出てきてしまった。

 だけど、実際目の前で私が憎む悪党に対して制裁を加えている光景を見て

(悪党を裁いて回ってる人が『悪人』である私を助ける道理なんてないよね……だからきっと、アーサニーク・ファミリーに対する制裁が終わったら、次は私が制裁を受ける番なんだ)

 そんな現実が頭を過ると、私は再び恐怖で体を震わせると同時に、目には涙が嫌でも()()滲んできた。


「うぅぅぅ……怖いよ……パパ、ママ、キャサリン……」

 ファミリーの人間達に容赦ない一撃を加え、僅かな時間でファミリーの人間を全て倒してしまった髑髏の闇騎士の姿は、私とっては頼もしいというより、恐怖の対象にでしなかったから、私は再び恐怖でその身震わせている。

 そして、ファミリーの人間を全て倒した髑髏の闇騎士が向かってくるのは、予想通り私の元だ!


 「パパ……ママ……キャサリン……ごめんなざぁい……私、もうすぐそっちに行くがも……

 私の元にどんどん迫ってくる髑髏の闇騎士を見て、私はせっかく命を懸けて私を逃がしてくれた大切な人達に謝る事しか出来ない。

 そして髑髏の闇騎士は私の前に一瞬でやってきたので、このまま制裁を下されると思った私は、現実から目を背けるように目を閉じてしまう……


(あれ?……どうして?

 どうしてこの人は……私の怪我の手当なんて始めているの?)

 髑髏の闇騎士が今私に行っているのは”制裁”ではなく手当で、私は予想外の状況に驚いてしまったからその場で完全に固まってしまい、髑髏の騎士にされるがままに手当されてしまっている。

 そして不思議な事に、髑髏の闇騎士から手当てを受けていたら何故か懐かしいあの頃の、七年前に私の事を良く可愛がってくれた人達の顔が一瞬頭を過った。

 そう、七年前サナッタ・シティ全体が、モーリス・タウンが平和だった頃に大好きだった憧れの”あのお兄さん”やお姉さんが、隣にいてくれたあの頃の思い出が……

 そんなずっと忘れていた懐かしい気持ちが胸から溢れ出てきていたから、私はこの時もの凄く油断していたんだと思う。

 そうじゃなかったら


「キャッ!!」

 なんて恥ずかしい声を、いきなり「髑髏の闇騎士に抱き上げられてしまったから」と言って出す事なんて絶対なかったし、私の心臓が五月蠅く鼓動する事なんてなかったハズ!

 そんな私の気持ちを他所に、髑髏の闇騎士は私を抱きかかえたまま闇夜を駈け出した。


 *


(懐かしいな……はしゃぎ回って怪我したマリーンを、エレンと一緒にこんな風に手当した事もあったね)

 僕はマリーンが傷を負っている事に気が付くと、もう居ても経っても居られなかったので、急ぎ手当を施した。

 自分で言うのも何だけど”恐ろしい髑髏の意趣を施した兜を被っている僕”からの手当を、マリーンは大人しく受けてくれるから、応急処置はスムーズに終わった。


(しかしこのまま置いて行く訳には――いかないよね)

 元はと言えばマリーンにこんな怪我を負ったのも、僕がマリーンの仕事を裏から手伝ってしまった所為なので、ここは僕が責任を持ってマリーンを安全な場所まで連れて行く必要があるだろう。

 マリーンを追っていた悪党達は、当分の間再起は不可能なレベルまで痛めつけておいたとは言え、少女に平然と暴行を加えようとしていた連中が周囲に居るというのは、きっとマリーンをまた不安にさせるだろうし、再びマリーンを追ってきた悪党がこの場に表れても可笑しくない!

 だから僕は、マリーンを抱きかかえてこの場から即刻立ち去るべきだと判断し、早速マリーンを抱きかかえて、この場から離脱する。

 しかし突然僕に抱きかかえられからと言って、マリーンが年相応の可愛らしい声を出して驚いていたのを見た時は


(ハハハ、そう言えば小さい頃も突然出てきた猫に驚いて、こんな感じの可愛らしい声を出していたね。

 そして遊び回って疲れて眠たそうにしていたマリーンを、こんな感じで抱きかかえてマリーンの両親の元に連れていってあげた事もあったっけな)

 そんな懐かしくて二度と帰ってこないあの時を思い出した事もあって、この時の僕はもの凄く穏やかな表情を浮かべていたんだと思うけど、今の僕は聖遺物をその身に纏っているし、髑髏を模した兜を被っているから僕がそんな穏やかな気持ちになっているのは、マリーンには全く伝わってなさそうだ。

 いや、むしろマリーンは僕に対して大いに警戒する様子を見せている!

 もしこの表情をマリーンに見せれたら、マリーンは今僕の腕の中で「不安げな表情」を見せる事もなければ、警戒心を緩めてくれたかもしれない。

 そしてかつて妹のように可愛がっていた子に、キツメの表情と警戒心を向けられるのは案外精神的ダメージとショックを受ける物で、さっきまで穏やかだった僕の気持ちは一瞬にして複雑な心境へと変化していた……

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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