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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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総合武術大会④

あれからあっという間に1週間が過ぎ、総合武術大会の日を迎えた。

本番を迎えるまでにあたって、ニーナはアリスによって保護されジェイドから守られていた。

今ではすっかり仲良くなり、アリス、シノ、ニーナの三人で一緒に居るところをよく見かける。


会場となるトゥルメリア闘技場には、多くの観客が押し寄せていた。

学院のイベントではあるが、この国にとって未来のトゥルメリアを背負う学院生の勇姿が見れる晴れ舞台なので、国民全体が関心を寄せる大会なのだ。


「さあ始まりましたッ!! 年に一度の祭典!! トゥルメリア魔法学院総合武術大会ッ!! 実況はこの私、トゥルメリア魔法学院上級クラスの、オーゴエ・ツタエールです!! 解説はトゥルメリア王国が誇る最強の戦士、戦鬼せんき、ダグラス・グレイシー総帥ッ!!」


「よろしく頼む」


父さんってこういう場に解説として来ることあるんだね。

あんまりこういうこと好きじゃないイメージがあるけど、そろそろ軍隊の入隊試験があるから、目ぼしい人材が居たらスカウトでもするのかな。


「そしてそして──このトゥルメリア魔法学院で教鞭を取られて300年、変わらぬ美貌と妖艶さは世の男性を虜にしますッ!! ぼ、僕も、カリオペ先生大好きですッ!! 下級Aクラス担任のアンジェラ・カリオペ先生ですッ!!」


「あら、そう言って貰えて嬉しいわ。よろしくね」


アンジェラ先生凄くご満悦だ。

隣に居る父さんは少し不満そうだけど。


「今回の大会システムですが、例年通り──上級下級Aクラスの生徒は本戦からの参加になります。Bクラス以降の生徒は、別日に非公開で開催しました予選にて、勝ち上がった上位4名が本日の本戦に参加します」


トゥルメリア魔法学院は2年制の学院だ。

今年入学してきた僕たちは下級クラスと呼ばれ、一年先に入学してきた先輩方は上級クラスとなる。

来年になれば上級クラスの先輩たちは卒業し、僕たちが上級クラスになり、来年入学してくる人たちが下級クラスになるというエスカレーター式のシステムだ。


「ただ──今大会は公爵家のご子息方が多く参加される大会となっておりますので、公爵家のご子息方はシード扱いとなり、2回戦から参加となっております」


てことは、僕とケイン、そして──ジェイド・マーセナスはシード確定ってことか。

あと一枠は成績優秀者がシード権を獲得するのだろう。


「残念ながらレニツァ公爵家のスレブ様に関しては、予選からの参加でしたので、本戦は一回戦から参加となってしまいます。ご当主様からも了解は得ていますので、ご了承ください」


スレブって大会に参加してたんだ。

入学当初、男爵家の人に負けたって話を聞いてたけど、どうやらこの夏休み期間中にトレーニングでもしてたのかな。

もし当たるとしたら楽しみだ。


「おい、ウィル・グレイシー」


「え、はいッ……ってスレブか」


僕に声をかけてきたのはスレブだった。

あれ? かなりシュッとしてない?

前まではいつはち切れそうなおかしくない身体をしていたのに、今は痩せて骨格がくっきり出ている。


「あの時はすまなかった。そのことをどうしても伝えたくて……」


「気にしてないよ。僕は君に大事がなくてよかった」


「でも──オレは取り返しの付かないことをしたんだ。君が断罪するなら、甘んじて受け入れる」


出会った頃のスレブはどこに行ったのか──

今の彼にはあの頃の甘え舐めきった態度はなく、自分の過ちを認め、覚悟を持ったそんな感じの目だった。

ベリアルに誘惑され操られていたとはいえ、彼は許されざる行為に走ったのだ。

簡単に許す訳にはいかないが、スレブも改心したのだろう。

僕はそれが見れただけでも十分だ。


「なら──もし戦うことになったら、君の全力を見せてくれ。真剣勝負をしよう」


「ウィル……あぁ、その時はよろしく頼む」


そう一礼すると、スレブは仲間の元に戻って行った。

でもさ、よくよく考えたらスレブの今の謝罪って、ベリアルにそそのかされて僕を刺したことに対する謝罪だよね?

日頃から僕に対して行っていた誹謗中傷の謝罪を貰ってないんだけど。

あれ? ──あ、やっぱり許すのやめよう。

彼と当たった時は完全に力の差というものを見せつけてやる。

そう心に誓った。


「それでは、トーナメント表の発表ですッ!!」


上空にトーナメント表が映し出された。

これは投影魔法を使っていて、映し出したいものを上空に大きく映し出せる便利な魔法だ。

案の定、僕とケイン、ジェイド・マーセナスはシード扱いだった。

シード権のもう一枠はシェナの名前があった。

シェナとは同じ山で準決勝で当たるのか。

シェナは目を輝かせながら僕を見てる。


「ウィル様、お相手できる、本気だす」


「シェナさん、殺し合いじゃないから程々にね」


「シェナ、本気だす。シェナ、勝ったら、ウィル様と、結婚」


シェナさん!?

なんだか最近その事ばっか言いますよね!?

僕の父さんに止められてたよね?

この国は純血思想が根深いから、結婚できないって。

あれか? あれなのか?

シェナさんは一度こうと決めたらそれに突き進むタイプなのかな?

だとしたら、結婚するまで本気で諦めなさそう……。


「俺はお似合いだと思うぞ。おめでとうウィル」


「ケイン、君、からかってるよね? 絶対からかってるよね?」


「ハハハッ、どうかな」


「ウィルくんって、幼い容姿の方が好きなんですね。だとしたらシェナさんとお似合いかもしれません」


「ニーナまでそういうこと言う!? なんでちょっと顔引きつってんの? それはシェナに失礼じゃない? これでも成人してるんだよ? 大人なんだよ!?」


本当は250歳の猫人族の半獣半魔なんだけど、シェナが秘密にしてるからそのことは言えない。

ケインの奴──最近そのことを知ってからヤケに変な突っかかり方してくるな。

もしかして──ケインはシェナの事が好きなのか?

素直になれないからちょっかいかけて自分の気持ちを誤魔化すアレなのか?

──あれ? そうなるとケインの好きな人僕になっちゃうじゃん。


「ウィルとは決勝まで当たらないか。そうなると、準決勝はニーナと当たる可能性があるのか」


僕はトーナメント表に目を戻すと、別の山にケインとジェイドの名前があった。

しかも──


「ニーナの初戦がスレブで、その次の試合がジェイド・マーセナス……」


スレブに勝った後、ジェイドと戦うことが決まってしまったニーナ。

ニーナの顔からは、また恐怖が滲み出ていた。

身体が小刻みに震えている。

あたかも仕組まれていたかのようなトーナメント表だ。

この一週間で発表されたことだが、ジェイドとニーナが婚約関係だということは、既に世間に知れ渡っている。

その婚約関係の二人が戦うなんてゴシップ好きな民衆にとっては盛り上がる大一番だろう。

でも──その前に出汁に使われるスレブ。

なんか可哀想に思えてきた。


「大丈夫、ニーナ、仇、シェナが取る」


「ニーナが負ける前提で話すんじゃないの。てか、僕もシェナに負ける前提じゃないか」


「シェナ、強い。ウィル様、負けて、シェナと結婚」


そこはどうしても譲らないのね。

結婚なんて考えたこともないからイメージ湧かないけど、いつかは僕も誰かと結婚して子孫を残さなきゃいけないんだよね。

そもそも、結婚なんて出来るのかな。


「悪いがシェナ、ジェイドは俺が倒すから決勝で待っててな」


「ケイン、弱い、シェナ、瞬殺、ジェイド、滅殺、ウィル様、悩殺──痛いッ」


あまりにも物騒なので、シェナの脳天にチョップを入れる。

思いのほか痛かったのか、頭を押さえながら涙目で僕を見てきた。


「殺し方で韻を踏むんじゃないの。物騒すぎるわ」


「ウィル様、ごめんなさい」


さっきと打って変わってか、ニーナはクスクスと笑っていた。

これがシェナなりの場の和ませ方ならよくやった。

僕はシェナの頭をワシャワシャと撫でる。

シェナの顔はご満悦になり頬がちょっと紅いが、そういえば──シェナから求婚されてるんだっけ。

あまりこういうことしない方がいいのかな。

でもまあいいか。

昔飼ってた犬みたいで撫でがいがあるし。

シェナは猫だけど。


「ワタシの話題が聞こえたから何事かと思いきや、君たちでしたか」


「ジェイド・マーセナス──」


和やかな雰囲気は一変、ピリッと緊張が走る場に変わってしまった。

ニーナは咄嗟にケインの後ろに隠れる。


「そう怯えるなよニーナ。ワタシたちは婚約してるんだ。未来の夫に顔を見せてくれよ」


そう言いジェイドはニーナに近寄ろうとするが、僕はそれを制止させた。


「悪いが、ニーナに近寄らないでくれるかな」


「婚約者に近寄れないとは──君にどういう権限があってそういうことを言っているのかな? ウィル・グレイシー」


「お前の悪事は聞いている。人の風上にも置けない奴が、自分が善人だと思い込むな」


「偉そうに。何の証拠があってそう言っているのか分からないが、まあいいだろう──」


ジェイドの表情からは余裕さえ感じた。

まるで──自分はこの世界の絶対的な勝者だと言わんばかりに。

ニーナに近づくことを諦めたジェイドは踵を返す。


「ニーナ、君が勝って2回戦で戦えることを楽しみにしてるよ。くれぐれも負けないようにね。そういえば──ウィルくん、君に言いたいことがあった」


またこちらに身体を向けると、この間みたいに耳打ちしてくる。


「色々とワタシのことを嗅ぎ回っているみたいだが、無駄だよ。君たちの情報はすぐに入ってくるからね」


言いたいことを言い終えたのか、ジェイドは再度踵を返す。


「ウィル・グレイシー、決勝で会おう」


そう言うとジェイドはようやく去って行った。

ジェイドが見えなくなると、ニーナに神聖魔法を行使した。


「オールパージ」


「ウィル様、やはり、そういうこと」


「まるで俺の時みたいだ」


「えっ──どういう……」


「ニーナ、君は気にしなくていい。全力で戦ってくるんだ」


ニーナは何がなんだか分からないまま混乱していたが、僕たち三人は事の重大性を見抜いていた。

それもそのはず──僕はジェイドが耳打ちしてくるだろうと踏んで、咄嗟に二人に念話を繋いでいた。

だから、ジェイドが耳打ちした内容は二人に筒抜けだった。

ジェイドはニーナに対し、鷹の目を使っていた。

いや──ニーナに鷹の目を付けてもらうよう、悪魔に頼んでいたのだ。

人間には闇魔法は行使できない。

でもどの悪魔なのか突き止めることは不可能。

事態はあまりにも僕たち側が不利に動いてるかもしれない。

ベリアル亡き今、悪魔たちは本腰を入れて僕たちの情報を仕入れようとする。

しかも──政府内部に悪魔と通ずる人間まで動かして。

もしかしたらこの大会──良くない方向に動くかもしれない。

一抹の不安がよぎる中、総合武術大会が開幕した──


最後までお読み頂きありがとうございます。


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