失ったモノ
八年前に起きたこの街とマフィアの一大抗争において、父さんと母さんが目の前でこの世から消えていく様を、只見ている事しか出来なかったのは、相当ショックだった。
そしてこの悲劇が起こる直前に、僕はエレンを庇った際に負ってしまった左腕の傷を、一刻も早く治して「この街を守る騎士」となる!
そうする事が、僕やこの街とこの街を愛しつつこの世を去ってしまった父さんと母さんに報いる方法だと思っていたし、こうすれば父さんと母さんの仇を、いつか取れる!
この時の僕はそう思う事で、何とか自分を失意の底に沈めないように、必死になって足掻き、自分の気持ちを”無理やり”にでも奮い立たせようとしていたんだと思う。
しかし現実は非常かつ残酷で、僕の腕はこれから一生を掛けたとしても「今までのように自由に動かせるようにはならないだろう……」と医者からハッキリ告げられてしまう。
それはつまり、僕にとってずっと夢見て憧れていた「騎士への道」を失ってしまったのと同時に、自らの手で両親の仇となる存在に、自分の手で鉄蹄を下し、僕の中に渦巻く復讐心を満たす機会を失った事を意味する。
こうして自分の夢と、今最も自分の手で叶えたい事すら、叶える事が出来なくなった僕は、失意のどん底の落ちると同時に、目に映るもの全てがどうでもよく思えた。
そんな精神状態だった僕の元に、僕の腕がもう”二度と以前のように動く事はない”という事を知った当時婚約者だったエレンが、とても心配そうな表情を浮かべたまま駆けつけてくれた。
でもその時の僕には、僕の事を心配そうにしつつ、今にも泣きそうな表情で僕を見つめてくてるエレンの姿を目にしたって、以前のように明るい気持ちや、目に涙が溜まって今にも悲しさが溢れ出しそうになっているエレンの事を「慰めたい」という気持ちが全く現れなかった……
それどころか、そんなエレンに対して僕は【嫉妬や妬み】といった、碌でも無い感情を向けてしまっただけでなく、己の中に生まれた負の感情に任せて、エレンに対して八つ当たりのように婚約破棄を突き付けてしまう。
婚約破棄をエレンに言い渡した時、エレンは涙を流しつつ、僕の言ってる事が【嘘】だと言いたくて仕方ないけど、エレンの立場としては決して何も言えない。
だからエレンは、凄く辛そうな表情を浮かべながら、僕が出した婚約破棄のの提案を受け入れる返事をした後、エレンは僕の病室から泣きながら飛び出して行った。
しかしこの時の僕は、エレンの悲しみに満ちた表情を見ても、何一つ感じる事がない所か、こうなる事は分かっていた癖に平然とやってのけたのだから、この時の僕は何度思い返しても『最低のクズ』だったと思う……
こうして施せる治療を全て終えた僕は、病院を退院した。
そして退院した直後に、多くの人間が僕の退院祝いに訪れてくれたんだけど、僕の退院を祝ってくれて人間は、純粋に僕が退院したのを祝っていた訳ではなく、皆が僕の退院を祝ってくれた理由が
「早くこの街の新たな指導者として、一刻も早く僕が活動してくれる」
そのことに期待の眼差しむ向けていたからであって、僕の退院を心から祝ってくれていた訳ではなかった。
そんな見え透いた魂胆で、多くの人間が僕に退院の祝いの言葉と品を送っている事を感じ取ってしまった僕は、「そんな見え透いた偽善の気持ちなんていらなかいから、失意の底に沈んでいる今の僕を、僕が今陥っている状況をちゃんと見て欲しかった」
だけど僕がいくらそう思った所で、周囲が実際に僕に向けるのは「新しいリーダーとしての役割に期待の眼差し」その姿勢を誰もが変える事は無かった。
そんな周囲の一方的な期待と考えに嫌気が差してきた僕は、この街の人間達に心底うんざりしてしまったから
「……しばらく誰にも会いたくない」
そう言って、屋敷に籠城を決め込む。
そして屋敷に閉じ籠もり、屋敷に居る人間ともロクに話もしなくなった僕は、失った父さんと母さんの痕跡を追い求めるかのように、父さんと母さんとの思い出の品を探しては眺めて、もうこの世に居ない両親との思い出に浸る。
今思うと、只現実から目を背けるだけような生活を始めていた。
そんな生活を1週間ほど続けていた時、父さんが言っていたある言葉を、ふと思い出した。
「もし、私に何かあった時は、私の書斎の机の裏を調べてほしい」
その時の僕は、とにかく両親との思い出を追いかけていたので、僕は父さんの言葉に従って、主を失って静まり返った父さんの書斎に足を踏み入る。
そして父さんの言葉に従って、机の裏を探ってみると、かなり分かり場所に、隠しスイッチのようなモノを見つけた。
きっと父さんが言っていたのは、この事だと思って、そのスイッチを押してみると
そのスイッチは、とにかく硬くてビクともしなかった……
(何か仕掛けがあるのかな?)
そう考えた僕は、スイッチを引いたり、強く叩いたりして、スイッチを作動せる為に色々試した見たけど、全く作動する様子を見せない謎のスイッチ。
だけど父さんが言い残した言葉に、この時の僕は縋りたい一心で「どうすればスイッチを作動させるのか?」その事を一生懸命考えていたら、スイッチの形状に何か見覚えがある気がした。
(コレって、前に母さんが僕に見せたアレに似てる気がする?)
いつか母さんが、特定の魔力にだけ反応して、作動する魔道具を作る実験をしていた際。
僕に「闇魔法の魔力を使った実験をしたいから、ちょっとコレに魔力を込めて触ってみてくれる?」と言ってきたので、指先に魔力を込めて魔道具に触った事があったのを、ふと思い浮かぶ。
そして、その記憶の中で、母さんが僕に触れさせた物と、目の前で押せなくて困ってるスイッチの形状が、とても似ている気がした。
だから僕は、何に魔力を込めて、スイッチに触れてみる
と、スイッチは嘘のように簡単に押すことが出来た!
すると本棚が”ゴゴゴゴゴ”と突如動き出し、本棚がいくつも動いた先には、小さな空間が現れ、その小さな空間には、一冊の古い手記が置かれていた。
こんな仕掛けを凝らしてまで、隠していた物に男心を擽られた為か、とてもその手記に興味を持った僕は、その手記を手に取って読み始める。
するとその手記に書かれていた内容は、代々オーウェン家の当主が、この街こと”サナッタシティ”の知られざる歴史について、代々書き記し続けてきた手記で、この手記の初めには、この街がこの地に立てられた理由が記されていた!
そして、その理由とは、この地に眠ると言われているある物の存在を秘匿して、この世の秩序を維持しようする為に作られたのが、この街が出来た切っ掛けであり、この地を街にしたオーウェン家は、この街の領主を務める以外に、ある物が誰かの手に渡らないように、管理する使命を代々帯びていたのだ!
そして僕は、初代オーウェン家の当主が『全てを賭して管理せよ』と言い残した「ある物」は、手記によると、この屋敷の地下に隠されているらしい。
そんな「先祖代々守り続けてきた」とされる「ある物」の事が、僕はとても気になったので、「ある物」が眠っているとされる、この屋敷の地下室に僕は向かった。
そして地下室にて「ある物」を探そうとするのだけど、その際手記を何回読み返しても、「ある物」が一体どんな形の物なのか、一切書かれていなかった。
そんなに大事にしてる物なら、一目見れば分かりそうな気がした僕は、一通り地下室を探してみる……
たけど、どれが手記に記された「ある物」なのかさっぱり分からなかったので、「ある物」を探し出すのを諦めようとした時、僕意外誰も居ないハズの地下室で、僕は誰かに呼ばれたような気がした!
だから、呼ばれたような気がした方向を振り向いてみる!
しかし、振り向いた先には、誰も居なければ、音を発するような物もなかった。
(……只の空耳かな?)
そう思って、今度こそ地下室から出ようとすると、ある物が僕の視界に鮮明に映った。
それは漆黒の髑髏で、僕はソレを見た瞬間、両親が僕を魔道具の爆発から庇った事で、僕の目の前で両親が一瞬にして骨に変わり、その骨も一瞬で黒ずんだ後、灰となって消えていく……
そんな忘れたくても、忘れる事が出来ない最悪の記憶が呼び起こされると同時に、両親を死に追いやった存在全てが『憎たらしい』と思った!
こうして僕の心の奥深くにある憎悪心が、再び掻き立てられたのと同時に、僕の目に映る漆黒の髑髏は、益々強い黒光りを放った気がしたからか、僕はその黒い髑髏の事が妙に気になったから、僕は黒光りする髑髏をその手に取ってみる。
すると、その髑髏から何かの文字が浮かび上がっていく様子に気が付いたので、その文字が認識できるようになるまで待つことにした。
「何々……」
『我、八つの精霊神の一つにして、闇を司る者”シェイド”
我が力の片鱗を扱う資格を持つ者。
汝が力を扱う資格を見せれば、我が力の一部を貸し与える。
我、汝に問う。
汝、我の真なる力を扱うに値する存在か?
汝、我の真なる力を扱うに値する存在であるなら、我が試練、乗り越えてみせよ。
さすれば、汝に闇の真なる力の恩恵が授かる』
「へぇ……初めて見るタイプの伝承だ」
この世界を創造したとしたとされる「八大精霊神」による信仰は、この世界において誰もが信仰する物であり、この世界には八大精霊に関する逸話や伝承が数多く存在する。
そして今この髑髏に浮かび上がった伝承は、闇の精霊神”シェイド”にまつわる伝承のようだけど、この伝承は初めて見たし、僕が手に取ったら、伝承が浮かび上がってくるなんて”凝った仕掛けが施された魔道具”だと思った。
ここ最近何を見ても何の興味を持たなたかった僕けど、この魔道具には凝った仕掛けが施されたいたからか、非常に僕の興味をそそった。
それに、先程魔道具を使ったカラクリを解いた事もあって、とにかくこの髑髏の形をした黒い魔道具のカラクリに、僕は非常に興味を持った。
だから僕は、この漆黒の髑髏を地下室から持ち出して、じっくり調べてみる事にした。
最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。




