髑髏が見た銀青の猫
「……ハアァァァァァァーーーー!!!」
”ドォォォーーン!!”
私は自分の上に崩れ落ちてきた木箱を吹き飛ばした後、周囲を見渡す。
しかし、ヤツ事髑髏の闇騎士の姿は、もう何処にも見当たらなかった。
「やっぱり逃げたみたいね……次に会った時は覚えておきなさいよ!」
私に苦渋を舐めさせた相手に対して大いに苛立ちを感じつつ、姿を見失った以上もはや闇雲に追跡して所もヤツを捕まえる事が出来ないと判断したため、ヤツの追跡を諦める。
そして何よりヤツが私に見せた書類の内容が事実なら、この町で騎士の腐敗が大いに進んでいるという事なので、その事実が本当なら大問題なので、私は建物で縛られていた奴等にあの書類の内容の真偽について、徹底的に根掘り葉掘り聞く必要がある。
本来なら地域で活動している騎士の処罰は、王国騎士が管轄なんてしないんだけど、地域に配属された騎士の不正の実態を私達王国管轄の騎士が知ってしまった以上、見て見ぬ振りをする訳には行かないのよね。
あまり考えたたくないけど、恐らくこの問題が浮き彫りになれば、この問題が切っ掛けでモーリス・タウンに関する治安維持や捜査件の問題、そしてこの地域に配属された他の騎士に対して、様々な容疑の取り調べを行う必要が出て来るのは、想像するに容易い。
つまり私達はこの街の悪党を相手にする前に、しばらくはこの街の行政と治安に関する内部の腐敗を相手にする羽目になるんでしょうね。
「ハァ……せっっっかくこの街から悪党を退治する為にこの街に戻ってきたっていうのに、悪党を倒す前に身の内から出た錆を退治しないといけなになんて……オマケに身内の恥は子悪党に知らされるなんて、ちっとも笑えない話だわ……」
気に食わない所が多々あるけど、コレは間違いなくこの街と町の情勢を良い方向に向ける事に繋がる事なので、決して悪い事ではないのは私も分かっているし、優先してこの問題に取り組む必要があるのも分かっている。
だけど私が今だに不満に思うのが、その事実を知る切っ掛けになったのが、得体は知れないし何かと気に食わない事をしてきた存在である”ヤツ”からの情報提供だという事!
どうして私はヤツが気に食わないのかと言うと、先程私との戦いにおいてヤツは私に何度か「手心を加えてくる」なんていう舐めた真似をしてくれたから!
例えば確実に私に一撃を加えれるタイミングだったのに、ヤツはあえて私のガードが間に合うようなタイミングで後方から一撃を加えた。
それにあの悪趣味なハンドアックスに仕込んでいた鎖で私を捕縛した時も、本来なら確実に私にもっと大きなダメージを与える事が出来たのに、ヤツは私与えるダメージを抑えつつ、私から逃げる事を優先している。
要はそんな事が戦闘中に出来るという事は、ヤツは私に対して手心を加える余裕があったという事。
結局のところヤツは私に対して全力を出すことなく、いいようにヤツに遊ばれたようなものだという事が、さっきの戦いの状況から嫌でも私には読み取れてしまうし、騎士が悪党に手を抜かれるなんて屈辱以外なんでもない。
「ホッント最初から最後まで腹の立つ奴!
よし……今日の仕事が終わったらウィルのバーに行って、ウィルに慰めてもらおう!!」
私はここ最近すっかり通い詰めて常連となってしまったウィルのバーに行って、今日の出来事をウィル聞いてもらったあとに、ウィルから慰めてもら為に意地でも仕事を可能な限り早く終わらせた。
そして本日唯一の楽しみとなったウィルとのお喋りタイムの為に、ウィルのバーに向かったのだけど……
「なんで、なんで今日に限って閉まってるの~!?」
(はぁ~ 何をやっても上手く行かないトコトンストレスが溜まる最悪の一日って、こんな日を言うなんだろうな……)
嫌でもそう思わされると最悪の一日の終わり方を持って、私の今日は終わりを告げたのであった・・・・・・
*
「……凄い闘いだった」
私はさっき偶然目にした【一切目を離す事が出来なった二人の騎士の熾烈な戦い】の感想を、思わず口に出してしまった。
今日もいつものように憎きアーサニークファミリーの関係者から金品を奪って逃げている最中、町中に【ガキィィィン!!】と豪快な金属音が響き渡った!
モーリス・タウンの治安が如何に悪いにしても、こんな派手で物騒な音が鳴り響くなんて只事じゃないと思ったから、何かと思って豪快な音が聴こえた方に向かってみる。
するとそこには、黒い甲冑と白い甲冑で身を包んだ騎士が激しく武器で打ち合っていて、その様子は遠目から見ても凄まじい闘いなのが分かったぐらいだから。
白と黒の騎士の勝負の結果は、黒い騎士が白い騎士を積まれた箱に投げ込んだ後はうやむやになったみたい。
だけどあの凄い闘いぶりを見て、私はあの二人が最近話題になってる悪党を裏で懲らしめている「髑髏の闇騎士」と、表で悪党を懲らしめている「聖騎士隊の隊長さん」なんだというのは、初めて見た私でもその特徴的な外見からスグに分かった。
「うーん……あんなレベルの戦闘を見せられると、この先上手くやっていく自信がなくなるね。
規格外レベルの人同士の戦闘なんて見なきゃよかったな……」
そしてあの壮絶な戦闘を繰り広げていた人達が、今後最悪の場合私が相手にする事になるかもしれない相手であり、その圧倒的な実力を目の当たりにしてしまった正直な私の感想は、なんとも情けない内容だった。
でも……例え実際そうだとしても、私は泥棒活動を止める訳にはいかない!
だって今日も、私の助けを待っている人達がいるんだもの……
「ママ……お腹すいた」
「……ごめんね……今日も食べ物を買うお金がないの」
”ドサ!”
「ママ! お金が降ってきたよ」
「ああ……本当にありがとうございます、泥棒猫さん」
「父さん……体は大丈夫?」
「もう俺の事はほっとけ……どうせ長くはない」
「でも……薬さえあれば」
「俺達みたいな貧乏人に薬を売ってくれるヤツが居ると思うか?
例え売ってくれたとしても、それこそ俺達4番通りに住んでる人間には法外な値段でしか売ってくれねぇよ……」
……”コロン”
「父さん見て! 宝石が落ちてる!!
この宝石だったら、きっと薬と交換してくれるよ」
「くぅ……毎度毎度頭が上がらねぇよ……銀青の泥棒猫さんにはよ」
私は今日も盗んだ金品を、このモーリス・タウンで最もひどい扱いを受けているこの町の4番通りに住んでいる人達に配り回った。
だけど私がこんな事をしたって、第四区の人達の生活が根本的な改善に繋がる訳じゃないし、他の区にもアーサニークファミリーの所為で苦しい生活を強いられている人達は大勢いるので、この区域の人達ばかりに私が盗んできた金品を与え続ける訳にもいかない。
そう思うと歯がゆくて仕方がないけど、私はその悔しい気持ちを胸に仕舞いつつ自分の隠れ家に戻った。
「今日も全然足りなかった……私にもさっき戦ってたあの二人みたいな力があったらなぁ……」
私は盗んだ金品を配り終えた後に考えてしまったのは、私にも「戦う力があれば」という無いものねだりだった。
だってこの町には、まだ多くの人達が苦しんでいるのを知っているから、こんな程度の事しか出来ない自分に普段から虚しさを感じていたけど、戦う力を持っている人達の姿を目の当たりしてしまった今日は、益々私の自身の事が虚しい存在だと思えてしまう。
「パパ……ママ……キャサリン……私、いつか皆の仇をとれるのかな?」
今となっては無き家族が残してくれた唯一の形見であり、私がこの町における義賊としての通り名の元にもなっている銀青に輝くウィッグ。
このウィッグは私の顔の認識を阻害する効果を持つ魔道具でもあるんだよね。
そんな大切なウィッグを見つめつつ、私は一人嘆く事しか出来なかった。
”ゴト”
「誰!?」
私は咄嗟に音が鳴った方向に警戒する。
だけど音が鳴った場所には誰も居ないし、私の得意とする属性八階位の内、第三位属性”風”による探知魔法を使って周辺に異常がないか探知してみるけど、音がした場所にもその周辺にも人の気配は感じなかった。
どうやらボロボロの私の隠れ家から、何かが軋んだ音が鳴っただけだったみたい。
その事が分かると一気に今まで気を張っていたのが緩んだみたいで、一気に疲れが出てきた。
(今日はもう休もう……なんか疲れがドッと出てきたし)
体力的にも精神的にも疲れを感じていた私は、そのまま寝床に向かう。
・・・
・・
・
「驚いたな……まさか……まさか生きていてくれたなんて!」
僕はモーリス・タウンには僕よりも先に悪党と戦う存在いるという噂を聞いていた。
その者は、悪党から金品を奪って悪党を懲らしめており、銀青の泥棒猫という通り名で呼ばれていると聞いていたので、出来る事なら銀青の泥棒猫がどんな者なのか見極めたいと思っていた。
そして先程エレンとの戦っている最中に、僕とエレンの戦いを遠くから観戦している者がいるのを偶然察知し、エレンを巻いた後にこっそりその後を付け、彼女の隠れ家と思われる場所まで追ってみると、衝撃の事実が発覚するんて思っても居なかった。
銀青の泥棒猫の名前の由来となっている銀青色ウィッグを彼女が外した瞬間、今まで何かに阻害されるように”ハッキリと認識できなかった”彼女の顔がハッキリと認識出来たので、その顔をこっそり拝見させてもらおうと思って、闇魔法で姿と気配を消したままその顔が拝める距離まで近付いてみた。
するとその素顔があまりも予想外だったため、うっかり僕は物音を立ててしまい慌ててその場から離れて、彼女が咄嗟に放った風魔法の探知に捕まる事はなかったけど、未だに僕は良い意味で動揺を隠せない。
なんせ銀青の泥棒猫の正体が既にこの世を去ってしまったと思っていたあの子。
「マリーン・モーリス」だった事を知り、彼女が生きていくれた喜びで、僕の心は大いに喜びに満ち溢れているからね。
最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。
次回更新もお楽しみしていてください。




