トゥルメリア王家の過去⑥
「神聖魔法が使えるは、王家とその一部の人間だということは知ってるな?」
この世界には魔法というのが存在する。
火、水、風、土、雷に、悪魔や魔族が扱える闇魔法。
そしてザガルトスが言った、王家やその一部が扱える神聖魔法がある。
何故──僕が神聖魔法を扱えたかは、僕自身が王家の人間だったからであり、偶然ではなく必然だったということだ。
「数多の文献でも、神聖魔法を扱えるのは王家とその一部とみな揃えて記述している。だが──その一部とはなんだ?」
「それは──種族柄魔力が生まれつき高いエルフ族のことを言っているのだろ?」
「あとは、魔法を極め──加護を受けた人が神聖魔法を扱う権利を得るっていう認識だわ」
「しかしながらだ。火属性魔法を極め、加護を得たダグラスは神聖魔法を使えない。雷属性魔法を極め、加護を得たガルドもまた──神聖魔法は使えない。加護を得ているのに、神聖魔法を使えないのは何故だ?」
「それは──加護を得ても俺が神聖魔法を扱う権利がないって神が決めたのだろう。おいザガルトス、お前は何が言いたい」
いや──ザガルトスの提起している問題は矛盾が孕む。
確かに、魔法を極め加護を得たものが神聖魔法を扱う権利を得ると、どの文献にも記されている。
ただ──父上もガルドさんも加護を有してながら神聖魔法は扱えない。
文献に記された通りなら、2人は神聖魔法を扱えてもおかしくないのだ。
「もし──神聖魔法を扱える人間が王家のみだったら? 文献に記される内容が全て嘘だったら?」
「そんなことは有り得ない。何百年も前の文献にだって、同様の記述は存在してる。歴史解釈をねじ曲げれば、わざわざ何故──そんな嘘の記述を全員記さなければならなくなるんだ」
「これだから若造は。少しは賢い人間だと思ったが、所詮は教科書通りの内容でしか解釈を得られないバカだということだ」
え、ちょっとその言い方むかつく。
小さい頃から文献を端から端まで読み漁っては魔法について調べてきたのに、この僕がバカって言われた!
便利な未来のアイテム出してくれる友達はどこですか。
「なら──あなたの見解を聞きたい」
「いいだろう。何故──どの時代でも、みな揃って同じ記述をしたか。それは──そう吹聴されてきたからだ。神聖魔法は魔法を極め加護を得られれば、誰でも扱える特別な魔法だと、そう言い伝えられてきたからだ」
なるほど、要するにラーメンでいう、秘伝のタレ的なやつだな。
神聖魔法は魔法を極め加護を得られれば、誰でも使えるようになると各時代の著名人たちがそう記せば、例え間違った情報でもそれが真実になりうるというわけだ。
だが──実際は、王家の人間でしか神聖魔法は使えず、文献のいう一部の人間という記述は、実際は──エルフなど高い魔力を有する種族を意味するのだ。
でも──どうしてそんな事実を隠すのか?
だって正直──神聖魔法は王家しか使えないって言った方が、使えない側からしたら自分は使えないのだと簡単に諦めがつく。
「しかしながら、裏を返せば──王家になれば神聖魔法を使えるということだ。根拠は無い。ただ──このクーデターを完遂させ、私が玉座に座るのだ!」
何を言い出すのかと思ったら、神聖魔法を理由に自分が玉座に座りたいだけじゃないか。
確かに神聖魔法が王家だけしか扱えないということには一理あるが、王家以外の人間が王になり、神聖魔法を扱えるようになるなんて、そんなの絵空事に過ぎない。
ザガルトスは神聖魔法を使えることに拘ってるんじゃない。自分が玉座に座ることに拘っているのだ。
「私はこの国の王になる男だ!ジェフリー、貴様を必ず殺し、晒し首にした後、家畜のエサにしてやる!」
「行きましょう。結局──自分の欲望をベリアルに利用されていた、憐れな人間です」
「そうじゃな。ザガルトス──非常に残念だ。優秀な君を失うのは心苦しい。ウィルたちは先に行きなさい」
「かしこまりました」
「ダグラス、分かってるな」
「仰せのままに──」
僕たちは先に地下牢を後にした。
階段を登る時に人の叫びが聞こえたが、15年という月日が経った。
長く生かされた方だろう。
「結局──謎なことが増えただけね」
「そうだね。でも──彼が言ったことには一理ある」
「あぁ、実際に俺のおじい様も、魔法を極めていたが神聖魔法は扱えなかった」
「地道に調べていくしかないか、もしくはベリアルに聞くしかないか」
「地獄に返したのに、どうやって聞くのよ」
「どうせまたあっちからコンタクト取ってくるよ。それまでは束の間の平穏ってことで」
「それも悪くはないわね」
とりあえず──僕の疑問点が解消された点といえば、
本当は僕は王家の人間だということ。
アリスが怪しかったのは、弟の僕を裏で守っていたこと。
そして──新たに生まれた疑問。
偉大なる御方とは誰なのか。
何故、神聖魔法の解釈がねじ曲げられ、長年そう言い伝えられてきたのか。
あぁ、退屈しないって良いことだなぁ──




