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僕の悩みと誓い

 店を閉め終えマリンが家路に向かうのを見届けた後、僕も我が家に帰る道を歩き始める。

 するとその先で長年オーウェン家にて執事を務めてくれているアルフォンスが、僕を迎えに来てくれていた。


「今日もお疲れ様でした。ウィルフレッド様」

「ありがとう、アルフォンス。 今日も色々と大変だったよ……」


 そう言った後、僕はアルフォンスが用意してくれた車に乗り込み、僕が車のドアを閉めたのを確認したアルフォンスは屋敷に向かって車を走らせた始めた。


「今日もお嬢様方の争いを鎮めるのに大変ご苦労されていたみたいですね」

 アルフォンスは笑いながら僕にそう言ってきたけど、僕からするとここ最近顔を合わせたら”毎度のように衝突する”あの二人”び扱いに関して、正直「どう対応したらいいものか……」と頭を悩ませている。

 ちなみにバーに居なかったアルフォンスが、バーの様子知っているのはアルフォンスにはあのバーにて交わされた会話を、アルフォンスが扱いを得意とする”魔道具”を駆使して、全て記録してもらっているからだ。

 そしてバーでの会話を聞いたアルフォンスから、ここ最近振られるのはこの手の話題が多い気がするし、アルフォンスも楽しそうにあえて僕に毎回この手の話を振ってきているようなので、ここ最近の帰りの車内でほぼ毎度話題にしている気がするのは気のせいかな?


「……全くだよ。

 どうしてあの二人は、ああも仲が悪くなってしまったんだろうね?

 僕の思い違いじゃなければ、二人とも僕の事を未だに慕ってはくれているみたいだから、僕としては『僕が見てる前で争う事は止めてほしい』と必死に伝えているつもりなんだけど、どうして僕の気持ちはあの二人に伝わらないのやら……」

 僕は今日の出来事を思い出すと、自然と口から「ハァァ……」とため息が漏れた。


 「アルフォンス、目の前でいきなり自分には理解出来ない理由で、親しいハズの女性二人が小競り合いを初めて、その状況に呆れつつ何度もそれを止めるように言っても『お互い一歩も引く気がない』

 そんな状況を目の当たりにした時、アルフォンスならどう対処するんだい?」

 人生経験豊富で何かと頼りにしているアルフォンスに、あの状況を上手く改善するための「良いアイディアが何かないか?」という希望を込めて訪ねてみると同時に、僕の頭にはエレンとマリーンが以前二人で仲良くじゃれ合っていた頃の、懐かしい八年前の()()()の記憶が思い出される。

 その頃の二人を知っている所為か、どうして()()()()()()は毎度のようにバーで喧嘩してしまうのか?

 本当に不思議で仕方がない。


「フフフ、それに関しては自分でお考えください。 お坊ちゃま!」

 アルフォンスに「お坊ちゃま」と呼ばれてしまったという事は、この件に関してはアルフォンスに”まだまだ子供ですな”と比喩表現されたようなものなので、もう成人を迎え終わっている僕としては少しムカッ腹が立った。

 だけど、そう言われても何も言い返せないというのもちょっと悔しいから、僕は苦虫を潰したような表情を浮かべてしまう。

 そしてこのまま「お坊ちゃま」扱いされたままだと言うのも、どうにも癪に感じる。

 「お坊ちゃま」呼ばわりされた汚名返上の為にも、僕はあの二人が争う理由を必死に考えてみる・・・・・・・・


「はぁぁー……僕には女心なんて到底理解出来そうにないみたいだよ」

 結局あの二人が争う原因が分からない僕は、両手を上げてアルフォンスに降参のポーズを示したけど、アルフォンスは黙ったままだった。

 この事について何度もアルフォンスは誂われては、その度に答えが分からないから素直にアルフォンスに降参のポーズを示している。

 だけどアルフォンスはいつもこの問いに関する答えを、絶対に教えてはくれない。


「はぁ……結局答えは『自分で見つけろって事』かい?」

「何かおっしゃいましたか?」

「なに『アルフォンスはやっぱり手厳しいな』とボヤいただけだよ」

 皮肉交じりにそう言ったけど、経験豊富なアルフォンスには通用せず笑って流されてしまった……


「しかし、二人とも、強く、美しくなれましたなぁ」

「ああ、エレンはこの街を表から堂々と守る聖騎士に。

 マリーンは裏から悪党を懲らしめる義賊に。

 そう考えると、二人が昔はあんなに泣き虫だったことが嘘のように思えて来るよ」

 エレンは女性と思えないほど巧みに剣を扱う姿から、周囲に強くて逞しい女性に見られがちだけど、案外気弱な所がある。

 小さい頃なんか何か失敗してしまうと、その都度目に涙を浮かべていたぐらで、その度僕がよく慰めに行ってたぐらいだしね。

 そんな彼女も八年前の「あの事件」で受けた挫折を乗り越えるために、あえて王都にある最も厳しい騎士への道となる騎士養成学校にて、地獄のような訓練を乗り越えただけでなく、騎士として最高峰の称号であるパラディンとなった。

 そしてパラディンの中でも上位騎士にしか授けられない”光の騎士”という異名まで得て帰ってきたエレンを、僕は元婚約者兼幼馴染として誇りに思う。


 そしてマリーンは怖い物が苦手で、ちょっと暗い場所に一人で入り込んだりイタズラがバレて怒られそうになると、震えながらも最初は怖いのを我慢しようとしてその場に留まろうとするけど、結局耐えきれなくなってその場から逃げ出そうとして、あちこちを駆け回っていたぐらい怖いと思う物に対して臆病な性格だった。

 そんな怖がりだったマリーンも、今はかつて恐怖を感じていた暗闇の中に自ら飛び込んでいくし、自分に対して敵意を向けてくる相手に対しても臆せず立ち向かっていく勇敢姿をこの目見た時は、実の妹の成長を垣間見てような気がするぐらい心が躍った。


 「確かに二人ともアルフォンスの言う通り、強くて美しくなったと僕も思うよ。

 でも、それと同時にどうして二人揃って僕と同じ『最も危険な道であり、その先には何もない』虚しい道に進もうとするのんだろうね……」

 僕としては幼いころから親交が深かった二人には、危険かつ目的を果たし終えたしても最後には何も残らない道なんて歩んで欲しくないと思ってるのに、二人はその道に進む行動を取っているのも僕にとっては悩みの種の一つだ。


「そう言われましてもですね……二人はウィルフレッド様のようにお考えではないかもしれませんし、お二人にだってそれぞれの思いがあるからこそ、危険な道だと分かっていても()()()その道を進んでいるのかもしれませんよ?」

「……それは分かっている、つもりなんだけどね」

(例え二人が僕と違う道を見ながら前を進んでいるとしても、二人ともその道の先に待っている「本当の敵」の強大さが見えていない事が一番の問題なんだ)


 だから、エレンもマリーンもあの八年前の事件を皮切りに、この街に根城を築き上げた悪党達をサナッタ・シティから締め出すことが出来たら「この街を平和にするための戦いが終る」と思ってるのかもしれない。

(確かにそれで「マファイ達の残党」との戦いは終わる!

 だけど現実は残酷で、マフィアの残党をこの街から一人残らず締め出した所で、この街を平和にするための戦いはまだ終わらない!)

 この事をあの二人が知ったら、二人はこの街の平和を脅かす”真の敵”とも、きっと戦おうとするだろう。

(だから、この事を知っているのも知っておくのも、僕とアルフォンスだけで良いと僕は思っている。

 いや、そうじゃなきゃ絶対にダメだ!

 だって僕は……僕にとって大切な人をもう二度と失いたくないから!)


 だから僕は八年前に誓った!

 例え僕は一人で数多の罪を背負い、進んだ道の先が地獄だとしても、真の敵に裁きの鉄槌を下してやる!! と

最後までこの話を読んで頂き、ありがとうございます。

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