王都までの道のり 〜騎士団メンバーの紹介〜
俺が村を出て3日たった。移動は馬に乗っている。最初はなかなかコツが掴めず苦戦したが一度乗ってみると意外に乗り心地がよく快適だった。
今日も眩しい太陽を浴びながら移動している。
移動の間にボルスに騎士団のことについて話を聞いていた。
騎士団とは王直属のエリート集団だ。全員が弱い魔物1体なら1人で倒せる位の力はあるらしい。
ボルスは騎士団のメンバーのことを教えてくれた。
1人目は騎士団長ことボルス。
今年で49歳らしく身長は180cm位の見た目は普通のどこにでもいるおっさんだ。
もう引退したいと毎日言ってるが勇者を抜いたら人類の中で最強らしい。
スキル名は剣聖という覚醒スキルだ。覚醒スキルとは通常スキルが一定の条件を満たすと覚醒する。
条件は不明だが偉業を達成したら覚醒する的な感じらしい。ボルスの偉業を聞いたらある村を襲ったゴブリンの群れを一人で殲滅したらしい。20人くらいだったかなーと言っていた。化け物じゃん...
剣聖のスキルは覚醒スキルの中でも強い部類に入る。
効果は3つ。身体能力向上。剣装備時の身体能力大幅向上。
どれくらい上がるかというと向上で約2倍。大幅向上で3倍。
スキルの効果は重複するので剣装備時には本人の身体能力が6倍になるということだ。
残り1つはスキル特殊技らしいが秘密事項のため教えられないらしい。控えめにいって反則である。
2人目は騎士団副団長のアイシャ。美しい黄金色の長い髪を後ろにまとめておりとても凛々しい。
身長は俺と同じ170cm位でスラっとしたスタイルでまるでモデルみたいだ。
金色の瞳は見るもの全てを吸い寄せる美しさを持っている。年齢は..歳の話題をした瞬間背後から殺気を感じたので聞けなかった。多分20半ばくらい?
とても戦える見た目ではないが騎士団ではボルスの次に強いらしい。
スキル名は剣光。これも覚醒スキルだ。
効果は2つ。身体能力向上。剣装備時素早さ超向上。
超向上は5倍上がるらしくスピードだけならボルスよりも速いとのこと。
機動性を活かし相手の急所を正確に狙い敵を倒すスタイルらしい。集団戦はあまり得意ではないがタイマンならボルスも3割くらいは負けるかもなーと言わせるほどの強い。怒らせる行動はしないでおこう...
3人目は俺を襲った男でリーバ。ただの隊員だが実力はかなりのものらしい。
年齢は20。腹立つことに顔はイケメン、長身、身体もいい感じに筋肉が付いておりスタイルよしで非の打ち所がない。ファンクラブもあるらしい...
スキル名は騎士。効果は身体能力向上。身体能力が元々高く戦闘のセンスもあるため他の隊員よりも強いとのこと。
任務のためなら犠牲は問わない考えのためボルスがいつも手を焼いている。
移動中時間があったので今回同行している合計20人の隊員のことも紹介してもらったが人の名前を覚えることが得意では俺は聞き流す程度だったので頭に入ってこなかった。
それよりも3日間何も変わったことが起きない。
スキルを得てからハプニングだらけだった俺の人生だったのにこの3日間は何もない。
魔物に襲われることもなければ変な人が絡んでくるわけでもない。
「なぁボルス。何か面白い話してくれよ」
唐突に無茶ぶりをしてみた。もう暇で暇で仕方ないのだ。
「そうだなぁ…それじゃあ歴代最強と呼び声高い話でもするか?」
勇者の存在は知ってるが田舎の村では詳しい話は知らないので興味津々な俺は目を光らせて何度も頷いた。
よしそれじゃあ。俺も実際見たことは無いんだがと前置きを入れて話し始めた。
「まず見た目は中性的な顔立ちの女性。漆黒の髪を持つ剣の勇者だ」
「歴代最強で女性ってことは勇者は全員女性なのか?」
「いいや?確かに今の勇者は4人中3人が女性だが男の勇者も過去にはいたさ」
「ふーん。それで何がどう強いんだ?」
俺の問いにボルスはニヤっと笑い応えた。
「何人か戦闘を見た奴はいたが全員同じことを言ったらしい。『何も分からない内に魔物の死体の山が転がってた』ってな」
「はぁあ?何だよそれ。早すぎて見えなかったってことか?」
「だから分からねぇんだって。スキルの効果かもしれないしな。まぁ俺なら勝てないとは思うが傷の1つや2つ付けることは出来ると思うがな」
ボルスは不謹慎のことを言って豪快に笑った。
普通怒るはずだが、団員のメンバーが何も言わないのはボルスなら本当にそれ位はすると思ってるからだろう。アイシャ姐さんも何事もないかのように無言だし。
俺が聞いた話では勇者と人間では虎とネコ位の実力差があると聞いてたんだが。
目の前のおっさんは俺が思ってるよりも強いのかもしれない。
「実際に戦ってみないと分からないだろうが、その勇者に怒られても知らねぇぞ」
「その通りだな。だがまぁ..俺がまだ現役でいるうちに一回でいいから手合わせしたいもんだぜ」
「俺も将来的に強くなったら戦ってみてぇな」
「リーバにビビってるようじゃ何年後になるやら…」
「び、ビビってねえわ!あんな奴今からでもボコボコに出来るわ!」
リーバが俺のことを睨んでる気がするが気にしない気にしない。
冷や汗をかきながら強がるので精一杯だった。
するとリーバが後ろから俺に近づいてきた気配がした。
うわー。俺どうなるんだろ…。
「隊長。話してる所すみません。前に怪しい奴が」
リーバが睨んでいたのは俺じゃなく少し先に立っている人物だった。
フード深く被っており顔は見えないが身体の線が細いので女性だろう。
王都周辺の森で比較的安全だが女性1人で歩くには不自然だ。
リーバが1人前に出て、目の前の女性の前で止まる。
「貴様何をしている?」
リーバの短い問いにフードの女も短く答えた。
「黙ってその少年を置いていけ。そうすればお前たち騎士団の命は保証する」
「…お前は我々騎士団を馬鹿にしてるのか?」
リーバは静かに怒った。頭の血管切れそうですけど大丈夫ですか?
「なぁ。止めなくても大丈夫なのか?」
ボルスを見ると真剣な顔で様子を見ていた。
「ああ。こりゃ俺達を殺してでもお前さんを奪おうとしてる連中らしいからな。周りを見ろ」
ボルスに言われ周りを見ると同じフードを被った奴らに周りを囲まれていた。
人数で言えばこちらの倍はいそうだ。
「これって結構ヤバいやつじゃないのか?」
「今まで盗賊に襲われたことは何度かあったが、こりゃ本職の奴らっぽいな。お前ら気を引き締めろよ」
ホルスの一言で騎士団は陣形を組み戦闘体制に入る。
「…やれ」
リーダー格っぽい最初に現れた女性の一言であちらさんも獲物を手に握る。
今にも殺し合いが始まりそうな雰囲気に俺は汗を垂らした。
やっぱ俺のスキルって不運なこと起きるとかそんな感じのスキルなのかもしれない…