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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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幕間のひと間 その5

俺様の名前はスレブ・レニツァ──このトゥルメリア王国の公爵6家にして、財務を担当している親の嫡男だ。

公爵家である俺様は、皆から尊敬の眼差しで見られている。

取り巻き連中の奴は俺様のお零れを貰おうと媚びを売ってくるが、女は俺様に嫁ごうと躍起になってアピールしてくる。

それは何故か? 俺様が大貴族の嫡男だからだ。

将来安定しているし、女も取り巻き連中も俺様の配下になれば美味しい思いもできる。

要するに何が言いたいか。

俺様は──すげぇってことだ。



────────だが、



「スレブ、グレイシー家の人間にコテンパンにやられたみたいだな」


「いえ──父様、このスレブがグレイシーみたいな見るもむごたらしい守銭奴しゅせんどに寛大な心を与えた慈悲みたいなものです。決して──負けたとは言いません。情けをかけたのです」


「議会でグレイシーの息子は凄いと話題は持ち切りなのに、お前な勝手な情けで私は比較され、赤っ恥をかいたって訳だな?」


「と、父様ッ!! それは……」


「しかも未だに学院のBクラスとはどういうことだ? この体たらくにはガッカリだ」


「あの、その……」


「やはり──家督はお前ではなく娘のレニーに継いでもらうしかないな。あの子はお前と違って学があり魔法の才もある」


どうしてこうなった──

父様は非常にプライドが高く、特にグレイシーに対してかなりの敵対心を抱いてる。

昔から父様の『グレイシーは国家のウジ虫』と聞かされていたから、自ずと俺様もグレイシーの人間は皆悪だと思っていた。

そんな父様にグレイシーに負けたということがバレてしまった以上、どこかでグレイシーに勝たなければならない。

これで負けが続くと、父様は本気で家督を妹のレニーに継がせるだろう。

レニーは俺様みたいに勉学が出来て魔法も優秀。

ただ──身体が弱く、外出は滅多にできない。

そんなレニーが家督を継いでみろ?

外から婿を迎え入れて、俺様の居場所は無くなってしまう。

どうにかして、この汚名を返上しないと。




「スレブ様? なにか考え事ですか?」


学院の昼休み──俺様は昼食を摂りながら、今後どうしようかと考え事をしていた。

その考え事はもちろん──ウィル・グレイシーをどう陥れるか──だ。

父様に言われた一件以降、その事を考えているがこれといった案は浮かんでこない。

焦りと不安だけが俺様の心を蝕んでいた。


「別になんもないさ──最近忙しくて眠れないだけだ」


「そうなんですね。まぁ、スレブ様くらいお方だと、忙しくて充分に睡眠は取れないものだよね」


「あぁ、夜な夜な女の相手は疲れるぞ。アイツらはどんなに相手しても満足しないからな」


「すげぇ!! スレブ様!!」


そんなのは全くの嘘。

ウィル・グレイシーをどうするか考えていて眠れないだけだ。


「ちょっと──御手洗に行ってくる」


そう言いおもむろに席を立つと、一目散にトイレへ駆け込んだ。


「あー……なにしてんだスレブ・レニツァ。大貴族、レニツァ家の嫡男だろ」


本当になにしてんだか。

この公爵6家で財務を担当しているレニツァ家の嫡男なのに、こんなことで頭を悩ませて焦っている。

すると──背筋が凍る感覚が襲った。

咄嗟に鏡を見ると、そこには──ひとりの男が立っていた。

紫色の長い髪の毛に、長い爪。キリッとした眉に筋肉質の細身の身体。爬虫類のような目。


「あんた、悪m──」


悪魔は咄嗟に俺様の口を塞いだ。

長い鉤爪が首元を泳いだ。


「おっと、あんまり大きな声を出すなよ。オレはお前の味方だ。大声を出さないって約束してくれたら離す。分かったな?」


「────ウンウン」


俺様は頷くと男は離れ口を開く。


「オレの名前はベリアル。お前の言う通り──悪魔だ」


やっぱり──

味方とは言うけど、やっぱり悪魔は悪魔だ。

話を聞いたらさっさと逃げよう。

俺様がどうこうできる相手じゃない。


「おいおい──そんな構えるなって。言ってるだろ? オレはお前の味方だって」


「し、信用できない。あ、悪魔は人間の敵だ」


「それは、世間が言う悪魔のイメージだろ? オレとお前には──共通の敵が居る。わかるよな?」


「共通の、敵?」


そんなこと言われても、このベリアルって悪魔に会ったのは初めてだし、共通って言われてもピンと来るような敵は居ない。


「お前、レニツァ家の家督継ぎたいんだろ?」


「なぜそれをッ!!」


「まあまあ、最後まで話は聞けよ。お前はとある人間に将来の地位も名誉も失う危機に瀕している。でも──相手は優秀で、とてもじゃないけど太刀打ちは出来ない。どうにかして打開策を見つけたいが、これといって有効的な案は思いつかない」


この悪魔──なぜここまで俺様の心の内を知っている。

俺様は怖くなって後ろずさみをしてしまう。

だが、ベリアルも詰めて来て、すぐ壁に当たって逃げ場が無くなった。


「どうにかして──ウィル・グレイシーを陥れたい。自分の将来を守りたい。そうだろ? スレブ・レニツァ」


この悪魔に俺様の心の内など全部お見通しだった。

悪魔は人間の心の内を読み、弱みに漬け込んで誘惑してくる。

弱い人間ほど悪魔が欲する負の感情は膨大だ。

そうか──僕は選ばれたんだ。

弱いから、ベリアルに選ばれて獲物にされたんだ。


「オレもウィル・グレイシーには手を焼いていてよぉ、スレブ──協力してほしいんだ」


「協力ってなにを……?」


「ウィルを──殺してくれ」


ウィルを殺す?

な、何言ってんだこの悪魔──

お、俺様ができるワケないじゃないか……。


「お前──ウィルのせいで安定した未来が失われつつあるんだろ? じゃあ──自分の未来を守るために、ウィルを殺すのが最善策じゃないのか?」


「で、でも……人を殺すなんて……」


「人を殺すのは怖いよな? でも大丈夫、たった一回、一回だけ人を殺すんだ。その後はお前の安定した未来が待ってる」


こんなこと簡単に言うけど、相手は悪魔だし──殺す相手は、同じ公爵家のウィルだ。

もし──バレたらどうなる。

俺様は捕まるのか? それとも、その場で……。


「大丈夫だぜスレブ。ウィルを殺せば、あとはオレがなんでもしてやる。お前が罪を被らなくていいし、お前はそのまま立ち去れば良い。どうだ? 憎きウィル・グレイシーを殺そうぜ?」


「で、でも……」


「ウィルを殺せば、金も名誉も地位も女も全部お前のモノだ。邪魔者だって居なくなるし、誰もお前を疎ましく思うどころか──羨むだろうな」


そうだ──そうだよ。

全部、全部ウィルが悪い。

俺様が家督の継承が無くなりそうなのも、学院で日陰みたいな生活を送らされてるのも、女にモテないのも、全部ウィル──お前のせいだ。


「そうだそうだッ!! スレブ!! お前は悪くない、全部ウィルが悪いんだッ!! 殺るな? 殺るよな?」


「あぁ──俺様……いや、このスレブ・レニツァ様が憎きウィル・グレイシーの首を掻き切ってやるッ!!」


ベリアルは高らかに笑った。

俺様もそれに釣られて微笑する。


「スレブ、お前にこれをやろう」


ベリアルは俺様に牛革に包まれたナイフを渡してきた。

禍々しいオーラが溢れ出ている。


「こいつでウィルを一刺しすりゃ、あいつは回復魔法を使えず勝手に死んでくれるスグレモノだ。いいか──確実にウィルを殺せ」


「わかってる。俺様に不可能はない」


「その意気だッ!! ──せいぜい楽しませてくれよ」


俺様はそのまま、ゼノ大森林に向かった──

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