7. カウントダウン
暑さが体力とやる気を蝕み、人間から気力を奪う夏。
夏休み前の僕たちAクラスは、演習場でスキルの授業を受けていた。
スキルとは何か学ぼう! という授業ではなく、自身の持つスキルを最大限活かして特訓しようという授業である。
僕の場合は──僕自身が知っているものであれば、何でも作ることができる生成スキルで、これまでに刀や拳銃、最近だったら文化祭で使うメイド服など生成してきた。
アンジェラ先生だったら、読心スキルで、相手の思考や心の声を聞くことができる。
何度か心の声を聞かれたことがあったが、その度に隠匿魔法をかけては突破されるというイタチごっこを繰り返している。
今更この授業を受けても僕にとってはあまり意味のないことなのだが、ちゃんと授業受けないと単位が取れないので、テキトーに生成スキルを使いながらやり過ごしていた。
「ウィルく〜ん。いかにも退屈って感じ明らさまに出されると、先生悲しいな〜」
「珍しく僕の心の声聞かなくても分かってくれましたね」
「だって顔に書いてるんだもの。それくらい私だって分かるわ」
それはどうも悪うござんした。
生成スキルを使って物をを作るのも飽きていた僕は、演習場の砂を風魔法で操って城の形にし、水魔法で崩れないように固めていた。
「あら、凄く器用ね。相当練習したんじゃない?」
「ここまで器用に扱えないと制御を誤って味方に当たったら大問題ですから」
「魔力操作も一流って、やっぱあなた規格外ね。一体幾つの加護を貰ったのよ。私も全属性の加護欲しいわ。私に挨拶に来ないかしら」
挨拶…………。
あ、そういえば──
僕とアンジェラ先生だけが聞こえる程度の消音魔法を発動する。
僕が指定する範囲内に入れば、個人的に話していることが外に漏れる心配はないが、外側の人からすると喋ってるのに声が聞こえないという、おかしな空間になる。
「急に消音魔法なんて──」
「──アンジェラ、このことはまだ誰にも言ってないんだ。他言無用で頼む」
「かしこまりました。どうなさいましたか、ウィル様」
「アザゼルって悪魔知ってるか」
「もちろん、今魔界の序列が2位の悪魔です。私はその姿を見たことはありませんが、最後に地上にて目撃されたのは確か300年前だったかと──」
そんなに前になるのか。
それだけ高位の悪魔が接触してきたとなると、文化祭の時に戦闘にならなくてよかったとつくづく思う。
「そのアザゼルが僕に接触してきた」
「────ッ!! まことですか!?」
目を見開き、驚きを隠せないアンジェラ。
そして──そのアザゼルと一緒に居た、貴婦人のなりをした女の事もアンジェラに報告する。
アンジェラは少し考え込んだあと、口を開いた。
「もしかしたら、その貴婦人──アスモデウスかもしれませんね。確証はありませんが、序列3位の悪魔です。よくご無事で」
アスモデウス──
色欲の悪魔で、人間亜人関係なく虜にし、生命を吸い取るとんでもない悪魔だ。
しかし──そんな高位の序列に座している悪魔が、いとも容易く学院に潜入出来ている時点で大問題だ。
その気になればあっちは簡単に僕たちを殺せたのに、何も手を降さずに帰って行ったのだ。
文化祭だから一般客の往来もあるし、防ぎようのない状況だったから仕方ない部分があるが、魔族や悪魔探知のセキュリティは是正する必要性があるようだ。
「さすがに僕でも焦ったよ」
「しかし、序列が高い悪魔が揃って出てきたということは、悪魔側もなりふり構ってられないという事になりますね」
「けどさ、そうなりふり構ってられないなら、文化祭で僕を連れ去ると思うんだけど、悠長に事を構えてるとしか思えないんだよね」
「悪魔も一枚岩ではないということでしょうか」
「そう願いたいけどね。とりあえず──シナジーで共有しておくよ。シナジー」
シナジーとは、神聖魔法の一種で自身が見たものを、自動で紙に映し出したり、相手の思考に見た映像をそのまま伝達させる魔法だ。
だが伝達のほうは、相手も神聖魔法を扱える必要がある為、この魔法を伝達で使える相手は、アリス、国王陛下、そしてアンジェラと人が限られる。
「ありがとうございます。戻り次第書き写して対策を講じます」
「よろしく頼むよ。何処に出没するか分からないし、いつ攻められてもおかしくないからね、守りは完璧にしたほうがいい」
いきなり学校に来るかもしれないし、王宮に現れるかもしれないし、夜中寝首を掻かれるって可能性もある。
退屈しないってのは良いことだけど、命を狙われるって、やっぱ良い心地はしないよね。
そして何日か経ったある日──
事件は起きた。
「よおウィル。決着付けようや」
明日から夏休みなのに空気読めないよね
ベリアルくん──




