ブラックVSホワイト
「やるわね……手を抜いたつもりは一切なかったけど、私の一撃を余裕で受け止めるなんて!
人知れず数々の悪党を一人で倒してきたその実力は『本物』みたいね」
エレンの剣を僕が受け止めた事はエレンにとって予想外だったようで、エレンは僅かに驚きの表情を見せる。
僕としては出来るだけエレンと打ち合う事はしたくないので、力任せにエレンの剣を弾いた後、直ぐにエレンとの距離を開けようとした。
だが、エレンはすぐさま体制を立て直し、僕に向かって「僕を黙って逃がすつもりはない」という圧を掛けてくる以上、下手に動いても追われるだけだ。
こうして再び僕とエレンは膠着状態に入った。
(エレンが僕の腕を渋々とはいえ認める発言をしてくれたのは、本来ならば喜ぶべき事なのかもしれない。
だけどエレンが本気で切りかかって来る以上、僕も相応の覚悟を持って挑まないと間違いなくエレンに押され続け、最悪捕まってしまうかな)
先程受けた強烈な一撃は、本気でそう思える重みのある強烈な一撃だった。
だから僕はより気を引き締めてエレンと対峙する。
「さぁ、次は受けきれるかしら?」
エレンがそう言った直後、エレンの体が薄らと光ったかと思うと一瞬で僕の前に表れる!
かと思ったら、エレンは瞬く間もなく高速の連撃を次々と叩きこんで来たのだ!
エレンの放つ一撃は光魔法で大幅に強化された非常に重い一撃であり、そんな物を連撃で放ってくるのだから、僕は必死にエレンの強烈な連撃を受け流し続けているのだけど、流石にずっと受け続けるというのも中々キツイ状況だった。
(……光魔法による身体強化で、パワーもスピードも驚異的レベルまで高めた打ち込み!
…ハハハ、一体ココまでの域に達するまで、どれだけの修練を積んで来たのさ……)
僕のような【反則的な力】を一切得ていない彼女が、ここまでの域に達しているなんて尊敬に値するよ。
本当に!
(光の騎士異名は伊達じゃないって事か)
魔法八階位の中で最も扱いの難しいとされる光魔法。
そんな物を高精度で扱えるエレンの移動速度は、一瞬で「目の前に現れた!」と錯覚するレベルのスピードで、一瞬で僕との距離を詰めて来る。
そんな驚異的なスピードで突っ込んでくるのに、こちらの動きを細部まで観察しているか、カウンターを狙おうにも決める隙がない。
彼女の能力は”人間離れしてる”って冗談抜きで評したくなるレベルだった。
(とてもじゃないけど普段の姿でエレンと剣で撃ち合ったら、今の僕じゃ全く相手にならないだろうね。
全く……これじゃあ七年前と立場が完全に逆転してしまっているね)
切羽詰まった状況だと言うのに、こんな事を考えるのは不謹慎かもしれない。
だけどこうして剣で彼女と打ち合っていると、共に剣の修行に励んだ幼き頃を思い出す。
もっとも今の僕は神遺物なんて反則的に身体能力を強化してくれるアイテムを装着してるから、エレンの連撃をよく観察し、連撃のリズムが一旦切れるポイントを既に見極めている。
そう考えたら、僕もエレンの事を人間離れしているなんて言えないのかもしれない。
(良し、ココだね!)
”ガキィィィーン!!!”
エレンの怒号のように迫る連撃の中で、反撃に転じる瞬間を見極めた僕は、エレンに強烈な一撃を弾いて隙を作り、得物を振った!
僕の一撃がエレンに迫る中、エレンは素早く防御姿勢に移る為に即座に僕の一撃を剣で受け止める防御姿勢を作ろうとする。
だけど僕の得物である斧という武器は、一点に重心が集中している為、一撃の重みが非常に強い。
そんな一撃を強引に作った防御姿勢で受けた所で、勢いを完全に受けとめる事は出来なかったようで、僕の一撃を受け止めたエレンは大きく後方に弾かれた。
こして再びエレンと僕の間には距離が開き、僕とエレンはお互いの出方を伺う膠着状態に再度入った。
「ふぅ……正直に言っておくわ。
この街において私の剣をマトモに受けて返して来れる人間なんて『一人しかいない』って思っていたけど、実は『もう一人居た』なんてね。
そんな事考えもしなかったわ……」
エレンが口では僕の事を認めるような言動を放つけど、その表情は相当悔しそうにしていた。
どうやら先程の連撃を全て受け流されただけでなく、反撃を許してしまった事に対して相当内心相当腹立たしいのが手に取るように分かってしまうのは、付き合いの長い幼馴染の特権というべきかな?
エレンは昔から悉く自分の攻撃を防がれたりして、相手に有効打を与えられないと結構直ぐにイラ付き、その結果型が乱れていたけど、今もその癖が変わっていないというのは、昔の僕のエレンに対する戦法がまだ通用するという事だ。
正直七年間一度もエレンと打ち合っていない僕としては、昔の戦法が今だに通用する事が現状大きなアドバンテージである。
(このまま流れで上手くエレンの隙を付き続けて、エレンをある程度消耗させた上でこの場から素早く離れられるのが一番理想なんだけど……ね)
このまま僕のペースで事が進んでくれることを願いたいのだが、果たしどうなるのか?
「ふぅ…お前のような髑髏を模した兜なんて趣味の悪い物を被っている怪人物の実力を認めたくないけど、認めるしかないみたいね。
私がお前を騎士としてでなく聖騎士として相手をする必要がある『強敵』だという事を!」
エレンがそう言った瞬間、周辺の空気が大きく変わった。
(やっぱりまだ本気を出してなかったか!)
さっきまでのエレンの戦い方は、この街で僕と剣の修行に励んでいた頃と大差ない一般的な騎士の戦闘スタイルだったけど、、僕はエレンがこの街から離れてからの七年間で、エレンが培ってきたモノを僕は知らない。
だから今からのエレンの攻撃スタイルが、エレンの現在の聖騎士としての戦闘スタイルとなる。
(さぁ、どう来る?)
僕はこれから訪れる幼馴染の知らない部分に触れる事になるが、まさかそれが本気の戦いってのは正直喜ばしい事ではないね。
「これからは、今までのようにはいかないわよ?」
そう言ってエレンが剣を上に掲げると、エレンの周囲に無数の光の玉が浮かび上がった!
「受けなさい、光の球弾」
そう言った後エレンが剣を僕目掛けて振り下ろすと同時に、無数の光の玉が僕に向かって襲い掛かってくる!
(くッ、闇の盾!)
”バシュ!!!!”
僕は瞬時に闇魔法によるシールドを展開すし、エレンの放った無数の光の球弾を、僕が生み出した闇に吸わせて攻撃を打ち消した!
しかし僕の魔法がエレンの魔法を打ち消し終える頃には、既にエレンは僕の闇の盾の前に移動しており、そのままエレンは光り輝く斬撃を放って僕のシールドを切り払ったかと思うと、直ぐに次の攻撃動作に入り、僕目掛けて容赦ない一撃を振り下ろして来た。
僕はエレンの放った先程より更なる重みのある一撃を受け止めるべく、防御姿勢を作ってエレンの剣を受け止める!
”バギィ!!”
エレンの斬撃を受け止めた瞬間、僕の左脇腹に鈍い音と痛みが走った!
僕の左脇腹から聞えた鈍い音と痛みの正体、それはエレンの右足から放たれた容赦ない蹴りだった!
エレンの放った蹴りが僕の脇腹に見事に刺ささった事で、鈍い痛みが僕の脇腹が走る。
更にエレンの蹴りで吹き飛ばされた僕は、そのまま建物の壁に体を叩きつけられた。
(くぅッ!
そうだった!!
元々エレンの家系であるバーキン家の得意とする戦い方は、騎士道精神なんかとはかけ離れた「確実に相手を仕留る為に、仕える物をフルに生かして戦う」実戦的かつ確実に相手を仕留めようとする戦い方がウリだ!
その事を忘れていた訳じゃないけど、実際に今もなお攻撃の手を休めないで次々と畳みかけて来るないって、一切容赦のない戦闘スタイルだね。
これは実際やり合ってみると中々手厳しい攻撃だ……)
エレンの攻撃は本当に容赦がないと感じた。
なんせ壁に叩きつけれた直後に僕の目に映っていたのは、無数の光の球弾がこっちに迫ってくる光景だったからね。
最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。




