実家へ帰らせて頂きます③
「大勢倒れてるってことは、組手の最中だったか。しかし──この人数で無傷とはな」
父さんはこの状況を見て、瞬時に察知した。
僕が倒した48人の漢たちは、痛みや気絶で起き上がれない。
体力こそ消耗しているが、戦えない程ではないのだ。
けど、カマルを倒した後に父さんが控えてるなんて、戦う前からネタバレを食らったみたいだ。
「んで、カマル。お前で何人目なんだ?」
「わたくしで49人目ですよ。大トリは総帥、あなた様にお願いします」
「ほぅ。それは楽しみだな。まさか──自分の息子と組手が出来るとはな。カマル、さっさと負けろ」
自分の部下になんてこと言ってるんだこの人は。
しかし、そのカマルも負けるつもりは毛頭無いという表情をしている。
そりゃ──自分よりも体躯が小さい僕に好き放題されたらムキになっちゃうよね。
でもさ、僕も大口を切ってるからね、負けるつもりは無いよ。
「カマル、ウィル様相手に大人気ないと思わないの? 私はこんな茶番見てられませんわ」
「シェナは見てみたいけど。だって──あのベリアルを倒したウィル様よ。寧ろ──カマルが負けるんじゃない?」
「あら──心底ウィル様にご酔心されてるわね。あなたの心絆されちゃったのかしら」
「本当にこのバカエルフうるさい。あなただってウィル様はこの世界を救う救世主──とか言って酔心してるじゃない」
「それを言うんじゃないメス猫ッ!! 八つ裂きにされたいの!?」
シェナって本当にアンジェラ先生に助けられた身なの?
ここまで来ると修復不可能な仲の悪さに見えちゃうけど大丈夫?
すると──啀み合っている二人に割って入るように、トーマスがやって来た。
「面白いことをしてますね。カマル──ぼくと一緒に共闘でもしませんか? あなたひとりじゃウィル様は倒せませんよ」
「トーマス、ここは前線部隊の演習場で組手の最中だ。ヒョロガリのお前が入ってくるな」
「誰がヒョロガリだって? ぼくだってあなたと同じ総隊長ですよ!? それを弱い奴の総称みたいな呼び方して、恥を知れッ!!」
あー、なんだかめんどくさくなってきたな。
もういっぺんにかかって来てくれたら楽なんだけどな。
カマルもトーマスも相当な実力者だけど、正直──ただの殴り合いじゃ面白くないって思ってたところだ。
「良いですよ。トーマスとカマル、同時に攻めて来てください。僕は構いません」
「だってよカマル。トーマスと連携してみろ」
「しかし総帥──」
「いいじゃねえか。ウィルは悪魔を倒した実力者だ。俺もお前ひとりで勝てる相手って思ってねえよ。トーマス」
「はいッ──」
「魔法の使用を許可する。それにアンジェとシェナは、オールバリアの展開よろしく」
「仕方ないわね」
「かしこまりました」
僕対カマル、トーマスの実戦が決まった。
アンジェラ先生とシェナはオールバリアを展開する。
魔法を使うからね。他の人たちに当たったりでもしたら大変なことになるから、その為の予防だろう。
僕とカマルも上着を着る。
こちらも──魔法を生身で受けてしまうと怪我どころの騒ぎじゃ無くなるからだ。
「それじゃあ準備できたな」
「ウィル様──わたくし、カマル・ボーゲンは本気でお相手致します。どうか──ウィル様も本気でお相手お願いします」
「もちろんだよ。僕も本気で相手させてもらうよ」
なんて言ってみたは良いものの、本気でやってしまったらカマルが死んでしまうから手を抜いてるのがバレないように戦うけど、そんな余裕も無い。
何故なら──後方にはトーマスが控えてる。
後方部隊の総隊長で魔法の腕は王国でトップクラスに入る実力者だ。
僕自身──手加減はするがこの戦いに甘えを見せると負ける。
「おチビのウィル様、確かに悪魔を倒したのは凄い事ですが、あなたに負けることなど一切ありませんので悪しからず。そして、アンジェラ様は──」
「よーいッ!!」
「ちょっ、総帥ッ!! まだぼくの愛の口上がッ!!」
「聞いてられるか。──はじめッ!!」
トーマスの愛の口上とやらを遮って始まったこのバトル。
またチビって言ったことは、この戦いで晴らさせて貰うとして──
号令が上がったが、カマルは先に攻撃を仕掛けようとはしなかった。
後ろに居るトーマスも動こうとはしない。
なら──先に僕から動こうじゃないか。
ちょっとあの新しい武器も試してみたいしね。
「実力者の二人にピッタリな試作品を用意したよ」
僕は生成スキルで製造した武器を取り出す。
両手に──二丁拳銃を握った。
僕が取り出した二丁拳銃は、弾丸の代わりに魔力を装填して発射する拳銃で、通常の拳銃と同等の弾速を再現している。
弾丸を込めて撃つ拳銃は小さい頃に作ったけど、ここは魔法の世界だ──どうせなら、魔法を使う武器作ってみたいじゃない?
「なんだそれは──」
「みたことない代物ですね。何かの武器ですか?」
「これは拳銃と言ってね、僕が改良を重ねに重ねて作った作品だよ」
「そんなおもちゃみたいな代物で、どう戦うというのですか」
「まあ──体験してみたら分かるさ」
二人に銃口を向けると、直ぐさま撃鉄を弾いた。
銃口から勢いよく魔法が放たれる。
二人は面を食らったのか──直ぐさま雷魔法のバリアで防いだ。
「なんですか今のはッ!!」
「まるで──ラピッドファイヤみたいな攻撃だった」
それもそのはず──
今回装填している魔力は火属性魔法を装填している。
撃鉄を弾けば、銃口からラピッドファイヤ同等の攻撃が放たれる。
ただ──これだけではない。
僕はまだ一発しか撃ってないのだ。
二人はおそらくマスケット銃と同じコッキングシステムでの銃撃ラグがあると想定しているだろう。
そんな中世ヨーロッパの武器とは比べ物にならないくらい、この武器は現代的ということを二人は知るだろう。
「カマル──おそらく装填から発射までラグがある。その間にカマルは間合いを詰めて注意を引いて欲しい」
「その間にお前が詠唱して魔法をぶつける算段だな。おし──分かった」
さすが──王国軍屈指の実力者だ。
臨機応変に状況把握し、攻撃プランを練ってきた。
だけど──そのプラン、打ち砕かせて貰うよ。
僕は横へ足速にスライドすると、何発も銃弾──いや、魔弾を撃ち込んだ。
「なに──ッ」
さすがに反応するのは無理かな。
──と思ったが、後方に居るノーマンがカマル目掛けてバリアを展開した。
何発も撃った魔弾は弾かれてしまうが、自分たちが想定してない事態に呆気を取られていた。
その状況下でも仲間を守るためにバリアを張ったトーマスは凄いな。
「何発も弾が飛んでくるなんてなんという武器を作ったんだ、ウィル様は──」
「あぁ──ぼくたちがここまで防戦一方になるほどの武器だ。これは認識を改めなきゃいけないね」
やはり──まだまだ試作品段階の二丁拳銃では、敵が展開したバリアを破壊し突破するのは困難か。
この状況だと、いくら魔弾を撃ち込んでもバリアで弾かれて、こちらの魔力装填切れを起こしてしまう。
もっと打開できる改善策案が見つかれば、この二丁拳銃も戦場で配備できると思うんだよな。
「トーマス。わたくしにバリアを展開したままにしてくれ。道は開く──」
「了解──死に急ぐなよッ」
そう僕が思慮を巡らせていると──カマルが突っ込んできた。
今度は対策を講じて来たのか、突進しながらトーマスのバリアを展開している。
すでに魔弾ではバリアを突破できないと気づかれたか。
突進してくるカマルに、僕もバリアで互いを相殺させた。
だが──カマルはいきなりしゃがみ込む。
「トーマスッ!! 今だッ!!」
「あいよッ!! 我が至高なる業火に焼かれよ──インフェルノッ!! 」
まさか──この状況で最上位魔法のインフェルノを撃ってくるとは。
トーマスは一撃で決めるつもりだな。
それなら──
「顕現せよ──アースウォールッ!!!!」
アースウォール──
最上位土魔法で術者を四方に囲い込み、相手の攻撃を防ぐ鉄壁の防御。
インフェルノのカウンター防御だ。
インフェルノが収まると、アースウォールは塵になって消えていく。
「これを……防ぐなんて……なすすべ……なし……」
トーマスは魔力切れをおこしたのか、膝から崩れ落ちた。
彼にとってインフェルノは必殺技でこの攻撃で何人もの敵を屠ってきた。
その度に魔力切れを起こしているらしいのだが、前のスタンピードでもインフェルノを使って魔力切れをおこし、気絶したらしい。
「トーマスの一撃必殺をも防ぐとは、ウィル様お見事。だが、これで純粋な一騎打ちになりましたな」
「そうだね。なら僕も魔法を使わず拳で戦うよ」
「いいえ──ここは戦士らしく剣で決着を付けましょう」
まさか──カマルからそう言ってくるのは意外だ。
とは言うものの、カマルは剣の腕も一流で父さんと対等に戦えるひとりのうちだ。
僕は刀を取り出す。
「ほぉ、サクラ王国に伝わる刀という物ですな。素晴らしい業物だ」
「これも自分で作ったんだけどね。さて──決着を付けようか、カマル」
「はい、ウィル様。いざ、尋常に──」
「勝負──」
剣と刀の斬撃が、演習場に響き渡った──




