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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第二部 エルフ王国攻防編

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実家へ帰らせて頂きます⑥

やはり──実家のお風呂というのは落ち着く場所だ。

シェナが来たり、そのシェナを追ってアンジェラ先生が乱入してきたりとハプニングはあったものの、その後はひとりでゆっくりできた。

シェナが僕に対して本音を話してくれたのは嬉しかった。

出会ってまだ3ヶ月も経ってないし、まだ本当の意味での信頼関係というのは築けてないかもだけど、信頼関係というのは後々からでもゆっくり構築できるものだから、そこはゆっくり焦らず信頼関係を構築できたらいいな。


お風呂から上がった僕は、そのままダイニングルーム──所謂、食堂に向かった。

近づくにつれ、みんなの笑い声が漏れ出てくる。

シェナとアンジェラ先生も居るのかな。

僕は食堂の扉を開けた。


「ウィル様、遅い」


「ウィル様、お先に失礼してますよ。にしても──ここの食事は美味しいわね」


シェナとアンジェラ先生は美味しそうにお肉を頬張っていた。

父さんは軽くつまみながらお酒を嗜んでる。


「ウィル、お帰りなさい。暫く見ないうちに逞しくなづたわね」


「母上──ただいま」


美しく艶のある胸元まで内側にウェーブした栗色の髪の毛に透き通るような翡翠色の瞳。

身体は簡単に折れてしまいそうなか細い女性こそ、僕の母さん──ヘレン・グレイシーだ。

身体が病弱の為、常に車椅子で生活しているが、また一段と痩せてしまったのだろうか、骨が浮き出てしまっている。


「母上、ちゃんとお食事はとられてますか? また一段と痩せ細ってるように見えますが……」


「大丈夫よ、ウィル。こう見えてお母さん元気だから」


みんなの前だから無理して元気を出してるのだろう。

母さんの目にはクマがあるし、途中──小さく咳き込んでることだってある。

本当だったらまだ横になって安静にしていなきゃいけないのに、どうしてそこまで無理するんだ。

僕が久々に帰ってきたから?

それはそれで嬉しいけど、でも──無理して身体に障ってしまったら、それこそ本末転倒だ。

僕は底知れぬやるせなさを感じながら席に座り食事を始めた。


「ウィル、王都での生活はどう? 何か困ってることはない?」


「特に困ったことはないよ。でも──たまに家が恋しくなるかな。母上のことも心配だし」


「それは嬉しいわ。お母さんのこと心配してくれるウィルは本当に優しい子ね」


「ウィル様、優しい。シェナ、いつも気にかけてくれる」


「そうなの? でもウィル、他人のことばかりではなく、自分のこともちゃんと優先してね。じゃないと結婚するってなった時、誰かさんみたいに相手に伺いを立てすぎて決断できない人になっちゃうからね」


言葉は僕に向いてるが、誰のことを言ってるのかすぐに検討ついた。

苦笑いしながら横目でチラッと確認したが、当の本人は気まずそうにチビチビとお酒を飲んでいる。


「確かに──誰かさんは、自分みたいな野蛮なハンターに勿体ない女性だから告白できんって言ってたもんな」


「ダサい、カッコ悪かった」


チビチビと飲んでいた父さんはブーッ!!とお酒をグラスに吹いてしまった。

口周りがベチョベチョになりながら顔が赤面している。


「お、おいッ!! そういうことはウィルの前で言うなッ!!」


「もう少し遅かったら、ダグラスと結婚ではなくて、他の殿方と結婚してる可能性あったからね。よかったわね、お父さん」


「お、おう……。その時は、待たせてすまない……」


顔を拭く仕草で口元を隠してるけど、どうせ照れてるんだろうな。

昔から見てて思ってたけど、父さんって母さんにはめちゃくちゃ甘い記憶がある。

もちろん母さんと口論してる所なんて見たことないし、メイドたちの会話をたまたま聞いたことあるけど、他人から見ても仲睦まじい夫婦という評価もあるくらいだ。


「でも、父上と母上ってどこで知り合ったの?」


「なんだ、ウィル様は知らないのか」


「わたしとダグラスが出会ったのは王都のギルドよ。これでも、ギルドの受付をしてたの」


「ヘレン、ガルドの妹。ガルド、ダグラスの義理の兄」


「えっ!? それ本当!?」


それは知らなかった。

まさか──母さんがギルドマスターでギャリック公爵家当主のガルド・ギャリックの妹だったなんて。

あんな強面の人の妹とか、想像してもしきれない……。


「その様子だと兄さんに会ったみたいね。無理もないわ。兄さん凄く強面の顔してるから」


「最初怖い人かなって思ったけど、意外と優しい人だから大丈夫だよ……」


それより兄妹だっていうことに驚きを隠せないけどね。

ということは──母さんは貴族の生まれなのか。

大体こういうのは公爵家同士の結婚ってあまり無いイメージだけど、意外と有り得るんだな。


「わたしがギルドで受付をしていた頃、ダグラスがわたしに一目惚れしてね、熱烈なアプローチをしてきては兄さんに殴られてたわ」


「懐かしいわね。ガルドがその度に、俺の妹は渡さんッ!! って怒ってたっけ」


「ヘレン、ガルド、歳離れてる。可愛い妹、バカに渡したくない」


「おい、シェナ! バカは余計だッ」


「そうなんだ。父上と結婚したことに、ガルドさん相当気を病まれたんだろうね」


ガルドさんの気持ちなんとなく分かるな。

もし──アリスがスレブに言い寄られて結婚を迫ってたら、弟としてそれはちょっと嫌かもね。

しかも──スレブが僕の兄さんになるなんてもっと嫌かも。

そういえば──あれからスレブって何してるんだろう。

気絶したスレブをテレポーテーションで送って以降、スレブを見てない気がする。

まあ、あの後すぐ夏休みに入ってしまったし、夏休みが空ければ何事も無かったかのように出てくるだろう。


「ところがそうでもなかったのよ。兄さん、あっさり結婚を認めてくれてね。気持ちよく送り出してくれたわ」


それも意外だな。

僕だったら嫌だけど。


「で、ヘレンはなんてプロポーズを受けたんだ? コイツ未だに教えてくれないのよ」


「そこはいいだろ。ヘレン言うな」


「今でも一言一句覚えてるわよ。聞きたい?」


「聞きたいッ!!」


「シェナ、聞きたいッ」


目を輝かせながら身を乗り出す二人。

昔から知ってる父さんが、母さんにどうプロポーズしたのかは気になるのも当然だ。

そんな僕も、父さんがどうプロポーズしたのかは気になる。

父さんは半ば諦めた表情で大きなため息をついた。


「その頃から病気がちでおうちで療養してる日々が続いていたのだけど、わざわざ家まで来てくれて言ってくれたの。ヘレンの病気は俺が治す。そして──ヘレンの幸せは俺の幸せでもある。俺の生涯をヘレンに捧げさせてくれ。って」


アンジェラ先生とシェナはニヤけた顔で父さんを見た。

赤面した父さんは咄嗟に顔を逸らした。


「な、なんだよ。別に良いじゃねえか、我ながら良いプロポーズだと思うけどな」


「良いというかなんと言うか、あなた結構クサいプロポーズするじゃない」


「ナヨナヨしてた割に、しっかりプロポーズ、シェナ、見直した」


正直、聞いてるこっちは痒い感じはしたが、それはそれとして──父さんのしっかりとした誠意が伝わったんじゃないかな。

こういう時に父さんが真面目だってことはみんな分かってるだろうし、それを聞いてガルドさんも結婚を許したんだろうね。


「いいなぁ、私も良き伴侶が欲しいわ」


「くだらない純血、捨て去れ、バカエルフ」


「うるさいわねぇ。あなただって結婚してないわよね、バカ猫」


「シェナ拘りない。そもそも半獣半魔。ウィル様と結婚する」


「ブーッ!! ちょっと何言ってんのシェナ!?」


思わず吹いてしまった。

シェナがそう言ってくれるのは嬉しいが、結婚するってのは飛躍しすぎではないか?


「あらいいじゃない。ウィルも成人してることだし、そろそろ生涯の伴侶を見つけても損はないわ。シェナだったら安心して任せられるわ」


「母上まで──ッ!!」


「ちょっと、ヘレンのお墨付きなんてズルいッ。あーあ、ウィル様がエルフだったらなぁ」


それは残念でしたねアンジェラ先生。

だとしても、結婚に関してはまだまだ先だと思ってるから、焦らずゆっくりと伴侶は見つけたいものです。

そうさせてください……。


「わかってるだろうが、純血思想のアンジェラはともかくシェナとウィルの結婚は有り得ん。ウィル──結婚相手は慎重になれ」


「分かってる、この国の人間、純血思想強い、弁えてる」


この国、トゥルメリア王国は昔から純血の思想が強い。

いつから純血思想になったのかは不明だが、人間と獣人亜人の婚姻はタブーらしい。

国の法律でも他種族との婚姻に関しての規制もあり、数百年前のエルフ族との争いも相まってか、他の血を取り込むことを嫌っている節がある。

そして──純血思想はいつからか排外思想になり、この国では他の種族は滅多に見ない。

他の種族にとって、このトゥルメリア王国というは、居るだけで生きずらい環境なのだ。


「分かってます父上。でも──結婚は暫くないので安心してください」


「いや──卒業するまでには相手を見つけて貰わないと困るからッ!! あ、でも──お前には別の問題があるか」


そう──

僕がこのままグレイシー家に居続けるか、トゥルメリア王家に戻るかの問題だ。

この国では純血思想の他に、男尊女卑の問題も残っている。

もし──仮に、僕がトゥルメリア王家に復帰せずそのままグレイシーの家督を継いだら、おそらく王家はアリスをそのまま後継として女王に据えるだろう。

だが、王は男性であるべきという声は大多数を占めており、その結果──打倒派が未だに勢力を維持している要因にもなっている。

逆に僕が王家に復帰したら次はグレイシー家の跡取りが居なくなってしまう。

ジェフリー王が民衆や打倒派を押さえる名目で僕に対し、王家の復帰を命じればそれに従わなきゃいけないし、それを突っぱねる権限も権利も無い。

僕自身としては王家に戻る気は無いが、今度そのことについて、父さんと母さんとゆっくり話す必要があるな。


「まあ、その話は追々しましょう」


「そうだな──」



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