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闇の精霊神が暴く真実

 黒い髑髏の魔道具を持って、自分の部屋に戻ろうとしている最中に、この屋敷で今働いている使用人の中で最も古株で、執事長を務めているアルフォンスと、ばったり八合わせた。

 するとアルフォンスは、笑顔で僕に挨拶した後、僕が持っている黒い髑髏の魔道具を見ると、首傾げながら


「お坊ちゃま? その手に持っている物は、どこから持ち出された物でしょうか?」

 と、尋ねてきたから、僕は素直に


「地下室からだけど?」

 そう答えると、先程まで笑顔を見せていたアルフォンスの表情が、引き締まった。


「……可笑しいですね? そのような物、地下室で見かけ事は一度もございませんが?

「え!?」

「お坊ちゃまには失礼を承知でお尋ねしますが、その魔道具! 本当に地下室に置いてあったのですか?」

「本当だよ、さっき地下室に行った時に見つけたんだ!」

 この屋敷に関して、僕より詳しいアルフォンスに嘘を付いても、スグにバレるは分かっていたし、隠す事でもないので、この魔道具を地下室から持ち出した事を正直に答える、

 だけど、アルフォンスの表情は未だに引き締まったままだった。

 つまりそれが意味するのは、僕が今手に持っている魔道具が”外部から持ち込まれた”可能性を示している事を、アルフォンスの表情から察した僕は


「アルフォンス、今すぐ警戒態勢に入るよう、屋敷の皆に指示を!」

「分かりました!

 ですが、その前にお坊ちゃまの安全確保が先です! その魔道具は一旦私が今から作る封印室にて隔離しますので、封印室が完成したらスグにその魔道具を、封印室に投げ入れてください!」

 外部から何者かがこの屋敷に侵入した可能性を疑って、アルフォンスに警戒態勢に入るようアルフォンスに指示を出した後、アルフォンスから僕が手に持った魔道具を、アルフォンスが得意とする魔法八階位第6位の土属性の魔法で作った、封印用の部屋に投げ入れるように指示してきたので、その言葉に従って、アルフォンスが即興で作り上げてくれた隔離用の部屋に、僕は魔道具を投げ入れようと、全力で振りかぶった!

 その瞬間!!


『汝に問う。

 汝、我が力の片鱗を扱う資格を持つ者。

 故に、汝、我が待ち望んだ存在となり得る者か?』


 「!!!!!?」

 突然頭に謎の声が響き渡ったので、僕は驚いてその場で固まってしまうのだが、それと同時に、夕日が沈みかけているとはいえ、まだ明かりを付けなくても見えていた屋敷の景観が、突如暗闇に包まれる!


「え!? 一体何???」

 あまりも不可解な現状が目の前に広がったので、僕は思わず声を上げて驚いてしまうが、僕が発した驚きの声に対応するかのように。


『我が力の片鱗を扱う資格を持った者よ。

 改めて汝に問う。

 汝は、我が残した真なる力を扱うに値する存在であると、自負するか?』


 暗闇の中で漆黒の輝きを発しつつ、黒い翼を持った影のような存在が、僕の頭に再び問いかけてきた。

 そして、その姿は、多くの精霊信仰の文献の中で見た”ある物”に、どことなく似ていた。


「もしかして……闇の精霊神?」


『如何にも。 我はシェイド。 この世界の闇を作りし存在』


 半信半疑で尋ねてみたけど、まさか本当に闇の精霊神である”シェイド”だなんて……そんな途轍もない存在が、僕の前に突然現れた事を考えると、さっきまで光を感じれた世界が、突如、真っ暗闇の光を感じない世界に変化したのも”特段可笑しな事ではない”と思えるのは、闇の精霊神の力の成す所なんだろうね。


「どうして闇の精霊神が、シェイドが……僕なんかの前に?」


『汝、我がこの世界を去る際に残した残滓を扱う。

 同時に、我が力の片鱗を扱う資格を持つが故、我、汝に問うている』


「力の片鱗を……扱う資格?」

 この世界は八大精霊神の手によって作られ、精霊神達はこの世界を作った後に、この世界とは別の世界に旅立ったとされ、その際この世界に残した力が”魔法八階位である”という伝承が残ってはいるけど、まさか本当だったなんて……

 正直、おとぎ話のように何度も聞かされた話の中に出て来る精霊神が「目の前に居る」という事に驚きを隠せない。

 そして、シェイドが僕に言った「世界を去る際に残した残滓を扱える」というのが、僕が適性を持つ魔法八階位、第八位の属性【闇】である事は、直ぐに分かった。

 だけど「片鱗を扱う資格」に関しては、全く思い当る節がないので、思わずオウム返しのように訪ねてしまった。


『我が力の片鱗を扱うに当たって、我が資格と定めている物。

 それは、果てしない【憎悪】

 それは、汝の中に強く宿っている。

 【怒り、憎しみ、怨嗟、怨み】として』


「憎悪なんて、誰にでもある物なんじゃ……」


『汝、何故か気が付いていないフリをする。

 汝は、汝が大切だと思う物を多数失った。

 故に、汝、この世の物と、この世界を大いに憎悪する。

 だから、汝、我が力の片鱗を扱う資格有』


「違う! 僕は、憎悪を! 誰にも、世界になんか向けたりしていない!!」


『汝、我の力の片鱗を目の当たりにした際に、激しく憎悪した』


「え……!?」


『頭蓋を模った我が力の片鱗を目の当たりした時、汝、あらとあらゆる物に、激しい憎悪を向けた』


「そっ、そんなことは……」


『汝の領域に、異物が入ったと疑った時、汝、世界に対して憎悪を向けた』


「違う……違うんだ……」

 言葉では必死に否定して見せたけど、実際はシェイドの言う通り、僕は頭蓋の形をした物を見た時「両親が死にゆく光景を思い出すのと同時に、その光景を作った要因達を恨んだ。

 そして、再び侵入者が訪れたと思った時、僕の平穏だった日常を破壊しようとする現状。

 つまり今の世に対して、強い憎悪の感情を向けていた。

 そう、僕はこの世界に対して本当は、強い憎悪を向けていて、そんな醜い感情が自分に渦巻いているという汚い自分を、この時だけは認めたくなかったんだ。

 だってそれを認めるという事は、僕がエレンに婚約破棄を突き付けたのは、エレンを【恨み、憎んでいた事に他ならない】と認めるのと、同義だったから……


(気付いていたけど、決して気付きたくなかった)

 そんな自分の心の真相を暴かれ、自己嫌悪に陥っている僕の事など「お構いなしだ」と言わんばかり、シェイドの問い掛けは続く。


『我が真なる力の片鱗を扱う資格を持つ者。

 答えよ。

 汝、我が真なる力の片鱗を扱い、我の課す試練を乗り越え、闇の恩恵を授かるに値する者か?』

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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