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本当の敵

 この街の治安維持の為に新たな騎士として赴任してきたエレンの願い通り「アーバントン・タウン」と「グロスター・タウン」に関する情報を纏めた資料を、聖騎士隊(パラディン・ナイツ)の元に送って一週間が経った。

 資料を送った後にエレンは「自分がすべきことが分かったわ」と言ってはいたけど、それが何を意味するのか尋ねても

「そのうち分かるわ、だからウィルは何も心配しないで自分の仕事に集中してて」

 っとエレンは言って僕との話を打ち切ってしまった。

 彼女が何か変な事を考えていなければ良いんだけど……

 しかし、そんな僕の心配を他所にエレン達聖騎士隊は、この街に配属されてからたったの一週間でこの街起きた事件を次々と解決すると同時に、多くの悪党共を捕らえるという目覚ましい活躍を見せてくれた!

 正直エレン大活躍に関しては、幼馴染としてとても誇らしかった。


 そしてエレン達がこの街に来て半年後、この街の誰もが驚く事件が!

 そしてその事件はこの街の新聞の一面を大々的に飾った!!


『グロスター・タウンの統治者、イットリウム氏!

 以前から疑われた不正行為を行っている店舗運営に大いに関与していた証拠を、聖騎士隊に押さえられ遂に逮捕!!』


 なんとエレン率いる聖騎士隊が、この街に根付いたマフィアの一人イットリウムを正面切って堂々と逮捕した記事が大体的に掲載されたのだ。

 この記事を見て僕は驚きを隠せないと同時に、エレンの居るこの街の王国騎士団支所に急いで車を走らせる。


「エレン!」

「ウィル! どうしたの? そんなに慌てて??」

「どうしてこんな無茶な事を!?」

「え? どうゆう事?」

「コレだよ! コレ!!」

 僕は突きつけるように新聞をエレンに見せる。


「あ、コレの件ね」

「コレの件って……自分が何をやったのか分かっているのかい!?

 いくら相手が裏で悪行を働いている人間だからって、地域の統率者をこんな大体的に逮捕するのは相応のリスクがあるんだよ!

 せめて逮捕に乗り出す前に一言僕に相談してくれても良かったんじゃないのか!?」

「ハッキリ言っておくわね。

 ウィル、私はこの街の管轄で動いてるんじゃなくて、王都の管轄で動いているの。

 だからこの街の悪党を捕まえる際に領主である貴男に報告する義務はないの」

「確かにそうかもしれないけど……」

「きっとウィルは私がイットリウムを逮捕した後、イットリウムの残党や手を組んでいる悪党達が私達の元に報復に来ないか心配しているのかもしれないけど、そこは心配しなくても大丈夫よ。

 この半年ウィルがくれた正確な情報を元に、イットリウムと繋がるのある小規模悪徳業も同時に捜査して逮捕してきたんだから。

 それにイットリウム逮捕の件だって、奴らが絶対言い逃れ出来ない証拠を掴んでいるわ。

 確かな証拠さえ掴めば、後はイットリウムの悪行が芋ずる式にドンドン出てきてるから、イットリウムと関連のある悪党共も今後纏めて検挙出来るのよ?

 だからウィルが心配するような事は、私達がそもそも起こさせなんてしないわ!」

「そうゆうことじゃなくて……分かっているのかい!

 こんな事を大々的にやれば、いつか君の身に危険が晒される事になるんだぞ?」

 僕はエレンに向かって思わずキツメに物を言ってしまったが、それに対してエレンは「どうしてこんなことを言われなきゃいけないの?」とでも言いたげな不満そうな表情を浮かべている。


「ねぇ、ウィル? どうして今更そんな事を言うの??

 確かのこの件はウィルのくれた情報が凄く正確で正しかったお陰で、確実に逮捕に繋がった部分も大きいけど、私達騎士の活動には常に危険が付きまとっている事は、貴男だって良く知ってるでしょ?」

「……そうだね。 確かに君の言う通りだ。

 どうやら僕の中では、君が騎士ではなくて七年前と同じ『あの頃の君』だと未だに思い込んでいる部分があったのかもしれない……」

「もう、相変わらず心配性なんだから。

 昔の吉見って事で、今回の件は水に流してあげるけど……いくらウィルがこの街の領主とはいえ下手に王国騎士に抗議すると、最悪公務執行妨害になる事もあるんだから気を付けてね」

 僕が急遽エレンの元に訪れた理由を聞いてもエレンは「騎士として当たり前の事しただけなのに、どうして文句を言われなきゃいけないの?」ぐらいにしか考えてないみたいようだ。

 僕もこれ以上話しても僕の気持ちは伝わらないし「これ以上事の真相を話す訳にもいかない」と考えたので、僕は自ら騒ぎ立て場の空気を悪くしてしまった事に関する非礼を詫びると、それでこの話は終わった。


 僕は再び屋敷に戻る最中、アルフォンスに先程の出来事を伝えると、この街の裏の更なる裏の事情を僕ともに知っているアルフォンスも「エレンの活躍を喜びたいけど素直に喜べない……」そんな複雑な表情を浮かべている。

 そして今後もエレンはこの街の為にこのような活躍を続ける事は想像が付くとなると、僕はある事を決断せざるおえなかった。


「どうやら僕も、表に出て活動をする時が来たのかもしれない……」

「それはエレノア様に【奴等】の視線が向かないようにする為にですか?」

「ああ……それもあるんだけど、それより奴等としては折角作った拠点を時間を掛けて確実に潰されただけでなく、この七年間自分達が探している物の手がかりを一向に掴めていないだろうから、奴等だって多少なり焦りを感じてるハズさ。

 だから奴等も鬱憤が溜まり始めてきてる中、表立って自分たちの活動を邪魔する人間が現れたとなると、流石に今まで静観を決め込んでいた奴らも黙っちゃいないだろう。

 これで奴等がエレンに目を向け、エレンをこの街から排除しようと動かれても困るし、本来その視線は今まで影に隠れて奴ら行動を妨害し続けていた僕に、本来向けられるべき視線だからね」

 当のエレンは自分がやった事がいくら王国騎士と言えど、その身を大いに危険に晒す事に繋がっているなんて、夢にも思っていないんだろうけど……

 実は僕はこの七年間人知れずマファイ達と戦っている最中、疑問に感じている事があった。 それは

【どうしてマフィア達が、七年前にこの街に襲撃を仕掛けてきたのか?】

 その真相を探っていると、思わぬ事実が見えてきた。


 まず七年前に起きたこの街とマフィアの戦争は、そもそもがマフィア達にとって大いに危険を冒してまで仕掛けるメリットが、あまりも希薄だった。

 そもそもこの街の良い所と言えば、気候と土壌が良く、王都からも近い。

 その程度の物だし、いくら王都が近いと言っても他の街に比べたら比較的近いという程度で、結局は最も発展している王都からは外れてはいるから、この街の発展度合いなんて”そこそこ”レベルなのだ。

 おまけに独自の田舎臭さも残っている地域も多い。 もっともソコが誰もが住みやすいと評される点でもあるんだけど、それはあくまでもこの地に住まう一般人の意見であり、マフィア達やならず者にとってこの街が【魅力的なのか?】と言われたら、そうとも言い切れない部分があまりに多い。

 だから「別の狙いが何かあるのか?」と思って、この七年間地道に調べ続けた結果、七年前この街を襲撃したマフィア達の裏には、ある秘密結社が存在する事を突き止めた。

 その秘密結社名は【イルミナーテン】


 イルミナーテンは世界を股に掛ける闇の組織の王であると噂され、名前が独り歩きしているだけで「本当は実在しない組織ではないのか?」とされ言われているほど謎の多い組織だ。

 だが、何度かこの街に巣食うマフィア達のアジトに足を踏み入れ調査を続けていると、確認できたのは極僅かだったけどイルミナーテンの紋章である”六芒星の中に縦に描かれた目”が入った指令書をこの目で確認した事で、僕はマフィア達のバックに『本当の敵』が潜んでいる事を知ってしまった。

 おまけに指令書の内容を盗み見た際、指令書には”神の残せし物の捜索状況”という一文が目に入った事から、イルミナーテンがこの街をマフィア達に襲撃させた本当の狙いが、僕の装着している【神遺(ディヴァイン・)(レリック)】である事が分かった。

 そして同時に、あくまで推測だけどイルミナーテン側は「この街にある神遺物が何処にあってどんな形をしているのか?」その事実をまだ把握出来ていないのだろう。

 もし神遺物の詳細を把握出来ているのなら、真っ先に僕の命を狙っているハズだ。


 こうして真の敵の存在を知ると同時に、その勢力の強大さも知る事となった僕は、イルミナーテンが本腰を上げてこの街を襲撃させないためにも、僕が扱う憎悪(ダークネス)する()(ヘイトレド)の存在が明るみに出ないように、扱う僕自身が闇に紛れつつ表に出ることがなく活動を進めていた。

 しかし敵側も、自分たちの活動を長きに渡って裏で邪魔する存在に気付き始めているし、良い加減排除しようとそのうち動き始めるハズだ。

 だからこそ僕は、そろそろ人知れず活動するのも限界が近づいていると思っていた。

(そう思っていた矢先、まさか表立って堂々と悪党を成敗出来る正義の味方が現れてくれる。

 これってタイミングが良いんだが、悪いんだか……)

 僕は内心複雑な心情抱えつつ、己の為すべき事なす為の術と己が守りたい者を守る術。

 この二つを念頭に置聞きつつ、僕は今後どう動く必要があるのか?

 その答えは既に僕の中で出ている。 つまり遂に僕が矢面に立って動く時が来たという事だ。

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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