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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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カウントダウン⑥

ゼノ大森林某所──

ベリアルとの戦闘において、神聖魔法『オールゲージ』で彼を捕らえたウィルは、神聖魔法の真実を聞くこととなる。


「神聖魔法はな、正当なる王家のみが使える──特別な魔法だ。例え王位を簒奪してもそれは行使できねえ。何故なら──神聖魔法は、神から与えられた加護だからだ」


神聖魔法が王家のみ使えることは想定の範囲内だったが、まさか──その加護自身は神から与えられるものだとは驚きだ。

各属性の加護には、精霊エレメントがその属性ごとの加護を与えるのが一般的に解釈されている事柄だ。

ただ──それだと、人間には限定的な条件でかつ、エルフ種みたいな高い魔力量を保有している種族が、神聖魔法を使えるのは矛盾している。


「じゃあ──なぜ、エルフたちは神聖魔法を使えるんだ? 人間だけ限定的じゃないか?」


「んなこと、親父の気まぐれなんだから知らねえよ」


「ん? 親父って?」


「神に決まってんだろ」


あぁ、そういや、ベリアルは元天使で創造主は神様なんだっけ。

親が気まぐれなんて、お宅の息子さんも大変ね。


「神聖魔法は王家だけ使える魔法で、神から加護を得られる魔法だってことは理解したけど、なぜそれをあたかも他の魔法を極めると扱えるようになるって、間違った解釈を流布したんだ?」


「簡単なことさ──オレたち悪魔は、必要な時以外は人間を殺さねえ」


「それがどう間違った解釈に繋がる」


「悪魔が生きる糧としてるのは、人間の生命力と魔力だ。より強い生命力とより高い魔力があれば、悪魔は半永久的に生きられる。この世界で悪魔は死なないが、地獄でもここでも、生命力が尽きたら──そりゃあ、悪魔も死ぬわな」


「だから間違った解釈を流布させて、あえて──人間に魔法に対する競走意識を芽生えさせるように流布したのか」


「そういうことだ。偉大なる御方が復活する前も後も、お前ら人間は悪魔のエサ──家畜なんだよ」


しかし──この真実を王家は知っていた。

けど、この事実を公表すれば、一時的に魔法に対する研究や研鑽は停滞するけど、無駄な権力闘争は無くなるんじゃないか?

いや──ダメだ。

僕自身で調べた内容だけど、王権派が対立している打倒派だけど、現在の封建制度から民主制度に変えるための派閥らしい。

ザガルトスは自ら王になることを目論んでいたけど、打倒派は王を力ずくで引きずり下ろしてしまおうという考えではなく、王は国の象徴として、国政は民主主義の元──合議による政治改革の一つらしい。

まあ、今の日本とかアメリカとかそういう民主主義国家の国家運営みたいなものだよ。



────が、15年前の解釈だ。



ベリアルが現れてから打倒派の毛色も変わり、今となっては王家の不正を暴こうとしては、デモを起こしたり、最悪の時は王権派の貴族を暗殺したりと、過激な行動を取っている。

軍はさすがに僕の父上が掌握しているから、軍事クーデターは起きないものの、予断を許さない状況なのは変わりない。


だから──神聖魔法は王家だけ使えるという情報を、もし打倒派に知れ渡ったら、自分たちの首を締める行為になるのだ。

真意は定かではないが。

要するに、神聖魔法の真実を世間に公表できない理由として、

・国家の魔法技術が一時的に衰退する

・王権派の瓦解の懸念

・打倒派のクーデター

が、ネックで公表できないのだと推察する。

現在の政局も相まってか、悪魔側からしたら美味しい時期だろうし、偉大なる御方って奴の器も手に入る状況だから、ヨダレが止まらないんだろうね。


「テメエの知りたいことはもう話したぜ。さっさとコレ解除して再戦しようじゃねえか」


「悪いけど──ベリアル、君にはこのまま死んで貰うよ。ここで君は退場だ」


「退場だって? お前──俺より傲慢だな」


────ブシュッ……


僕の腰辺りに何か刺さる感覚が襲った。

痛い、けど──いきなりすぎて状況が飲み込めなかった。

この場には僕とベリアルしか居ないはず──

上空にはシェナが待機しているから、何か異変があれば念話を飛ばしてくるだろうし。

ゆっくりと後ろを振り返る。

そこには──酷い興奮状態のステブが、僕の腰にナイフを刺していた。


「ス、スレブ……」


「やった……やったんだ!! ようやくウィルを倒せる!! オレ様は、国賊を討伐したんだ!!」


「離れてくれよ……スレブ……ここは危ないんだ……」


「ベリアル様の言う通り、貴様はこの国の治安を脅かした張本人!! このスタンピードも貴様が元凶だ!!」


スレブはナイフを抜くと、もう一度僕の腰に突き刺した。

どんどん痛みが増していく。


「や、やめてくれよ……スレブ……」


「貴様が悪い!! 貴様が悪い!! 貴様が悪い!!!!!!」


「ウィンドブラスト!!!!!!」


僕は咄嗟にウィンドブラストを発動し、スレブを強制的に排除した。

吹き飛ばされたステブは近くの樹木に激突し気を失ってるが、おそらくベリアルに操られていた可能性が高い。


「良い気分だろ。学院のお友達に刺される気分は。お陰でクソ窮屈な檻から出られたぜ」


スレブの強襲によってオールゲージが解除されてしまった。

オールゲージは対象が拘束されている状況下での発動しか出来ないため、今手負いの僕に何個も魔法を繰り出すのは生命のリスクがある。

とりあえず──ここは、オールヒールで回復しないと。


「オールヒールが効かない……」


腰辺りにオールヒールを充てても、一向に回復しないのだ。

むしろ──魔力だけ消費して、戦況はどんどん不利になっていく。

おそらく──スレブが使ったナイフに、何かしらの闇魔法が付与されていたのだろう。


「なぁ、ウィル──苦しむのは辛いか? アハハハッ!! この間、オレも同じ痛みを食らったら、よぉぉぉぉぉく!! 分かるぜ?」


「一体……なにをした……」


「あのナイフに付与したのは、静かなる終焉サイレントデスっていう闇魔法だ」


「……静かなる終焉サイレントデス?」


聞いた事のない闇魔法だ。

しかし──身体がその静かなる終焉サイレントデスによって、悲鳴をあげている。

なんでヒールが効かないんだ。


「静かなる終焉サイレントデスは、対象者の身体に強い魔力阻害を持たせる魔法だ。だから──テメエのオールヒールは魔力阻害によって効果が得られないってことなんだよ!!」


だから、オールヒールが効かないのか。

だとしたら、通常のヒールを使ってもこのデバフを解除するのは不可能。

オールヒールは阻害系の魔法も解除できる優れた魔法だが、静かなる終焉サイレントデスによって、オールヒール自体が魔力阻害を受けてしまって効果が発揮できない。

他にも解除系魔法を使ってみるが、やはり──魔法阻害によって効果を発揮できなかった。


「もう諦めろよウィル──お前は詰んでるんだよ」


「そんなことない……闇魔法のほとんどは、術者を殺せば解除できる仕組みだ。それは……お前だろベリアル」


「だったらよかったんだけどなぁ!! テメエ、自分の手でお友達殺せんのかよ」


おいおい……やめてくれよ……。

この魔法の術者がスレブだなんて。

どんなに学院で僕の悪口を吹聴しているからって、さすがに彼を殺すことはできない。

彼だって、ベリアルに操られているだけだし、ここで彼を殺してしまえば──僕はきっと、一生拭えない後悔に苛まれるだろう。


「おい、殺さねえのか? テメエが死ぬぞ?」


そうだ──

スレブを殺せば、僕は生きれる。

でも──スレブを殺さなければ、僕は死ぬ。

そして、偉大なる御方って奴が復活し、この世界は破滅に向かう。

1を犠牲にして100を救うか。

100を犠牲にして1を救うか。


「ウィル、カウントダウンは始まってるぜ?」


「うるさいッ!! 黙ってろッ!!」


「おー怖いッ。おっかないねぇ」


ダメだ……意識が朦朧としていて、考えが追いついていかない。

スレブを殺すか、僕が死ぬか。

でも──僕が死ぬ選択をしても、僕はベリアルも道連れにする。

ただ、ベリアルが死んだところでアザゼルや他の悪魔がこの世界を襲うだろう。

最善の選択はやはり──僕が死ぬこと。


「──いや、待てよ」


「んあ?」


なんだそんなことも気づかなかったのか。

やはり、手負いで意識朦朧としていると、些細なことも見逃しがちになるな。


「ベリアル──君は僕に大きな嘘をついた」


「もう死ぬってのに、遂に頭までイカれちまったか? ウィル」


「いいや──全くもって正常だよ。君がこの静かなる終焉サイレントデスの術者だね。だから──ステブを殺す必要はない」


「なにを根拠に」


「君が思ってるより人間って繊細で弱い生き物なんだ。人間は闇魔法を行使することはできるが扱えない。それは何故か──スレブの手が焼けただれてないからだ」


闇魔法には人体に害を及ぼすステップというのが存在する。

まず──闇魔法を行使すると、人間の手は焼けただれる。これは、前に僕がケインの前で見せた時の現象だ。

その次に、精神異常を来たす。

見えないものが見えたり、酷い被害妄想に囚われたり、など──日本だったら精神科にお世話になるレベルでヤバい奴だけど。

最後に魔獣化だ。

これはもう言わなくても分かるよね。


「スレブは精神異常を来たしているけど、手は焼けただれてなかった。もし──自分で闇魔法を行使していたら、手が焼けただれていてナイフなんて持てないからね」


けどベリアルは、それがどうしたと言わんばかりの顔をしていて、嘲笑っている。


「そのカラクリに気づいた事は褒めてやるよ。けどなぁ──お前のカウントダウン、そろそろ終わりに近いぜ」


ベリアルは下を指差す。

僕は目線を下にすると、そこは──僕の血溜まりが出来ていた。

すると──ふと我に返ったのか、身体に力が入らない。


「長くて短い15年だったよウィル。もうお前に会えないって思うと寂しいけどなぁ!!!!!!」


「オールリザレクション」


「────はッ?」


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