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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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総合武術大会②

総合武術大会のメンバーが決まり、放課後──演習場に集まって練習会を開催していた。

メンバーは、僕、ケイン、シェナ、そして──ニーナ・オースティンの4人。

練習を手伝ってくれるというので、アリスとシノもこの場に集まってくれた。


「ニーナ、遠慮なく魔法をぶち込んでいいからね」


「あ、はいッ。エクシアさん──」


「堅苦しいなぁ、シノでいいよ」


「はい、シノさんッ」


シノはニーナの練習相手として買って出てくれた。

そのニーナの魔法を見て、助言するという形で僕も側に付いているが、魔法を撃つ前から緊張して手が震えていた。

学院の行事といえど──ニーナにとっては列記とした戦闘なワケで、ロクな戦闘経験が無いニーナにとって緊張や不安に押しつぶされそうになるのは仕方の無いことだった。

でも──どうして、戦闘が苦手なのに総合武術大会に出たいと思ったのだろうか。

皆目見当もつかないが、ニーナが自分で志願した以上、無様な姿は見せられない。

僕がニーナの面倒を見ている以上、大会で手も足も出ず負けてみろ?

アンジェラ先生に何言われるか分かったもんじゃない。

やるからにはニーナを勝たせてあげられる程度には成長させてあげないと。


「ニーナ、怖い?」


「わ、わたし、誰かに魔法を撃つなんて初めてだから、緊張しちゃって……」


「無理もないよ。でも──魔法を使うからって絶対に誰かを殺さなければならないって訳じゃないんだ。相手を気絶させられるだけでも、自分の命は守れるし、誰かを殺さなくて済む」


「でも──わたし……」


「シノッ!! ニーナに攻撃してくれ」


「あいよー。火炎の戦神よ、我が言の葉の願いを聞き給い顕現せよ──ラピッドファイヤ」


シノが放ったラピッドファイヤが勢い良くニーナに向かってくる。

だが──ニーナは恐怖で慄いたのか、上手く詠唱できない。が──


「ニーナッ 危な──」


「────ッ!!」


衝突の瞬間に──ニーナから紫電が発生して、シノのラピッドファイヤが弾かれた。

今──ニーナは詠唱をしなかった。

いや、出来なかったに等しい。

だが──ニーナに衝突する瞬間、確かにニーナから紫電が発生して、自身の身を守ったのだ。

これは間違いない──


「ウィル、今のどういうこと? アタシ当てちゃったと思ってヒヤヒヤしたんだけど」


「大丈夫、ニーナに怪我はないよ。ニーナ、君はもしかして──」


「わ、わたし、何かしました?」


「君は今、無自覚ながらも無詠唱で魔法を行使したんだ」


そう──ニーナは自身が自覚していない所で雷魔法の加護を授かっていたのだ。

基本──加護とはその属性魔法を極めたものに対して得られる、云わば免許みたいなものだ。

その加護を持っていると、念じるだけで魔法を行使できる──無詠唱発動が可能になる。

見た限りでは、魔力操作や魔力量などの基本ステータスは中の下──いや、下の中辺りに居る彼女がどうして加護なんか得られたのだろう。


「わたしが無詠唱で魔法を……そんなことは……」


「でも現に君は無詠唱でバリアを発動した。これは紛れもない事実だし、理解するべきだ」


加護を授かる人間はそうは居ない。

もし──彼女が戦闘に慣れ、戦うことに躊躇いを持つことがなくなれば、戦術価値は一気に跳ね上がる。

しかも──雷魔法を扱える人間は少ないって聞くし、父さんなら喉から手が出るほど欲しがるんじゃないかな。


「昔から雷魔法は得意な部類でした。でも──わたしが加護を持ってるなんて信じられません」


「ならこれはどうだ? シノって土魔法使えるっけ?」


「一応使えるけど、的でも作ればいい?」


「シノちゃん、それなら任せてッ」


「シェナもやる」


割って入ってきた二人が勝手に土魔法で的を作ってしまったのだが──


「土で出来たギガントデスイーターよッ」


「最高傑作」


二人でこんなの作ってしまうなんて……

てか──シェナなら理解できるが、アリスさん、あなた土魔法を無詠唱で発動できるって加護を貰ってたんですね。

弟は初めて知りました。


「二人ともありがとう。それでルーナ、無詠唱で上位魔法のサンダーボルトを撃ってみてくれ」


「さ、サンダーボルトをッ!? そんなの無理です!!」


「ニーナ、君は加護持ちなんだ。一回だけ自分を信じてやってみないか」


「わたしは……できるッ──」


ニーナの目の色が変わった。

遂に決心したんだ。

ニーナは手をかざすと目を閉じて念じ始めた。

すると──土で出来たギガントデスイーターの頭上に魔法陣が現れ、轟音を響かせながら直撃した。

土で出来たギガントデスイーターは跡形もなく消え去った。


「で、できた……ウィルくん、出来ましたッ!! 」


「すごいよニーナッ!!」


無詠唱で上級魔法のサンダーボルトを発動したことはもちろん、かなりの威力でしかも──跡形もなく的を消したのは紛れもない彼女の才能だ。

まだ魔力操作の面では課題が残るが、それでも十分なくらい、戦いで通用する。

あとは──彼女のメンタル次第だ。


「ニーナ凄いわッ。無詠唱で発動できる上にサンダーボルトまで操れるなんて! 本当は天才なの!?」


ニーナは抱きつきながらそう言うアリスに困惑しつつも、どこか嬉しそうな表情を浮かべていた。

さて──あとは自分のことに集中しても良さそうだ。


「今年の下級生は優秀な生徒が多いんですね」


演習場の入口から知らない声が聞こえた。

そこには──上級生と見られる男とその数人がやって来た。


「素晴らしいサンダーボルトでした。まさか無詠唱で発動とは──伯爵家の人間にしておくのは勿体ないくらいだ。ニーナ・オースティン」


ニーナは咄嗟にアリスの後ろに隠れた。

かなり酷い怯えようだ。

怯えようから察するに知った顔という所だろう。


「失礼ですが、あなたは?」


「これは失礼、ご挨拶がまだですね。ワタシはジェイド・マーセナス。マーセナス公爵家の跡取りです。グレイシー公爵家のウィル・グレイシーくん」


マーセナス公爵家──

公爵6家のひとつで、司法を担当する大貴族だ。

6家の中でも絶大な権力を有しており、これは噂程度にすぎないが、現在の打倒派の中核を担っているらしい。

王権派の公爵家とは度々衝突を繰り返している。

所謂──父さんらにとっての政敵にあたる公爵家だ。

そのジェイド自身も良い噂を聞かなかった。

公爵家という立場を使って好き放題やっているらしく、違法賭博や人身売買。そして──無類の女好きという噂がある。

しかし──ここに来るなんてなんの用だろうか。

雰囲気的に友好な感じは受け取れない。


「まさか──王家のアリス様とその後見公爵家のケインくんも居るなんてね。他の二人は存じ上げないが、大貴族がこんなとこで揃い踏みとは、なにかの縁ですね。よろしくお願いします」


ジェイドは一礼をする。

表情はにこやかで笑ってはいるが、瞳の奥は笑っていなかった。

なにか──嫌な予感がする。

そう、ベリアルと戦った時と同じような嫌な予感。


「ジェイドさん、もしかしてあなたも総合武術大会に出場するんですか」


「その口ぶりからして、ケインくんも出るのかい? いやぁ──君は強いから、もし対戦することになったらお手柔らかにお願いするよ」


「その時は正々堂々とよろしくお願いします」


「その時は、ね」


正直──練習を続けたかったが、この雰囲気ではみんな練習に集中できないだろう。

ここは素直に撤収したほうがいいか。


「アリス様、15年前に逝去されたとされているお方がまさか生きていたとは。フローレス家に身を隠していた理由は分かりませんが、これで王位継承の問題は解消されましたね」


「わざわざどうも」


「ところで──」


ジェイドはスっと僕に近づき耳打ちしてきた。


「ウィル・グレイシー……いや、ウィル・トゥルメリア。君はこの国、この世界を揺るがす大きな癌だ。ワタシが必ず──君を始末しよう。悪魔殺しのウィル・トゥルメリア──」


僕は咄嗟に距離を取り刀を取り出し構えた。

なぜ──そのことをジェイドは知っているんだ。

僕が王家の人間だということも、ベリアルを倒したということも、限られた人間しか知らない──国家機密レベルの情報だ。

誰かが情報を漏らした?

いや──それは有り得ない。

この情報を知っているのは王権派の人間だけで、王権派でも限られた人間しか知らない。

一介の王権派では知り得ない情報だ。


「そんな構えないでくれよ。今君と戦うことはしないさ。その物騒な物を下ろしてくれよ」


「なぜ──それを知ってる」


「今は言えないよ。まだその時じゃないからね」


「ウィル様、こいつ、危険、命令、欲しい」


シェナが僕の前に出て構えた。

彼女も直感的に感じたのであろう。

この男は危険だと──


「よく見たらシェナ・マクレーンか。まさか──君がここに居るなんてね。用意周到ってワケだ」


「貴様、何者、返答次第で、始末」


「だから戦う気はないって。ウィルくん、ペットの躾はしっかりしたほうがいいよ」


「シェナはペットじゃない。大切な友達だ。言葉を訂正しろジェイド・マーセナス」


シェナの事を知っているということは、もう既にある程度、シェナの正体も掴んでいるということだ。

対立してる派閥の人間ではあまりにも危険すぎる相手だ。

僕の正体や、今王権派が秘匿している情報を暴露されては、この国が揺らいでしまう。

もはや──ここは、禁術である記憶を消す魔法、イレイスを使うしかないか──

だが──ジェイドは踵を返しこの場を去ろうとした。


「1週間後の本番が楽しみだよ。その時はよろしくね。ウィル・グレイシーくん」


そういうとジェイドは去ってしまった。

声を掛けて足止めしたくないので、そのまま帰って貰った方がいいので、彼を止めることはしなかった。

けど──心の中は不安しかなかった。


「ウィル様、大丈夫、なに、言われた」


「大丈夫だよシェナ。とりあえず──彼の行動には注意してくれると有難い」


「わかった、一応、アンジェラ様にも、話、しておく」


「うん、頼むよ」


不穏な雰囲気が漂う中、僕たちは練習を再開した──

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