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67話

 温泉工事の監督官が王子だということが発覚した

 ってことはつまり、この依頼の複雑さが増した、ということだ・・・


「こんなの、何が原因になるのか・・・

一気に難しくなったなぁ・・・」

「そうなのか?マーク・・・」

「だって、ねぇ?」


 僕はラビヤーと目を合わせる

 ラビヤーも、この依頼の難易度が一気に上がったことを確信している様子だ

 二人で部屋の中のメンバーに説明をする


 王子が関わっている、ということは

 王子や王宮に恨みがある人の犯行

 王子から金をとってやろうと思った

 王子が自分で使った

 などなど・・・

 これには『かもしれない』『可能性がある』という言葉が付け加えられる

 まだはっきりと、王子が原因か断定はできないけどね・・・


 つまり、今回の依頼の原因になりえる人や物事が格段に増えた、ということなのだ

 これはマズい・・・マズすぎる・・・・

 一気にやることが増えた

 聞き取り調査を行う人、見なければならない書類、そしてこのことが明るみになった場合にどんな処罰が下るのか、など

 それに、もし王宮関係だったら、慎重に事を勧めないといけなくなる・・・


「たしか監督官・・・王子ってもう王都に帰ってるんだよね?」

「うむ、一応・・・一通りの仕事が終わって、温泉の営業ができる状態になったからのう」

「それじゃ王子に直接話を聞くこともできないね・・・このままじゃ爺ちゃん、終わってない?」


 祖父ががっくりと肩を落とす

 もし王子が絡んでいるとしたら、彼の調査ができない限り祖父を救うことは、ほぼほぼ無理だろう

 王子からこのことを不問に・・・とか

 それはさすがに願いすぎか

 王子が村に残っていたら、救いはあったのかもしれない

 


「どうすりゃいいんだろうねぇ・・・」

「とりあえず、『王子が関わっていない』ことを前提として、調査するしかありませんね・・・はぁ・・・」


 ラビヤーがため息をつきながらそう提案する

 たしかにそうだ・・・

 今この村にいない王子の調査だなんて、王子と接点のある人から聞き取りすることや、工事の間に王子が住んでいたという僕の実家の空き部屋を調べるくらいしかなさそうだ

 何か残っていればいいんだけど


「じゃあとりあえず王子の件を保留にしたとして・・・

 他に怪しい人はいないかったの?」

「うぅむ・・・」


 爺ちゃんは頭を抱える

 今のところ、監督官ばかりに目を向けていたけど、まだ犯人だって決まったわけじゃないし

 答えられない祖父に代わり、マスターが答えてくれる


「ボクの酒場に来るような工員や役人たちは、皆気のいい奴ばかりだった

 酒に酔って暴れた奴もいるが・・・概ね問題は無かったね

 ただ、酒場に来てない人も結構な人数いたみたいだから、全員を見たわけじゃない」

「私の商店もそんな感じですね~

 ほとんど店に来る外から来た人たちは必要な物を買いに来てただけですし

 怪我をした人とかは症状以外の話もしませんでした

 それに・・・口説いてくる人も、裏がありそうな感じは全くしませんでしたよ~」

「なるほど・・・」


 大多数の工員たちは皆、真面目に働いていたことがわかる

 まぁ王宮からの仕事だから、ミスをしたりで何か重い処罰が下るかもしれないし・・・

 その分の給金は高かったんだろうか?

 聞いてみるか


「工員たちの給料ってどうだったの?やっぱ高かったのかな?」

「うむ、そこは儂らが関わっていたからわかるぞ

 結構な額を出しておった

 王宮からの仕事だから、正確で完璧な仕事を求められていたからの

 村から工事に参加した男たちも日雇いではあるが、一回で二週間は過ごせる金額じゃ

 記録は家に残っておるから、後で見るといい」


 横でうんうんと唸っていた爺ちゃんが復活して答える

 一日の仕事で二週間・・・

 ここが王都だったら破格の金額だけど、王都から離れた田舎の村だから、お金の価値が違うんだよなぁ

 それでも村人たちには魅力的か・・・

 とりあえず金銭関係は、記録を見てからだな、うん



 ・・・うーん

 ここまで、あまり進展が無い

 もっと情報を手に入れられると思っていたんだけどな

 二年ほどの工事だったみたいけど、そこまで工員たちや役人たちと関係を築くようなことは無かったのか・・・?


 すると、今まで黙っていたバルトロ爺さんが口を開く


「子供たちに聞いてみるのも、いいかもしれんの」

「子供たち?」


 いきなり何を言い出すのだろうか


「子供はな、人を見るんじゃ」

「人を?」

「うむ、ここは温泉があるせいか、外から村人以外の者が来るじゃろう?

 じゃが頻繁に来るわけでもない、村外の者は子供の目に新鮮に映るんじゃ

 珍しい服装や知らない武器、はたまた見たことも無い楽器を持つ者だって来たこともある

 しかし最近は工事をやっていたせいか、そんな者は少なかった・・・

 つまり子供たちの目に映るのは工事関係者ばかりなんじゃ」

「な、なるほど・・・」


 外界と遮断された・・・は言いすぎだけど

 この村では新しい事はあまり無い

 それはこの村で育った僕も知っていることだ

 村の外から来た、バルトロ爺さんの楽器の評判を聞いた吟遊詩人や、温泉に湯治に来た冒険者など

 そういう人たちに引っ付いて、いろいろな話を聞いたりしたものである

 そうやって外に憧れをもって、飛び出していく者も多いのだ


「ありがとうバルトロ爺さん」

「うむ・・・そういえばマークよ、最近楽器の手入れはしておるのか?

 放っておくとダメになるぞ」

「う・・・一応週一くらいで掃除はしてるけど、最近忙しくて演奏してないや・・・」

「たまには使ってやれ、腕も鈍るし、儂も作った楽器に触れられないのは寂しい」

「わかったよ、ごめんねバルトロ爺さん」


 久しぶりに会ったからか、ちょっとした説教を貰ってしまった

 王都に帰ったら、楽器に触ろう

 折角だから、誰かに聞かせるのも良いだろうな


「隊長・・・」

「あっごめん!話が逸れちゃったね」


 いかんいかん

 この村にいるとどうも、自分が子供に戻ったような感覚に陥るし、懐かしくて昔のことばかり考えてしまう

 爺ちゃんたちがそうやって接してくるから・・・かもしれないな


「よし、とりあえず夜も遅いし、続きは明日の朝からやろう

 皆ありがとう、そしてお疲れ様、話を聞かせてくれて

 明日以降も聞くことがあるかもだから、その時もよろしく

 ラビヤーも遅くまでありがとうね」


 それぞれ口々に、お互いへ労いの言葉を言い合う

 皆家に帰って寝よう

 このまま朝まで続けても、進展もなさそうだからね



 この場を解散しようと、皆が椅子から立ち上がると同時に、今いる部屋のドアが勢いよく開く

 その場にいた全員がそれに注目する

 ドアから入ってきたのは汗だくのジェイク

 一体何だろう?


「みんな、聞いてくれ・・・奴が死んだ」

「え?」


 僕はその言葉を飲み込めぬまま、その場に立ち尽くしてしまった

続き鋭意執筆中

ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです


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Twitterにて更新のお知らせ等しています

@moongekko01

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