二つの顔
エレンと婚約破棄とお互いの未来について話を付けた後、エレンは自分の夢である「聖騎士」になる夢を叶える為にこの街から王都に移り住むことになった。
この世界で最も厳しいとされる騎士養成のため学院「王国騎士養成学院」に通う為に。
そして見送りの日にエレンから
「私ね、ウィルから安心して『この街の防衛を任せられても大丈夫!』って思えるような、立派な聖騎士になってみせるわ!」
この街から去ろうとする前に、素敵な笑顔で僕に意気込み語るエレン。
だから僕も負けじと
「僕だってエレンがこの街に戻ってきた時、エレンが驚くぐらいこの街を以前より良い街に発展させてみせるよ!」
僕とエレンはお互い次に会った時に達成すべき目標を掲げあった。
そして笑顔でこの街かから旅立つエレンを、僕も負けないぐらの笑顔でエレンの旅立ちを見送った。
この街から離れて行くエレンを見ていると、僕の中に深い悲しみと後悔の念が現れた。
この時僕は本当の意味で今までずっと隣に居てくれて、僕を支え続けてくれた最高の婚約者という存在を手放してしまった事に、強い後悔の念を抱いている事を自覚してしまう。
「……本当に僕って自分勝手な人間なんだね」
そう苦笑しつつ、自分の事を自分で貶さずにはいられなかった。
そして同時に
「エレンだって絶望から立ち直って夢を追いかけ始めたんだ。
だから僕だって自分の目標を叶える為にエレンに負けてはいられない!」
エレンの前を向いて進む姿勢に元気付けられた僕は、今後自分が成すべき事を成す為にも、やれる事を確実かつ全力で取り組み己が野望を必ず成し遂げる決意を新たにしたのであった。
*
こうして本格的に始まった僕の新たな生活は、明るい内はサナッタ・シティ領主とオーウェン家当主の仕事に追われ、夜になればシェイドがこの世界に残したとされる神遺物事、憎悪する闇を上手く活用するために、神遺物の特性の研究に時間を費やしつつ、同時に神遺物を纏うと強まる憎悪を上手くコントロールする為のトレーニングという、多忙な毎日を僕送る事になった。
僕が表の活動としている「当主と領主の二足の草鞋」の活動詳細を知った人は、誰もが顔を引きつらせてドン引きしていたので、きっと僕やってる事は世間からすると相当な仕事量を熟しているんだと思う。
だけど今の僕にとってこの「瀬感からすると多忙過ぎるスケジュール」に振り回されると言う事が、逆に僕の中で燻っている数多の悲しみにの感情に引きずられる事を許さないし、今はとにかく何かに追われている方が僕の中に未だに強く渦巻く憎しみの感情を、押さえるブレーキにもなってくれていた。
どうしてこんな多忙を極めてまで己の憎しみを押さえこもうとしているのかと言うと、それは神遺物を装着した際に生じる作用が大いに関係していたからだ。
僕が扱う憎悪する闇は、僕の憎悪が増せば増すほどより強い力を引き出す特性を持つが、それは同時に憎悪が増せば増すほど僕は憎悪の感情に囚われてしまうという事であった。
これはブローウニン・ドラッグファミリーを壊滅させた際の自分の状態を再度思い返しつつ、アルフォンス聞いてもらいながらブローウニンの館を襲撃した時の僕の精神状態を、アルフォンスに分析してもらった。
その結果、僕は憎しみが増せば増すほど徐々に理性による判断が出来なくなると同時に、僕の憎悪の源と言える『復讐』を真っ先に成し遂げようとしてしまう危険な反作用が、憎悪する闇にはある事が分かった。
よって、今後この憎悪する闇が持つ作用と反作用。 この二つとどう向き合い、どう付き合っていけば神遺物の力を上手く扱えるようになるのか?
この問題に関する研究は未だに続いているが、神遺物に関する研究と扱う為に心身共に鍛錬を続けた結果、以前ブローウニン・ドラッグファミリーを壊滅させた時のような危険な精神状態に堕ちないよう、自分の中に渦巻く憎悪をコントロール術は身に付ける事が出来た。
ちなみに、始めて見た時は髑髏の形をした掌ほどの大きさだった憎悪する闇は、今は僕の体の一部のように僕の中に溶け込んでいるようで、基本的には自在に僕の意思で着脱出来る状態となっている。
だけどお僕の憎悪の感情が一定値を超えてしまうと、僕の強い憎悪の感情に反応し”僕の体に勝手に憎悪する闇が装着されてしまう”という困った特性も持っている。
どうやらこの現象は先も述べたように、憎悪する闇が僕の憎悪の感情の起伏を強く促そうとするので、上手く憎悪の感情をコントロール出来なければ、僕はまたブローウニン・ドラッグファミリーを壊滅させた時のように、僕自身が憎悪の心のままに暴走する危険性を、常に孕んでいる証拠でもあった。
そして僕は、今後人知れず闇に紛れて悪を裁く者として活動するに当たって、決めた事があった。
それは『僕が悪党を成敗するにしても、以前のように悪党命を奪う事を止め、最後に悪党を裁くのは、僕ではなく【世間】に委ねる』事だ。
コレはブローウニン・ドラッグファミリーを壊滅させた事件が、悲惨な大量殺人事件として扱われてしまった事で、ブローウニン達がやってきた悪行が
【騒ぎ立てられる事もなければ、その後も殆どピックアップされる事もなかった】
という歯痒い結末のまま、終わってしまったからだ。
つまりこの事から、世間の関心が如何にマスメディアが大体的に取り上げた「大量殺人事件」側に意識が向いてしる証拠でもあり、本来もっと非難される存在を同情するように仕向けられているのと同じだ。
つまり結局の所、あの事件で「民衆はマスメディアにコントロールされがち」という現実を、僕は大いに知ら占めれた。
だから悪党を裁くための下準備は僕が整えるけど、最後に悪党を「どう裁くのか?」その判決は世間に委ねる事にした
こうして僕は、世間的に今後極悪人として扱われ続けれてしまうのだろう。
そうなると、マスメディアに僕の裏で行っている活動が『悪』と認定されてしまえば、最終的に僕の裏の活動に大いに支障を来たしてしまうので、僕は自分の手で悪党に【最後の一手】を加える事を止める事にした。
こうして、僕は表は善良そうな領主兼オーウェン家の当主として、この街の復刻に取り組みつつ夜になればこの街に潜む悪党達の勢力を、誰にも知られずして成敗する。
そんな誰にも褒められる事も称えられる事もない僕の裏の活動に関しては、未だにゴールが見えないでいた。
最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。




