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復讐の狼煙

 シェイドに、今僕の心の中でもっとも強く宿っている感情を指摘され、未だその事実を受け入れきれない気持ちがある。

 だけどシェイドの言う通りあの事件が終わってから、僕の中には確かに憎悪が常に渦巻いている。

 だからこそ僕はエレンを傷つけ、多くの人間が期待している役割を放棄するかのように、屋敷に閉じこもった。

 コレに関しては否定しようのない事実だ。

 だけど僕には、己に渦巻く憎悪を生んだ憎悪の根源に対して復讐する手立てもなければ、力もない。

 だから、今の僕の心には憎悪と共に絶望と諦めの感情も渦巻いるから、目に映る物全てに”興味すら持とうとすら”しなかった。

 そんな僕でも、シェイドが「力の片鱗」と言っている黒い髑髏の魔道具を目にした時、僕の中で未だに強く在り続ける憎悪の感情が再び沸き立ったけど、この時久しぶりに僕の感情が大きく動いたの感じた。

 だから僕はきっとこの髑髏の魔道具に興味を持ったんだと思う。

 そして、この魔道具に興味を持った時点で、僕のシェイドの問い掛けに対する答えは、もう決まっていたんだろう……


 それにシェイドに本心を指摘され、己の中に宿る醜い自分を少し自覚したら、ほんの僅かだけど僕の心は軽くなった気がする。

 こうして先程より冷静さを取り戻した僕は、シェイドが僕に【力を与える変わりに、シェイドはどんな試練を課そうとしているのか?】

 その部分に一切シェイドが触れない事が気になり、シェイドから試練の内容を聞いてから判断を下した方が良いのかもしれない。

 そう思った。


「シェイド、試練の内容って?」


『我が真なる力の片鱗を使えば、全ては自ずと分かる』


「つまり”それ”も含めて試練だという事?」


『そうだ。

 汝、試練に挑め、そして憎悪に飲まれよ。

 その先に真の力有』

 ……どうやら詳細に関して教えてくれるつもりはないみたいだ。

 だったら別の質問をしてみよう。


「もし、試練に失敗したら?」


『汝、我が力の片鱗から見放される。

 もしくは、汝、自滅する』

 どうやら試練の内容は想像を絶するほど危険なのかもしれない……だけど、正直言って今の僕は例え危険を冒してでもやりたい事がある。


(僕をこの状況に追いやった存在に復讐したい! その為にも、失った左腕に変わる力が欲しい!!

 そして父さんと母さんが、この世から去る事となった【原因】を見つけ出し、必ずその存在に罪を償わせてやる!)

 この想いこそ今の僕の中に渦巻いている憎悪であり、最も強い願望でもある。

 だから僕はシェイドに向かって全力で叫んだ!


『シェイド、僕は君の試練を受ける!

 だから、だから僕に力を!!』


『ならば使え、我の残した力の片鱗”憎悪す(ダークネス・オブ)る闇(・ヘイトレド)”を。

 そして試練を乗り越え、我らが望んだ存在に至れ』

 シェイドがそう言い終わった瞬間、僕の目の前に広がっていた漆黒の空間は消えたかと思うと、目の前には見慣た屋敷の光景と、アルフォンスが作り上げた封印室が映る。

 だけど先程と変わってアルフォンスの表情は、驚愕の表情を浮かべながら僕を見ていた。


「おぼ……ちゃま?……そのお姿は……一体」

 基本何が起きても動じる様子を見せないアルフォンスが、僕に初めて見せる驚愕の表情のまま僕に何かを確認してきた。


「僕の姿?」

 アルフォンスの表情から僕に何かが起きているのは伝わるけど、特に自分自身に関して違和感を感じる事もない。

 とりあえず真っ先に確認出来る手から確認しようと、髑髏の魔道具を封印室に投げ入れようとする姿勢を戻し、両手を見れば


「え!?」

 僕の両手はガントレットで覆われていた!

 だけど、僕の感覚は腕にガントレットを装着している感じが一切ない。

 ”今自分の体がどうなっているのか?”その事が気になった僕は、周囲に自分の姿が何か映る物が無いか探してみると、目の前の窓ガラスに屋敷の中が反射して映っている事に気が付いたので、素早く窓ガラスの前に僕は立って自分の姿を確認すると


 「まさか……まさかコレが?」

 そう言った僕の姿は”漆黒の甲冑を見に包む髑髏”と形容するに相応しい、何ともおぞましい姿へと変貌を遂げていた。

 そして今の自分の姿を確認すると同時に、さっきまで投げ捨てようとしていた”黒い髑髏の魔道具”がドコにも見当たらない。

 つまり今の僕の姿は、あの黒い髑髏の魔道具が変化し、僕の姿を「髑髏の騎士」に変えた。

 そして【コレ】こそこの街が作られ、オーウェン家が代々「全てを賭して守ってきた物」であり、八大精霊神が、この世界を去る時”一体につき一つ、この世界に残した”とされ、この世界に八つしかない特別な魔道具である【(ディヴァイン)遺物(レリック)】の一つ【ダークネス・オブ・ヘイトレド】である事を悟った。


「アルフォンス…どうやらコレはシェイドが、僕の願いを叶える為に授けれてくれた神遺物みたいなんだ」


「神遺物……管理しているオーウェン家の人間でさえ『何代も扱える人間が現れる事がないから、もはやどんな形で存在しているかも分からない』と言われ、もはや実在するかも分からない物。

 旦那様から以前そのように伺ってはいましたが、まさかお坊ちゃまが使い手に選ばれるとは……」

 髑髏の闇騎士へと変貌した僕を見るアルフォンスは、驚きを隠せない様子を見せる。

 そして同時にどこか不安げな表情を見せたけど、アルフォンスが今の僕に対してそんな表情を見せた理由を、この時の僕は知る由もなかった。

 それにこの時の僕は、僕を心配してくれているアルフォンスの事よりこのダークネス・オブ・ヘイトレドを身に纏ってから、僕の中である言葉がずっと囁き続けるので、その言葉にずっと耳を向けていた。


(奴らを……決して……許すな!!!!!)

 僕はその囁きが”何を意味するのか”を瞬時に理解すると同時に、この鎧を装着してから湧き上がってくるあの感情と力を押さえる事が出来ない。

 もう「いち早く目的を達成したい」という己の欲望に駆り立てら続けた僕は、その欲望に従うかのように窓を突き破って外に飛び出した。

 目的を達成する為にあの場所に向かって。


「お坊ちゃま!!!!!!!」

 後方からアルフォンスが必死に呼び止める叫びが聞こえたけど、この時の僕はその言葉が耳に入っても一切聞く気はなんてかった。

 なんせ今の僕は、やっと復讐を遂行できる力を得た事で狂喜の喜びに満ち、復讐の対象の元に向かう事しか頭になかったからだ。


 こうしてこの日は、僕にとって復讐の狼煙が初めて上がる日となる。

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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