裏の顔合わせ
最近の私は凄く調子が良い!
私が 銀青の泥棒猫と呼ばれる切っ掛けとなった「アーサニーク・ファミリー達悪党専門の泥棒」を始めて、いつの間にか三年近くが経ち、これまで何度もファミリーから金品を奪ってきた。
そして今回二週間連続で金品を奪う事が成功しちゃうなんて、私にとっては偉業だった。
過去に何度も金品を盗むために潜入は成功したも、警備が厳しかったら結局盗みを諦めたり、誰かに潜入を勘付かれちゃって、結局何も盗めなかったり……そんな事の方が多かった。
例え金品を持ち出せても、金品を持ち出した後に誰かに気付かれて、捕まりそうになったらせっかく持ち出した金品を仕方なく相手に投げつけて、逃げる手段として使ったりもしたなぁ……
そんな失敗が一週間の活動の内一度や二度あるのが当たり前だったけど、この二週間は厳重な警備を慎重に観察していたら、警備の穴に気が付けるようになったり、盗んでる最中に誰かに見つかっても上手く追手を巻けるようになってきた。
だからここ最近の私の仕事は絶好調だ!
こうして盗みが立て続けに成功すると、最近アーサニーク・ファミリーは私の事を大いに警戒し始めたからか、金品を補完している場所の警戒と警備を強め出した。
だけど盗む側からしたら、警戒と警備が強化されてる場所=その場所に金品がある。
その事実を私に教えてるだけだし、少し警戒と警備が強化されたぐらいじゃ、最近好調の私にとっては何の問題にもならないと思った。
そして実際に強化された警備の中でも、また一週間連続でアーサニーク・ファミリーから金品を奪う事に成功した!
こうして”三週間連続で仕事が成功する”という更なる偉業を達成した私は、自分の実力に大きな自信を持てるようになった。
今までは自分の実力を考慮して、比較的警備が手薄な場所や小規模な取引の為に用意された金品ばかりを奪って来た。
だけど、三年も繰り返して来て、ようやく様になってきた私の実力なら
「今の私ならもっと大きな取引の邪魔して、もっと多くの金品を奪える!」
そんな大胆な事を思えるようになってきた。
それに私がもっと沢山の金品をアーサニーク・ファミリーから奪ってやれば、憎きアーサニーク・ファミリーは大いに困って慌てふためくだろうし、アイツ等から不当に奪われた人達により多くの物を返してあげる事が出来る!
そう思うと、私がより大きな危険を冒してでもアイツ等から金品を奪おういう強い意欲になるし、今はコレが何よりも私にとってアイツ等に唯一出来る復讐だから。
「きっと今の私なら、もっと大きな事が出来る!!」
この時の私は、自分の実力を過信していた。
そして情報を集めていると、次の取引で「資金が大きく動く取引を行う」という情報を得た私は、その日の夜に向けて準備を進める事にした。
*そして決行当日
「……ハァ、ハァ……不味いかも…」
”三日前の大層な自信は一体何処に行ってしまった?”と自分で言いたくなるぐらい、今の私は不安と焦燥に駆られている。
予定通り始まったアーサニーク・ファミリーの大規模取引現場に潜入した私は、果敢に大規模な取引の現場で盗みを働く。
だけど今回の現場は、今までの現場とは警備も警戒のレベルも、レベルが違い過ぎた!
だけどこの時の私は自分の実力を過信していたし
「今までやってても相手に対して大したダメージを与えらなかったけど、コレを成し遂げたら相手に大ダメージを与えてやれる』
そんな想いが、私を無駄に大胆にしていた。
だから気持ちだけが大胆不敵になっていて、明らかに一人じゃ対処出来ない人数相手に、大立ち回りを演じるために奮闘しようとする。
だけど実際は散々な結果になった。
そもそも何一つアイツ等から奪えない所か、潜入先から撤退する際に手傷まで負わされる。
そして今も私を追ってくるファミリーの追跡を、私は振り切る事も出来ない……だからとにかく町中を必死に逃げ回り続けいている。
「おい、あっちに逃げたぞ!」
「分かってる!」
「あれが最近クソ生意気で最近調子付いてるって噂の銀青の泥棒猫ってコソ泥か。 決して逃がさんぞ!」
「ハハ! 誰がアイツを先に捕まえられるか競争といくかぁ?」
「じゃあアイツ先に捕まえたヤツが、捕まえた後もアイツを好きに料理出来る権利ゲット! って事で!!」
後ろから私に向ける罵倒や怒声が絶えず聞こえてくる。
それは、私が全く追手との距離を空けることが出来ていないという事だし、相手はまだまだ話す余裕すらあるという事。
つまり私は袋の鼠と変わらない。
(捕まったら絶対に酷い事されて……嬲り殺される)
そんな考えが頭に浮かんでしまうのは、アーサニーク・ファミリーが私の家族を含めて、逆らう相手には容赦ない制裁を加えていたのを、何度もこの目で見てきたから。
だから私は絶対捕まらないように必死に逃げるけど、そんな私を嘲笑うかの如くファミリーの追手は、一人一人順番に魔法や武器による苛烈な攻撃を放ってる。
(一斉に攻撃してこないって、事はアイツ等私で遊んでるんだ!)
そう思う根拠、追手と私の距離が近づく事があっても離れる事もないから!
こうして相手に遊ばれながら追い詰められている私は、魔力も体力もどんどん消耗するから、それに応じて動きが鈍くなっていく。
「喰らえや! ストーンショット」
「あっ!……うぅぅぅ!」
そして遂に魔力が尽きてしまった私は、追手の一人が放った土魔法を防ぐことが出来ず直撃してしまった。
そして魔法を受けた衝撃で、私は地面に激しく倒れ込む。
本来なら風魔法と相反属性の土属性かつ初歩レベルの魔法程度なら、私の適正属性である風魔法で簡単に相殺出来る。
だけどもう私には、相反属性さえ相殺する魔法を放つ魔力さえ残ってないし、さっき放たれた魔法が片足に直撃をしたから、もう立ち上がる事すら出来なかった。
「見たか!
俺の魔法は世界一!!」
「おいおい、弱った雑魚相手に初級魔法当てただけだろ」
「あーあー、コイツで遊べる権利ゲット出来なくて残念~」
「このコソ泥捕まえるゲームも、もう終わりか」
「ふん、お前らここまで弱るまで散々遊んでおいて良く言う!」
「おいおい、お前だって舐めプでコイツと遊んでたくせに良く言うぜ」
「そう言うなって!
こんな相手にならないヤツをさっさ仕留めて、何が面白味あるか?」
「だから皆して攻撃の手を緩めにしてやってんだろ?」
「「「「「「「違いねぇな! ハハハハハハハハハハハハ」」」」」」」
追手達が私の事をまるで玩具のように扱っているのを聞いて、私は思いっきり追手達を睨む。
だけど、ファミリーの追手は誰一人怯むどころか、そんな私を見て益々やらしい笑みを浮かべていた。
「さー、コソ泥ちゃん! 俺と何して遊ぼうか?」
そう言いながらジリジリと滲み寄って来るのは、私に魔法を直撃させた小太りの男だ。
この男との距離が近づくにつれて、小太りの男が私に向けてくる視線の嫌らしさに恐怖を感じた私は、地面を這ってでもこの場から逃げようと試みる。
だけど、既に体力も限界一歩手前まで近づいて、もう体は思うように動いてくれない。
そんなもう逃げる事も儘ならない私の前に、小太りの男が立つと
「なんだ?
近くで見たらコイツまだまだガキの女じゃねぇか!」
小太りの男は嬉しそうにそう言った。
「いいねぇ、俺さぁ~生意気なガキを泣かしながらヤれちゃうシチュって、想像するだけで最高に興奮するんだよね」
そう言ってニヤニヤしながら私に更に近寄ってくる小太りの男が私に向けて言った「私の体を弄ぶ」事を仄めかす言動は、絶体絶命の状況下で心に恐怖が芽生えてしまっていた私の心を、更なる恐怖に陥れただけでなく、この先の事を嫌でも想像させる。
そしてこれからとてもひどい目に合わされる事を自覚した私は、恐怖の余りこんな奴らに決して見せたくない涙が、溢れ出ようとしていた。
「へぇ~、ガキの割には良い体してんな。、
それにしてもこんな近付いてもなんか顔が良く分かんねぇな?
おい、ちょっとヤル前にその面拝ませろよ!」
「い、嫌ぁぁぁ~!!!」
私の顔を見ようとして、ママが渡してくれた形見のウィッグを小太りの男が掴んで来たので、最後の力を振り絞ってママの形見が奪われないように抵抗するけど、私は玩具のように男に振り回される。
こうして力の差を思い知らされた私は、これから弄ばれる恐怖、自分の顔が知られる恐怖、そしてママの形見を奪われる恐怖。
いくつもの恐怖が重なったせいか、みっともなく叫びながら必死に男の手を剥がそうと、更に抵抗するけど、その行為は男を更に喜ばせるだけの逆効果でしかなかった。
「おっ! いいね!!
やっぱヤル前は抵抗した方が燃え」
”メギィィィィ!!!!!”
「ヘブゥゥゥ!!!!」
突如私にヤらしい笑みを浮かべていた小太りの男が、私の目の前から消えた。
そして
”ドカッ!!!”
という音が地面に響き渡った後に、小太りの男は無様に地面を転がっていく。
そして小太り男が立っていた場所に、拳を付き出して立っていたのは
【闇が深くなる時に悪を裁く】
そう街の皆から謳われている漆黒の髑髏の騎士だった。
最後までこの話を読んで頂きありがとうございます。




