どうしてこうなった③
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文化祭当日──
僕たちのクラスは思いのほか大盛況だった。
アリスのことを見ようとこぞって人が押し寄せてそれどころではない部分は大いにあるが、そこは王女殿下。ノーマンを筆頭とした護衛を手配していたので、大きな乱れは起きてない。
まあ、何かあれば僕やシェナが何とかするから大丈夫なんだけどね。
しかし──解せないことがある。
「なんで僕がメイド服着なきゃいけないの!?」
「だって、他の男子は着てるのにウィルだけ着てないなんて無理がある話でしょ?」
「調理担当で裏方メインなんだし前に出ないから着なくていいじゃないか!」
「だって見たかったんだもん!」
私情かよ。
アリスは一度言ったら聞かないことがある。
メイド服だって、不敵な笑みを浮かべた他の男子共が無理矢理着せて着たし、僕はこの状況を解せない。
「似合ってるから大丈夫じゃん?アンタの顔って中性的だし、女の子に見えるから違和感ないよ」
「シェナよりかわいい……」
「そんなことはないと思うけど……」
「声高くしたら女の子に聞こえんじゃね?」
「僕で遊ぶな!!」
「悪ぃウィル──人が足りねえんだ!3番テーブルにオムライス2つ提供してくれ!」
「え!?でも──僕裏方……」
「ほら行ってきなよ。人足りないんだから」
「はぁ? アリスたちが行ってくれよ!ヒマしてるじゃん」
「だって私が行ったらパニックになるもーん」
「アタシはアンタが作り貯めしたオムライスの温めがあるから無理〜」
「シェナは片付けある。接客苦手」
こ、こいつら……。
仕方ない、ここは接客するしかないか。
どうせテーブルにオムライスを持っていくだけの作業、こんなのどうってことはない。
「はい行ってら〜」
シノにオムライスを渡されると、僕は3番テーブルに向かった。
僕がホールに出ると、みなの視線が僕に集まる。
「おい、あの子かわいいな」
「ばか!メイドは男子生徒が行ってるって注意書きあるだろ」
「でもどこの人なんだろ、かわいい」
「実は本物の女の子なんじゃないか?」
「俺のかわいいウィル。今だけは今だけは耐えるんだ」
だからいつも最後に変なの居るのなんなんだ!
お前はなにに耐えてんの!?
とりあえず──早く接客を終えて帰りたい……。
「お待たせしました。オムライス2つでございます」
「わぁ!アシー姉!これがオムライスなんだって!」
「そうねゼルちゃん。あら、こんなかわいい女の子がお給仕してくれるのね」
「いえ、僕は男でして……」
なんとも身なりがしっかりしてる貴婦人と弟さんだ。
お付きの者もピシッと立っていて、とても位の高い貴族なのだろう。
ただ──どこか違和感があるのは否めないが、きっと気のせいだろう。
「それはそうとお兄さん、お名前は?」
「えっ? ウィル・グレイシーと申します」
「あなたがウィル・グレイシー? もっと豪胆な男かと思ったけど、案外華奢なのね」
そりゃ脳筋バカの父親に比べたら華奢で弱っちい身体してますよ……。
あ、でも血の繋がりないから国王陛下をバカにしてることになっちゃうか。
それは訂正しておきます。
「今日はアリス王女殿下はいらっしゃるのかしら? ご挨拶したかったのだけれども」
「申し訳ございません。今日は生憎不在でして」
「そう──それは残念ね。挨拶はまた今度にしておくわ」
「はい、失礼します」
その場を去る僕。
今日はたくさんの貴族が来てるし、アリスに挨拶目当ての人も居るから、一々名前を聞くことはしなかったが、やっぱり──どこか違和感を感じる。
僕は後ろを振り返った。
アシーと呼ばれる貴婦人は美味しそうにオムライスを堪能してるだけだった。
「どうしました? ウィル様」
「あぁ、ノーマン。ちょっと気になることがあって」
「と、言いますと?」
僕とノーマンはバックヤードに戻る。
僕が接客した貴婦人のことと感じた違和感を話すと、ノーマンは考え込んだ。
「ノーマン、どう思う」
「確かに──あの貴婦人は社交界でも見たことがありませんな。もしかしたら他国の要人という線もありますぞ」
「その線も捨てきれないけど……って、あれ?」
僕がバックヤードから貴婦人の居るところを覗き込んだが、そこにはもう──別の人が座っていた。
バックヤードに入っていくシェナに声をかける。
「なぁシェナ。僕が接客した人は?」
「シェナ、片付けしてるだけ。人見てない」
「そ、そうか」
「とりあえず──周囲に警戒しておくようにと伝えておきます。取り越し苦労だといいのですがな」
「そうだね。手間を取らせてすまない」
「いいえ、何なりとお申し付けください」
そう言うと、ノーマンは自分の持ち場に戻った。
僕もバックヤードの奥に戻ると、アリスが駆け寄ってきた。
「どうしたの?ウィル。じぃやとお話してたけど」
「ううん、なんでもないよ」
「2人とも相当な剣幕だったけど、お姉ちゃんに隠し事?」
「こういう時だけお姉ちゃん権限使うんじゃありません」
「──あうっ!」
アリスにチョップを食らわせる。
僕は上着を羽織ると、教室を後にしようとした。
「どこいくの?」
「調理場だよ。このペースじゃ足りなくなるからね」
「あ、じゃあアタシはCクラスのケーキ食べたいからよろしく〜」
「シェナ、Dクラスの串焼きの詰め合わせ」
「じゃあ私は2年生が売ってるクッキーよろしく!」
「調理してくるんだ!!そこの男子かノーマンの部下に頼めばいいでしょ!」
「えぇ〜、改めて頼むのめんどくさいからウィルよろしくね!」
「ったく……。はいはい、覚えてたらね」
「絶対だからね!」
アリスたちを背に教室を後にした。
まったく、あのわがままはどうにかなりませんかね。
これじゃ、どっちが先に生まれたか分からなくなるよ。
でも──アリスにとってやっと一緒に居られる家族だもんね。
少しのわがままくらいいいか。
貸しを作ったって思えばいいか。
──調理場に着くと、人影があった。
見た目は子どもっぽく、どこかでみたことあった。
「さっきの子ども……」
「やぁ、遅かったねウィル。待ってたよ」
「ここは関係者以外立ち入り禁止だよ。お姉さんはどこ行ったの?はぐれたの?」
「キミに用があってここで待ってたんだ。子ども扱いはしないでくれるかな」
なんという魔力の圧……
こんなの普通の人だったら飲み込まれてしまって精神をおかしくしてしまう。
「へぇ、耐えるんだ。さすがは偉大なる御方の器だね。ボク気に入っちゃった」
偉大なる御方……
そう悪魔たちが呼称する謎の悪魔。
復活が近いともくされているが、何故か僕はその偉大なる御方の器として選ばれている。
「もしかして──悪魔か?」
「うんそうだよ。ボクの名前はアザゼル。今日は君がどういう人間なのか挨拶に来たってワケ」
アザゼル──
悪魔の中では上位に存在する魔王。
元天使で女好き。あまり良い印象は持たない。
だが、武器の生成や魔術に長けていて、少し僕のスキルと似ている部分があるのは癪に落ちない。
「にしては、最初人間のように立ち居振舞っていたが、最初から接触するべきだったのでは?」
「んー、キミに身分を明かさずに帰ろうとも思ったんだけどね、あまりにも平和ボケしてるからムカついて接触しちゃった」
やはり──さっきの違和感の正体はこれだったか。
悪魔は文化祭を利用し、わざわざ僕の居るクラスにやって来たってことだ。
だとしたら、あの貴婦人も悪魔なのか?
「あの貴婦人もお前の仲間か?」
「そうだよ。彼女には先に帰って貰ったけどね。大丈夫──ボクもヒマじゃないから、今日は本当に挨拶程度だよ」
やっぱりか。
悪魔の言葉は信じ難い。
どこかで奇襲を仕掛けてくるやもしれない。
なんせ相手は魔術に長けている存在だ。
気を抜いたら一発で仕留められるだろう。
「てっきりベリアルが使い物にならないから別の悪魔が派遣されたのかと思ったけど、思い過ごしだったようだね」
「うーん、確かに──彼は上位の悪魔の中でも少々劣ってる部分があるけど、キミみたいな強い強い加護を持ってる人間が相手だったら納得かもね」
「というと?」
「さ、お喋りはここまで。また近いうちに会いに行くよ。ウィル・グレイシー……いや、ウィル・トゥルメリア王子」
「ちょ、待て──」
そう言うとアザゼルは、テレポーテーションを使い消えてしまった。
本当に挨拶だけだったな。
念の為、鷹の目を付けられてないか調べたが、何も反応は無かった。
一体何のために僕に接触したのか真意は分からないが、ベリアル以外にも僕たちを監視している悪魔の存在が居るってことが分かっただけでも収穫だ。
これは一層、気を引き締めないと──
それから──文化祭はなんの問題もなく時間が過ぎでいって、あっという間に終わった。
1日の大半を教室と調理場の往復とちょっとだけ接客して終わってしまったが、久々の労働は楽しいものですね。
うん、根っからの社畜根性、まだ残ってました。
優秀賞はBクラスと僅差で敗れてしまったけど、また来年が楽しみだ。
もうメイド服は着たくないけどね。
どうしてこうなったかは、どうでもいいか──




