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転生して貴族になった僕は、どうやら最強チートを手に入れて人生イージーモードみたいです  作者: リオン
第一部 トゥルメリア王国編

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カウントダウン④

一方その頃──

時を少し戻して場所は王都セリカ北門前。


わたくし、アンジェラ・カリオペは、シノとケインを含めた大多数のハンターと共に、魔物のスタンピードに備えていた。

今回──正門近くにあるアンキラブル大迷宮から魔物が溢れたワケではなく、トゥルメリア王国北に位置する、ゼノ大森林から万を超える魔物が押し寄せていた。

ゼノ大森林の横には私の故郷──エルフ王国もあるから、心配でしょうがないけど、今はここ──セリカを守ることに徹しないと。

とてもじゃないけど、この万を超える魔物たちをたった数百人のハンターで耐えなきゃいけない。

ダグラスとガルドも居るけど、私と同様指揮系統の統率の為、勝手に動けないのが痛いとこ。

唯一救いなのは、ダグラスの動かせる軍が現在はグレイシー領に居るから、先程応援の要請はしたけど──いつ到着するか分からない。


「アンジェラ先生──いや、アンジェラ将軍。俺たちは何をすれば」


「あなたたちは魔物の軍勢が目視できるまで待機よ。今は私の傍に付いておきなさい」


「かしこまりました」


私は教職員の一面を持ちながら──所属はトゥルメリア王国軍の将軍だ。

自前の軍隊は持たないが、ある程度の自由は保証されていて、必要とあらば前線に繰り出すこともある。


「アンジェラ先生……ホントにアタシらも戦うんすか?」


「こらシノ、ここではアンジェラ将軍って呼ばなきゃダメだろ」


「はぁ? 先生は先生だしッ!! 」


「そんなのはどっちだっていいわよ」


シノの身体は緊張と恐怖のせいなのか、酷く震えている。

無理もない──普段、実技研修でダンジョンに潜っているとはいえ、こういう国が絡む有事は初めてのこと。

私だってこのスタンピードを前に経験したのは100年前のことだし、緊張しないわけがない。

でも──ここは生徒の為よ。しっかりと落ち着かせないと教師失格だわ。


「シノちゃん。先生も怖いの。でもね、あなたみたいな優秀な生徒が側に居てくれたら心強いの。だからね──私に力を貸して」


「先生……うぅぅぅぅ……」


「ちょっ!! ちょっと!? シノちゃん!?」


緊張の糸がプツンと切れてしまったのか、泣き出してしまうシノちゃん。

あー、こういう時どうするんだっけ?

私子ども居ないから分からないのよ。

とりあえず頭とか撫でてみるけど泣き止む様子ないし、これから戦いだってのにどうしたらいいの??


「アタシだってぇ〜、普段から頑張ってるけどアリスが魔法学院通うって言うから、仕方なくアタシも通ってるに過ぎないし、こんな意味わかんない数の魔物とか相手するの女の子のアタシには無理だしぃ〜」


うんうん、分かる分かるよその気持ち。

私も幼い頃は両親に連れられて、いきなり魔物と戦わされたことあるし、死線を何度もくぐり抜けて来たし、そう考えたら学院で学びながら戦いの実践を積めるって良いことだと私は思うんだけどねぇ〜。


「か弱い女の子がこんなの無理だよぉ〜」


「か弱い? 何を言ってんだか。いつもダンジョンで張り切って先頭に立って進んでいくクセに」


「あ? なんか言った? スミス家の坊ちゃん」


お、泣き止んだ。

あやしてダメなら引っぱたけ先方ね。


「事実を言ったまでさ。この期に及んで魔物の軍勢を相手する労力が惜しいから、あわよくば自分だけサボろうと思ってたな?」


「はァ!? そんなこと思ってねえし!! スミス家の坊ちゃん妄想が得意なんですかぁ!? アンタこそホントはガタガタ震えてるクセに強がっちゃって、仕舞いには涼しい顔して、アンジェラ将軍──とか笑えるんですけどッ!!」


「──ッ!! 貴様!! この俺を愚弄したなッ!!」


「はい〜出たァ〜!! この俺を愚弄したなッ!! プライド高い坊ちゃんの典型的な常套句じょうとうくね」


「ぐぬぬッ──」


「論破ッ!! アンタざっこ!!」


いつも一緒に居るとこ見るけど、実はこの二人って仲悪いのかしら。

痴話喧嘩はそこまでにしてもらわないと。

いつ魔物の軍勢が来るか分からないからね。


「ガキ同士が喧嘩なんて、やる気満々じゃねえか」


「ダグラス──」


「よぉ、アンジェ」


私たちの元にやって来たのはダグラスだった。

そういえば──私も冒険してた時は、ダグラスとしょっちゅう喧嘩してたっけ。

いつもノーマンとガルドが間に入っては、3人とも燃やして遊んでたわ。

あの頃が懐かしい。


「なに笑ってんだ?」


「なんでもないわ。それより──どうしたの? こんなとこまで来て」


「あぁ──ガキたちのお守りしながら戦闘なんて大変だと思ってな、お前のことサポートする人材を貸しにやって来たワケだ」


うわぁ〜、嫌な予感する。

こういう時のダグラスって、マトモな人材を寄越さないのよね。

期待しないで話半分で聞くけど、ホントに使えない人材なら送り返してやろう。


「おいッ──トーマス、こっち来い」


やって来たのは──メガネをかけていて、線が細く、如何にも脳筋グレイシー家が抱えるような人材では無いことは確か。


「紹介しよう。トーマス・ウェイン。ウチの若い衆のひとりだ」


「トーマス……?」


少し見覚えがあった。

確か──私がグレイシー領で軍事演習に参加していた時の──


「お久しぶりです、アンジェラ様。お迎えに上がりました」


「あ、あぁ……久しぶりね……トーマス……」


「どうした? アンジェ」


思い出したわ。

このクソガキ……もとい、トーマス・ウェインは、彼がまだ幼い頃グレイシー領で軍事演習に参加した際、私の横にピタリとくっついていた子供だわ。

こんなに大きくなったのね。

あれ以来会ってなかったから気にも止めてなかったけど。


「アンジェラ様、ぼくはあの時の約束を今でも守り続けてます。いつか──あなたを迎える為、純潔を守り抜きましたッ!!」


「あは、あはははは……それは凄いわねぇ〜……」


彼はずっと私に恋心を抱いていた。

『一目惚れしました!! 結婚してください!!』

まだ幼い彼からの愛の告白は、子どもが大人に憧れるひとつの感情だと思って、

『大きくなったら迎えに来てね』

なんて、言ってしまったんだっけ。

あんな子どもを傷つけない為の常套句を今でも覚えてるなんて……。

私、マズい奴に目を付けられてた?


「なに? アンジェラ先生って許嫁居たの?」


「いつも結婚したいとか言ってたのに、許嫁が居たなんて野暮ですよ」


「ちょっと、私はそんなんじゃ──」


こういう時だけ息を合わせないで欲しいわ。

仲良いんだか悪いんだか、先生分からなくなってきたわよ。


「君たちがアンジェラ様の生徒ですか。いいですか、アンジェラ様は聡明で麗しく──偉大な方です。くれぐれも足を引っ張らないようにッ!!」


「あーい」


「かしこまりました」


「腑抜けた返事が聞こえたがまあいいでしょう。では──アンジェラ様、ぼくとこれからの未来について、あちらの天幕で話し合いましょう」


「行かないわよ」


「──あうッ!! これも愛のムチッ!!」


人間って拗れるとこんなにも厄介なのね。

大体──私はエルフで彼は人間。生きる年数が違うし、彼も気づいたら年寄りになってるわ。

出会った頃若かったダグラスたちも、今や私より見た目が年上だもの。

あぁ〜、なんで人間も長命じゃないのかしら。

私にとって人間の寿命は刹那でしかないわ。


「んじゃ、俺は作戦本部に戻る。なんかあったらトーマスを使え。それじゃあな」


「ちょっと、コイツも連れていきなさいよ!!」


ダグラスは手を振って去っていった。

また勝手なことして。

あの人はいつもそうだわ。

でも──そういう所が昔からかわいいのよね。


カーンカーンカーンカーンッ!!


王都の鐘が鳴る。

万を超える魔物の軍勢が目視出来た合図だわ。


「アンジェラ将軍ッ!! 魔物の軍勢を捉えました!!」


「分かったわ!! 遠距離魔法隊、詠唱開始」


「「「「「親愛なる神よ、我が言の葉の呼び掛けに……」」」」」


それぞれが詠唱を始める。

私も城壁に登り魔物の軍勢を確認した。

やはり──万を超える魔物の大群は、見ただけでもゾッとする。


「放てぇぇぇえ!!!!!!」


遠距離魔法隊の攻撃が勢い良く飛び出す。

やがてそれは着弾し、大きな爆発音をたてた。

だが──万を超える大群のため、これだけの魔法ではさほど効果は無い。

けど今は質より量だ。

第二陣の攻撃を急がないと。


「第二陣、詠唱用意!!」


「アンジェラ様、僕たちは」


「あなたたちは、遠距離魔法隊の攻撃の後突っ込んで貰うわ。いい? 死ぬんじゃないわよ」


「了解です」


「ア、アタシ、頑張ります!!」


「ぼくの未来の花嫁の為、その力大いに振るいましょう。そして必ずや──」


「──トーマスさーん、行くっすよ〜」


「あ、待て!! 勝手に行くんじゃない!! まだアンジェラ様に愛の言葉を──」


「あはは……」


さて──どうしたものか。

遠距離魔法隊にも魔力の限界がある。

二陣参陣と攻撃魔法を撃ち込んだはいいが、なんせ万を超える軍勢だ。

私の神聖魔法はいざと言う時に残しておきたいし……。

もしかしたらこのスタンピード──総力戦になるかも。

トゥルメリア軍の到着はまだ先だし、もしかしたら間に合わないかもしれない。

でも──ここで弱音を吐いてはエルフ族の名折れ。

エルフ族は高潔で誇り高い種族。

こんな魔物風情に負けてたまるものですか。


「遠距離魔法隊のリーダー居ますか」


「はい、オレですが……」


「ここの指揮は任せます。魔力が枯渇するまで魔法を打ち続けて下さい」


「わ、わかりました!!」


私は指揮権をリーダーに讓渡すると──城壁を降り、魔物の軍勢の元に歩いていく。

既に──近距離戦闘隊は戦闘に入っていた。


「親愛なる光の神よ、我が言の葉の願いを聞き光の加護を。そして──我が言の葉の願いを叶え給い、悪しき者から尊き者を救う力となれ。オールハイネス」


力がみなぎってくる。

さて、私も久々に暴れますわよ──

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