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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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退屈しない日常②

ベリアルを倒しみんなの居る北門へと向かった僕とシェナ。

北門に近づくにつれ、戦いの後であろう、大量の魔物の死骸がそこらに散見していた。

王都の兵士、ハンター、住民総出で魔物の死骸を片付けている。


「相当派手な戦闘だったんだろうな」


万を超える大軍勢のため、片付けはあまり進んで居なかった。

その中に浮遊魔法で多くの魔物を一箇所に集めているアンジェラ先生が居た。


「アンジェラ先生ッ!!」


「ウィル? ウィルッ!! みんな、ウィルが帰ってきたぞッ!!」


アンジェラ先生のそのひと声に、続々とみんなが集まりだした。

その中には父上の姿もあった。


「心配したじゃねえか」


「すみません父上。想像以上に時間が掛かりました」


「ウィル──アンタ、ちゃんとあの悪魔倒したの!?」


「もちろんだよシノ」


「おかえりウィル」


「ただいま、ケイン」


みんな表立った怪我は無さそうでよかった。

でも──こんな少ない人数でよく万を超える魔物の軍勢を全滅させたものだ。

見た感じグレイシー領に居る軍隊はこの場には見られない。

どこも王都の兵士しか見られないし、アンジェラ先生が神聖魔法で全滅させたのかな?


「アンジェラ先生が全滅させたんですか?」


「いいや──ダグラスの部下がインフェルノを行使して全滅させたのよ。悔しいけど私は指揮をとってただけよ」


「アンジェラ先生も凄かった。アタシ助けられてばっかだったもん」


インフェルノを行使できる父上の部下?

まさか──いや、そんなことは考えたくない。

でも父上の部下でインフェルノを行使できるのはあの人しかいないもんね。

うわぁ〜、顔合わせたくない……。


「元気回復マンパワーッ!!!! さて──アンジェラ様、我々のハネムーン計画なんですが──あぶしッ!!」


トーマス・ウェイン──

父上の部下で、軍ではナンバー2に位置する幹部。

何かと僕を目の敵にしては、魔法で張り合ってくる──ちょっと面倒臭い人だ。

でも──魔法の才能はスバ抜けて優秀で、父上にも引けを取らない。

そしてグレイシー家の直属の部下であるウェイン侯爵家の次男でもある。

ただ女好きという難アリ。


「結婚なんてしないわよッ!!」


「でも惚れちゃったって言ったじゃないですか!!」


「それは言葉のあやよッ!! エルフ族は純血主義なの、あなたとは結婚できないわ。諦めて頂戴」


「そ、そんなぁ〜。でも、ぼくは諦めませんッ!! 愛は血も伝統もしがらみも超えていけるんですッ!!」


もう勝手に言わせておけよムードが漂っていて、エルフが純血主義なのは想定の範囲内。

トーマスと目が合うと、無言で僕に駆け寄ってきた。


「ひ、久しぶり……トーマス……」


「ウィル様、お久しぶりでございます」


トーマスは深々と頭を下げた。

あれ? いつもだったら、

『やーいウィルッ!! ガリガリでチビで鈍足のウィル〜』って悪口言ってくるのに。

やっぱ人前だから侯爵としての礼を尽くしてるのかな。


「ところでウィル様──相変わらずチビですね」


カッチーン。

確かに身長は170も無いですよ?

トーマスは高身長で僕より高いから反論できないのは悔しいけどさッ!!


「おっと、ここにいるのはシェナ・マクレーンじゃないか。ウィル様より小さいから小動物でも側に付けてるのかと思ったよ」


「トーマス、貴様、殺す」


シェナとトーマスって知り合いだったんだ。

だとしたらシェナのことどこかで会ってるのかな?


「殺すって物騒なこと言うなよ。事実を言ったまでじゃないか。そんなに怒る……ちょっと? シェナ? シェナさん? やめ、ちょっ、やめてッ!! ぎゃぁぁぁぁあ!!!!!!」


シェナはトーマスを倒し馬乗りになると、顔面に何十発もパンチを浴びせる。

痛い目に遭って反省してください。

そして後でちゃんと僕にも謝罪するように。

じゃないと絶対許さん。

てかチビじゃねーし。


「ウィル──疲れてる所申し訳ないが、国王陛下に報告しなければならん。付いてきてくれるか」


「はい、父上。シェナ、行くよ」


「かしこまりましたウィル様。トーマス・ウェイン。次不遜な物言いしたら、ホントに殺す」


「ふぁい……すびばべん……」



此度の戦いについて報告をするために謁見の間に着いた僕たちは、玉座に座るジェフリー・トゥルメリア国王陛下と横に立っているアリス・トゥルメリア王女殿下に跪いていた。


「面を上げよ」


僕たちは顔を上げて、楽な姿勢に身体を戻す。


「ダグラス、説明してくれ」


「国王陛下、此度の戦い──万を超える魔物の軍勢は全滅にし、兼ねてより宿敵だったベリアルは、ウィル・グレイシーの手によって討伐されたことを報告します」


「そうか……それは大儀であった」


緊張の糸が切れたのか、国王の目からスラッと涙が流れた。

宿敵だったベリアルが討伐されて、さぞ安堵を浮かべたのだろう。


「そしてウィル──」


「は、はい──」


「マーサの仇を討ってくれてありがとう。そして、ベリアルの討伐、誠にご苦労だった」


「有り難きお言葉、恐悦至極に存じます」


僕は僕自身の脅威を排除したまでだけど、ここにいる人たちにとっては、僕の本当の母親──マーサ・トゥルメリアの仇を討つことと世界の破滅を阻止したことになるんだよな。

決して楽な戦いじゃなかったけど、これで平穏が訪れるのなら、誰かのために何かを成すのは悪いことじゃない。

むしろ──それで誰かに評価されるのであれば、この事をやった価値はあるのだろう。


「ところでウィル──」


「はい?」


「ベリアルの脅威は去った。どうだろう、王家に帰ってくる気はないか?」


ベリアルが居なくなるとその話になるのは必然だよね。

前はアリスが王家に戻るから一緒にどうかって感じだったけど、今回ベリアルを倒して、僕が王家の人間だって隠す必要はなくなったわけだ。

王家からしたら跡継ぎが戻ってくるから万々歳な訳だけど、15年もグレイシーの人間として生きた年月と思い出があるし、ひょんと戻るのもなんか引けるというか……。

うーん、どうしたらいいのだろう。


「ウィル、私はいつでもあなたを歓迎するわ。だってあなたは私の大事な弟よ。家族じゃない」


「アリス……」


「お前が戻りたいのなら、俺は止めん。ただ──この国を思う気持ちや誰かのために何かを成したい、そういう気持ちがあるのなら──お前が最善だと思う決断をしろ」


「父上……」


なんか立派なこと言ってる風だけど、要は自分のことは自分で決めろってことでしょ?

やっぱ──脳筋グレイシーとお別れしようかな。


「まあ良い。ウィル、学院卒業まであと一年半ある。それまでに決めてくれればいい」


「申し訳ございません、国王陛下」


「だが──定期的にワシに会いに来るように。その約束だけはしっかり守りなさい」


「安心してお父様。私がウィルに首輪付けてでも連れてくるから」


「ホホッ、それなら安心じゃな」


えぇ〜首輪だけは勘弁してくださいよ。

ちゃんと行きますから。

そして話は今後のことに移り変わったが、正直疲れすぎて頭に入ってこなかった。

暫くして謁見が終わると、僕とシェナだけ先に謁見の間から後にする。

アリスはこの後公務があるらしい。


「ウィル様」


「どうしたの?」


「こっち、来て」


シェナに手を引っ張られ、近くの応接室に入る。

彼女は顔を紅くしモジモジしていて、少し落ち着きがなかった。


「いきなりどうしたの? なにか言いたいことでもある?」


「ウィル様だけ、シェナの秘密、打ち明ける」


「シェナの秘密……?」


「オールパージ」


彼女はオールパージを唱えた。

てことは、シェナも神聖魔法が使えるってこと?

ちょっと待て。シェナは王家の人間ではない。

なのに神聖魔法が使えるってことは──

すると──シェナの身体はみるみると変化していく。

頭には猫耳が。お尻の辺りからシッポが露わになった。

身体つきも少し大人っぽくなる。

引っ込んではいるが大きさだけが全てじゃないよ。


「ウィル様、この姿がシェナ本来の姿です」


なんとシェナは猫人族だったのだ。

言葉も流暢になっていて、なによりかわいい。

これこそザ・異世界って感じがして、僕は異世界に転生したんだなと実感できる。


「どうして僕に打ち明けようと思ったの?」


「理由は二つあります。一つは、シェナは猫人族と魔族のハーフです。人間の世界では魔族に近しい者は忌み嫌われる為、人間に偽装する必要がありました。猫人族は元々魔力の少ない種族でしたが、魔族とハーフである私は、猫人族が本来保有している察知能力とは引き換えに膨大な魔力を有しています。なので猫人族でありながら神聖魔法が扱えます」


猫人族と魔族とのハーフ所以に、神聖魔法が扱えるのは理解した。

実際に長い間、人間と魔族の間で争いは続いている。

今は冷戦みたいなものだが、その争いで生まれた両族間の溝は埋まらないくらい修正不可能だし、魔族は悪という家の教育に刷り込まれている。


「2つ目は、ウィル様がベリアルと戦闘中──アスモデウスが接触して来ました」


アスモデウス──

序列3位の地獄の王。

あまりにも美しい姿から対象を虜にし、玩具を壊すかのような冷酷さを持ち合わせている、魅惑の悪魔だと聞く。

そのアスモデウスが僕が戦闘中にシェナに接触してきたなんて。

悪魔がやって来たら圧でわかるのだが、今回は察知できなかった。

そういえば──前回も文化祭の時にアスモデウスだけは魔力を察知できなかった。

だとすれば、アスモデウスは魔力阻害を常時発動できる厄介な相手なのかもしれない。


「アスモデウスは、シェナが猫人族と魔族のハーフだと知っていました。これを知っている以上、アスモデウスが画策を行い、内部に潜入し混乱を起こすことが容易な為、ウィル様に打ち明けた次第でございます」


確かに──今は、この王国は悪魔が潜入しやすいほどにガバガバな警備体制だ。

警備体制がしっかりしていれば、15年前の悲劇は未然に防げたと思うし、なにより──マーサ・トゥルメリアが殺されるということもなかったかもしれない。

シェナなりの心遣いで打ち明けたのだろう。

だが──僕に打ち明けたとて、シェナが魔族の血を引く猫人族だってことは変わりないし、これが民衆にバレたら迫害の対象になってしまう。


「このことは他に誰が知ってる?」


「シェナが猫人族と魔族のハーフということは、アンジェラ様含め、上層部の方々たちは把握しております。ですが──アスモデウスが接触してきたと知っているのは、ウィル様しか知りません」


「だよね。折角ベリアルを倒したのに、また新しい悪魔が出てくるなんて知ったら、みんなパニックになるよね。でも──ありがとうシェナ。伝えてくれて」


「滅相もございません。シェナが猫人族ということはどうかご内密に」


そういうと、シェナは元の姿に戻った。

元の姿もかわいいから、正直ドキドキが止まらない。

でも人化じんかする時は魔法要らないんだね。


「ウィル様、シェナ、お腹すいた、何か食べたい」


またいつものシェナの口調に戻った。

人化するとその口調になるのは、元々猫人族だから人間の口の動きが合わないからなのかな?

まあこんなこと考えても野暮だから考えるのをやめよう。


とりあえず──ベリアルは倒した。

暫く一時の平和が訪れるだろうけど、油断はできない。

悪魔たちは今も僕の身体を狙ってる。

偉大なる御方──

どこの誰だか分からないけど、この身体は僕のものだ。

あなたに与えるつもりは毛頭ない。

いつか相対することになるとしても、僕は僕のままで居るよ。

そう、退屈しない日常の為に──

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