街を堕落させようとする者
「どうじゃ? 今日も大量にバラまけたか?」
「はい! 順調に各ブツはバラまけてます」
「そうか、そうか、順調か! ヒッヒッヒッヒ……」
男は、部下からの報告を聞いて満足そうな表情を浮かべ、意地の悪い笑みを浮かべた後、部下がバラまいた物がもたらす金の山を見たブローウニンは、更に大声で「ヒャ、ヒャ、ヒャ、ヒャ」と、下品に笑う。
サナッタ・シティを構成する13の地域の一つ”プリンストン・タウン”
この地域もまた、マフィア達との抗争で本来の管理者を失った事で、マフィア達に奪われた地域の一つで、この街とマフィアの抗争が終わりを迎えても、フィア達の残党の生き残りが、この地域を管理していた。
そして、本来の管理者を亡き者にしてから、今もプリンストン・タウンを管理している人間こそ、先程部下の報告を聞いて、意地悪い笑みを浮かべている男である「ブローウニン」であった。
ブローウニンは「気分が良くなる薬草」と称して、ある物をサナッタシティの各地に、部下を使って配り回っている。
ブローウニンが薬草と称して配り回っている物は、ある草を乾燥させた後、粉末状に磨り潰した物であり、この粉末にお香のように火を付けて煙を出すと、ミントの香りのようなスーッ……とした香りを感じた後に、清涼感を感じる為、気分が「スッキリ」したような気になる作用がある。
こうして、この香りを一度嗅いだ者のほとんどが、この香りを気に入り、スッキリしたような感覚を再び味わいたいがために、何度も香りを嗅ぐようになってしまう。
そして、何度もこの香りを嗅いでいると、何時しかこの草の粉末から発せられる香りを、嗅いでいなければ「イライラ」を感じるようになるため、この薬草の香りを嗅ぐスパンが短くなると同時に、より長い時間香りを嗅いでいないと、満足できないようになるのだ。
そして受け取った薬草が底を突き、再び「あの薬草の香りを『どうしても』嗅ぎたい」と考えるようになってしまった者達は、この薬草をくれた人間が、別れ際に言った「あの言葉」を思い出す。
『またこの薬草が欲しくなったら、プリンストン・タウンのブローウニンさんの所に、顔出しな!』
こうして薬草を受け取った者達の殆どが、ブローウニンが配っている【薬草】と称する「ある物」の香りを再び嗅ぎたいがために、ブローウニンの住む屋敷に訪れる。
そして、屋敷で再び薬草を入手するのだが、その際に、薬草代としてそこらの薬草の数十倍の値段の金額を提示されるのだが、この薬草の虜になった者達は【あの薬草】の香りを再び嗅ぎたいがためだけに、何の躊躇もなくブローウニンの部下が提示した金額を払うのだが、その様子は傍から見ると、異常に感じる。
例えば、どんな高価な薬草であっても普通なら【いい香りがする薬草の為だけに、自分の生活が困窮してしまう金額を平気で出せるのか?】
と言われたら、ほとんどの人間が「出さないと」答えるだろう。
だが、ブローウニンがプリンストン・タウンを中心に、サナッタシティの各地で配り回ってる薬草の香りの虜になってしまった者達は、どんな事をしてでも、薬草の代金を払おうとすると言えば、この状況が如何に”異常”であるのか、少しは伝わるだろうか?
おまけにこの草の粉末、どこか別の場所で手に入れようとしても、決して手に入れる事は出来ないのだが、それもそのハズ!
この草の粉末は、ブローウニンが得意とする魔法八階位、第五位属性である【樹】の魔法を用いて作った植物の粉末である以上、この粉末を作れるのは、ブローウニン以外に誰もいない。
つまり、この粉末の香りを嗅ぎたくて仕方がない者達が、再び薬草の匂いを嗅ぐためには、ブローウニンに頼るしかないのだ!
どうして、ブローウニンの作った草の粉末の香りを、高額な金を払ってまで嗅ごうとする者が、多いのだろうか? その答えは至って単純!
このブローウニンの作った草の粉末に、火を付けてから出る煙には、中毒性の高い成分が含まれている為であり、つまるところブローウニンの作っている粉末は「薬草の粉末」などではなく、その実態は中毒性の極めて高い「麻薬」でしかないという事なのだ!
この麻薬の性質が悪い所は、匂いが非常にミントに似ている為、代用品としてリラックス効果のあるミントの香りを嗅いだとしても、逆にミントの香りが中毒症状を”強める”ように調合されている所と、現在この街ことサナッタ・シティの人達は、街の復興の為に尽力を尽くすあまり、大いに疲れをため込んでいる者が殆どだった。
だからこそ、知らずして癒しを求める者は増えており、そんな状況下において、手軽に癒しを感じれる物を渡されたら、なんとなしに試してしまうのが人の性であり、その状況こそ麻薬を広めるには打って付けの状況だという事を、ブローウニンは知っており、後は部下を使って最初は無料で麻薬を渡せば、後は中毒症状に陥った者達が、勝手にお金を落としてくれるし、お金が払えない者は、麻薬を手に入れる為に、自分たちの言い成りとなる。
ブローウニンは、この方法を使っていくつもの町を堕落させ、最終的に自身が作ったの麻薬に完全に依存させれば、その域は己の支配域へと様変わりさせることで、自身の私腹を肥やしてきたのだ。
そして今回も、自分の目論見通り事が進んでいる為、ブローウニンの嫌らしい笑いは、止まる事を知らない。
現に今も、自分の作った麻薬の虜になった貧しい者が、どこから奪ってきたか分からない金品を持って、ブローウニンの部下に「早く麻薬を売ってくれ」と、せがむ姿を見れば、事が思い描いた通りに進んでいるのを実感すると同時に、この状況が楽しくて仕方がないみたいだ。
「ウヒャヒャヒャ!
いいぞ、いいぞ!!
もっと、わしの作った薬に嵌れ!!!
(そして、お前達がこの街を、あの方達とわし等の為に、破壊しつくせ!
そして、あの方達が求める物を探し出し、わしに更なる富と権力を与える使い捨ての駒となるのじゃ!!)
ブローウニンは相変わらずご満悦の様子で、これから先の事を考えていると、突然部屋が真っ暗闇に染まった。
「なんじゃあ? 魔力切れかぁ?」
突如として屋敷全体が真っ暗闇に包まれた為、ブローウニンは館の照明や水道を稼働させる為の魔力を作る魔力炉に異常が起きたのか?
と思ったのだろう。
ブローウニンは近くにいた部下に、早急に魔力路を点検するように命令する。
そして待つこと15分……
*
「……遅い、いくら何でも遅すぎる」
復旧に時間が掛かっているにせよ、例え魔力炉が完全に壊れてしまっているにせよ、とっくに部下から”何かしらの情報”が入っても可笑しくない時間が、大いに過ぎている事を不審に思ったブローウニンは、どっしりと構えて座っていた席から立ち上がって、部下達の様子を見に行こうとすると
「ブ、ブローウニン様!
大変です!
敵襲、敵襲です!!」
「なんじゃと?
一体何処の誰じゃ!
この『幻緑のブローウニン』に喧嘩を売ってくる愚か者は!!」
この町こと、プリンストン・タウンを己の支配域にしてから、ブローウニンに喧嘩を売ってくる者所か、このプリンストン・タウンに住む者達の殆どがブローウニンが作った麻薬欲しさに、逆おうと考える者すら居なくなっていた。
己の計画が順調に進んでご満悦だった気分を、大いに害されたブローウニン。
彼は怒りを顕にしつつ、部下と共に襲撃者の元に向かうのであった。
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