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憎悪が増すたび闇も増す

 僕はブローウニンと対峙すると、今日の本懐を成し遂げるべく、ブローウニンに勢いよく正面から迫った。

 だが、いくら僕が聖遺物の力で強化されて居ようと、流石に正面から突撃したのは無謀だったようで、僕はブローウニンが樹魔法で作り出した無数の木の根に拘束されてしまう。

 そんな僕の姿を見て”ニヤリ”と薄気味悪い笑みを浮かべるブローウニンだが、その方が裁きを下す悪党の姿として相応しい姿だと思った。

 だから僕は、容赦なくブローウニンに裁きの鉄槌を下してやるため、僕の体を拘束しつつ、力強い力で僕を絞め殺そうとしている無数の木の根を、力づくで引きちぎってこの拘束から脱出を試みようとする。

 だけど、そう思った矢先! 突如僕の視界がぼやけ始めた。


(なんだ……これ)

 ブローウニンが樹魔法で、幻覚作用を生み出す植物を作り上げ、その効果を声高らかに説明し初めたが、目の前の視界の歪みが激しいのと、幻聴が五月蠅くてブローウニンが何を言ってるのかさっぱり分からない。

 そして、時間が経てば経つほど目の前の視界は酷く歪み、歪んだ視界の先にはあの日の……父さんと母さんがまだ生きてる頃の姿が移し出せれたと思った途端、何度も悪夢で見てきた父さんと母さんが、この世から跡形もなく消し去らる光景が、何度も繰り返される。

 そして、骨のようにボロボロの姿となった父さんと母さんが現れ


「そうだ、お前の所為で、私達は死んだんだ!!」

「そうだ、お前が領主としての責務から逃げ続けるから、この街はこんなに一気に荒んだ!!」

「そうだ、お前が全てを壊したんだ!!!」

「そうだ、この街が、サナッタ・シティがこうなった責任、どう取るんだ!!!!」


 幻影の両親や、エレンと言った親しい人間から、あの抗争で亡くなった僕の知っている人達が、僕に怨嗟を込めた言葉を投げつけ、僕の事を激しく非難してきた。

 本来の心が弱り切っている僕だったら、この絶望を濃縮したような幻影を見せられれば、僕の気は大いに狂い、そして廃人に至っていたんだと思う。

 だけど今の僕は、僕にとって最も恨めしい出来事を再び見せられ、尊敬し、愛していた両親や多くの人達から、例え幻とはいえ「そう言われても仕方がない」罵声を浴びせらようとも、それは全てこの状況を作り上げた元凶達に向けられる憎しみへと変わる。

 そして僕の中の渦巻く憎しみが増し、憎しみの渦が強まれば強まる程僕の力が、いや、僕が身に纏っている【憎悪(ダークネス・)する(オブ)(・ヘイトレド)】が、僕に更なる力を与えてくれるのが分かる。

 そして僕が悪党共を憎み、ダークネス・オブ・ヘイトレドの力が増せば増すほど、僕の歪んだ視界が定まり、僕が裁きを下す存在が再び僕の目に移り込むと僕は


「ハハハハ……アハハハハハハハハハハハ!」

 もう、笑わずには居られなかった!

 なんせ僕が相手を憎いと思えば思うほど、僕は更なる力を手にし、圧倒的力で一方的な力を持って、復讐を、裁きの鉄槌を下す事が出来る。

 その事をブローウニンとの戦いで悟ってしまうと、ブローウニンが僕を殺す為に必死に策を講じているというのに、それが仇となって僕により強大な力を与えている。

 そんなブローウニンの姿が、あまりも滑稽だった。

 そして、この力こそ僕の成すべき復讐にとって、最高の相棒となる力だと理解したら、どうにも笑いを堪える事が出来なかった。


「ヒヒヒヒ……どうやらワシの薬が見せる幻覚で、完全に気が触れたようじゃな!」

 自分のやった事が、僕にダークネス・オブ・ヘイトレドの神髄に気付かせ、自身をより絶体絶命の状況に追い込んでしまっているというのに、その事に気が付かないで、馬鹿みたいに笑っているブローウニン。

 そんな彼を見ていると、彼がとても哀れで、矮小な存在に思えてきた。

 だからと言って僕の憎しみの渦が収まる事もなければ、僕はブローウニンに裁きの鉄槌を下す事を止めるつもりは一切ない。

 だから僕は、ブローウニンに向かってこう言った。


「……僕が笑っていたのが、気が触れたからだって? 違うね!

 僕が笑ったのは、僕がお前達悪党に裁きを! 鉄槌を下す事が出来る瞬間を、やっと手に入れたという確信を得たから『笑わずにはいられなかっただけ』なんだよ!!」

 そう言った後、僕は力を思いっきり込めて僕を拘束する木の根を力任せに引きちぎり


「これが! 僕がお前達『悪党』に与える裁きの鉄槌だぁぁぁぁぁ!!!!」

 その一言と共に、ブローウニンに裁きの一撃を与えると、ブローウニンはそのまま地面に倒れた。


「ハハハハ……アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!

 父さん、母さん、あの世で見てくれていますか?

 僕は遂に、遂に父さんと母さんを死に追いやった者達に、一矢報いうる事が出来ました!」

 この時の僕は、父さんと母さんの命を直接奪った者はもうこの世に居ないから、その代わりに復讐する相手に、僕なりの裁きの鉄槌を悪党共に下せた事。

 自分の復讐の足掛かりが掴めた事に、大いに満足していた。


(さぁ、次だ! 次はどの悪党に裁きの鉄槌を!)

 僕の高揚感は最高に達していて、その勢いに任せて次のターゲットの元に向かおうとした際


「王国騎士隊だ! この場に居る全員大人しくしろ!」

 突如ホールの入り口から、王国騎士隊が姿を現したのに驚いた僕は、その場に立ち尽くすのだった。

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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