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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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48/50

総合武術大会⑥ ウィルたちの初陣

オープニングゲームはニーナが見事勝利を収め、2回戦に進出した。

そのあとも残りの一回戦が行われたが、さすがに力の差があるのか、上級Aクラスの生徒たちが予選から勝ち上がってきたクラスの生徒を圧倒した。

さて──次の試合だけど、ようやく僕の出番だ。

相手は上級Aクラスのマルコスっていう男爵家の次男らしい。

見た目からしていかにも普通って感じがするが、油断してたら足元すくわれるから、気を引き締めてかかろう。


「それでは二回戦第一試合に参りましょうッ!! 遂に登場します、今日解説でお越しくださってる戦鬼せんきダグラス・グレイシー総帥のご子息、ウィル・グレイシーですッ!!」


闘技場に入場すると、割れんばかりの大きな歓声が耳を襲った。

そりゃこの国で一番強い男の息子だし、どの程度の力を有しているのか、みんな期待しているのだろう。

ちなみに──前にも話したが、アングリーベアの大群を素手で倒すのは不可能です。

刀を使ったらワンチャンいけるかもしれないけど。


「今年のトゥルメリア魔法学院では首席で入学し、冒険者ギルドではいきなりCランクからスタートする、今年一番期待ができるニューフェイスです! ダグラス総帥、息子さんになにかひと言」


「ひと言? 特に無いな。グレイシー家に負けは無い」


会場からは感嘆の声があがった。

そのひと言が僕にとって、もの凄いプレッシャーになってるって、父さん分かってないんだろうな。

あんな威厳のある態度取ってるけど、内心ハラハラしてると思うよ?

だって、横に居るアンジェラ先生は横目で見ながら笑ってるし。


「あなた、素直になって頑張れのひと言でも言ってあげたら? ウィル様が可哀想よ?」


「いいんだよ。過度な言葉は逆にプレッシャーを与えちまうからな。こういうのは黙って見守るもんだよ」


「あらそう。キャラじゃない寡黙なお父さんを演じるのって大変ね」


「ったく。ひと言多いんだよ」


二人が何を話しているのか分からないけど、今は──目の前の戦いに集中するのみだ。

対戦相手も実況のコールで入場してきた。


「対するは、上級Aクラスのマルコス・タロン。一回戦では無難に勝利を掴んでいます」


いかにも──普通の見た目。

逆に普通すぎて何をしてくるか分からないのが怖い。

さっきの試合も全くもって印象に無いし、むしろ戦っていたのか?って思うレベルだ。

もし──僕が全力で戦ったら、このマルコス先輩は死んでしまうだろう。

だが、このマルコス先輩──さっきからどこを見てるんだ?

やたらと目の焦点が合ってないし、これから戦うのに身体は完全に脱力し切っている。


「彼、なんか変ね。何かあったのかしら」


「確かに心ここに在らずって感じだが、どうせ──さっきの試合で魔法を使い過ぎたんだろ」


「それならいいのだけど、あんな不自然になるかしら。嫌な予感がするわ──」


「それでは二回戦第一試合、ウィル・グレイシー対マルコス・タロン、それでは──試合ッ 開始ッ!!」


大きな歓声と共に試合が開始された。

まず──マルコスの出方を伺うが、マルコスはなにもして来なかった。

むしろ──ずっと上の空で入場した時から目の焦点が合っていない。

僕とも目が合ってないし、僕が目の前に居るってのも認識してないみたいだ。

それなら──僕が先に攻撃して相手の反応を見よう。

マルコス先輩と一気に差を縮める。

だが──


「おっとぉぉぉぉ!!!! マルコス・タロン、いきなり倒れてしまったぁ!!!! どういうことだ!?」


「マルコス先輩? マルコス先輩!?」


僕は咄嗟にマルコス先輩を抱きかかえるが、先輩は白目を向いて気絶していた。

しかもこの感じ──大量の魔素溜りを浴びて気絶してる。

僕たち人間は、大量の魔素溜りを食らうと人体に影響が出て、マルコス先輩みたいに気絶してしまう。

気絶ならまだいい──魔素溜りを浴び続けると魔獣化してしまう危険もあるのだ。

ようやく周りも状況を理解し始めたのか、数人の救護班が駆け寄ってくる。

だがやはり──マルコス先輩の意識は無かった。


「え、えーっと……マルコス・タロンですが、急な体調不良により棄権となります。二回戦第一試合は、ウィル・グレイシーの勝利といたします」


「今年も棄権者がでちまったか」


「何人棄権するんだろうな」


「面白い試合を期待してたんだがな」


会場に動揺に包まれたが、一回戦で力を出し切り、二回戦で棄権するということは結構あるみたいだ。

無理もない──武術を競う大会といえど、出場しているのは学生で、戦闘に慣れてない人が殆どだ。

身の丈に合わない魔力を行使して、魔力切れを起こすことなんて考えてみれば容易に想像できる。

僕はみんなが居る控え室に戻った。


「アクシデントがあったけど、二回戦進出おめでとう」


「ありがとうケイン。でも──勝ったっていう実感はないけどね」


「仕方ないよ。体調不良で棄権だなんて毎年あることだし」


「いや──それが……」


ケインにマルコス先輩と対峙した時思ったことを話した。


「それはおかしいな。ダンジョンの下層に潜って魔素溜りを吸収してしまうのならまだしも、ここは地上だ」


「うん。地上だったら魔族領とか、この間のゼノ大森林の魔素溜りの発生とかでしか有り得ないからね」


「もしかして──生徒本人が闇魔法を行使して気をおかしくしたとか?」


「いや──それはない。マルコス先輩の身体は至って正常だった。焼けただれた箇所もない」


「なら──人為的に魔素溜りを吸収させられた可能性が高いな」


「僕もそう思ってる」


どちらにせよ──マルコス先輩は身体に影響が出るところまで魔素溜りを取り込ませたのは間違いない。

それが本人の意思なのか、もしくは──他の者の仕業なのか。

そんなことをしてどうなる。

もし魔素溜りを吸収して気絶したということが公になったら、この大会自体が中止になってしまう。

今は考えても仕方ない。

この件は大人たちに任せよう。


「次はシェナの試合だな」


「シェナなら余裕で勝てるよ」


「シェナさんってそんなに強いんですか?」


「むしろ──俺より強いかもな」


「そ、そうなんですね……可愛らしい見た目をしてるので、てっきり癒し系なのかと」


癒し系ねぇ……。

実は真逆だなんて口が裂けても言えないが、どうせこの後シェナの戦いっぷりを目の当たりにするから意味ないが、わざわざ言うことでもないだろう。


「さあお待たせしましたッ!! 二回戦第2試合、出場するのは、下級Aクラスのシェナ・マクレーン対上級Aクラスのセネル・マッケンですッ!!」


「なんだあの小動物みたいな女の子は」

「癒し系の女の子が出てきたぞ?」

「あの子かわいいッ」


その反応は無理ないですね。

立っていれば可愛らしい普通の女の子ですから。

しかし──対戦するセネル先輩も、先程のマルコス先輩同様、表情がどこか上の空だった。

シェナもそれを察知する。


「実況──」


「どうしました? シェナさん──」


「この人、意識、失ってる。確認、してほしい」


やはり──セネル先輩も意識を失っていたか。

救護班が駆けつけると、セネル先輩も同じく倒れてしまった。


「こ、これはどういうことでしょう。先程のマルコスと同じく、セネル・マッケンも体調不良で棄権となります。よってシェナ・マクレーンを不戦勝とみなし、準決勝進出です!」


会場からは不満の声が飛び交った。

二試合連続でまともな試合がないのだ。

さっきまで普通に戦った生徒がいきなり戦闘不能になるなんて、誰がどう見てもおかしいに決まってる。

だが──これだけでは終わらなかった。

次のケインの試合でも、相手の生徒は闘技場にすら顔を出さないで、ケインの不戦勝になったのだ。


「いい加減にしろよッ!! 三試合連続だぞ!!」

「こっちも楽しみに待ってたんだッ!!」

「賭け金どうなるんだッ こっちは赤字だぞ!!」

「どう責任を取るつもりだッ!!」


原因が分からない以上、対策のしようがない。

でも──不戦敗になったのは、全員上級Aクラスの人達だ。

みんな一回戦から出場してるし、なにより──エリートと言われているAクラスの生徒が自身の怠慢さで大会を棄権することなんて有り得ない。

そして──魔素溜りの影響だってある。

非常事態宣言が発令されている最中で、警備の目だって厳しい。

何かあればすぐに問題になるし、不穏な動きをすれば咎められたってする。

そんな中でこんな大胆に問題を起こせるとなると──

やはり──


「悪魔と繋がってる打倒派の連中──」


そう考えるのが妥当な線だ。

妥当すぎて逆に安牌すぎるのも釈然としないが、でも考えられるのはその線しかない。

僕は遠くで知り合いであろう人と談笑しているジェイドに目を向ける。

ジェイドは僕の視線に気付き、軽く笑顔を返してきた。

その笑顔は不気味だった。

その不気味さが彼に対する異様な違和感だと気付くのはもう少し後になる。


そして問題は解決しないまま──二回戦最後の試合を迎えた。


「ウィルくん、それでは行ってきます……」


「あぁ、ニーナの全力を出して来てね」


「負けても大丈夫、シェナ、ニーナの仇、撃つ」


「それ言われると、次俺が負けるみたいになるって」


「シェナは僕にも勝てると思ってるみたい」


「シェナ、強い、かわいい、唯一無二」


うんうん、そうだね、シェナは強いね。

でも、その前に次相手する僕を本当に倒してから言おうね。


「頑張れニーナ」


「は、はいッ」


ニーナの宿敵、そして──絶対に倒さなければならない男、ジェイド・マーセナス。

緊張で震えていたし、心に傷を負うレベルのトラウマも植え付けられた。

普通の人だったら勝てないし、むしろ──戦おうなんて思いもしない。

でも──ニーナは違う。

こんな弱いままの自分が嫌だから、こんな弱いままの自分を変えたいから、彼女は立ち上がった。

そこには尋常じゃない覚悟があったし、怖かっただろう。

でもそういう人間こそが、本当の強者だ。


「二回戦最終試合、下級Aクラスニーナ・オースティン対上級Aクラスジェイド・マーセナスの試合ですッ」


「わたしは勝つ、負けない、絶対に勝つ……」


さまざまな感情がニーナの心を交錯するが、彼女は一歩ずつ前に進み、闘技場へと足を踏み入れた──

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