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64話

 ジェイクが気絶している盗賊らしき男・・・もう覆面男と呼ぼうか

 そいつを担いて、夜道を僕とラビヤーを先導する

 もともとは集会所に行って、祖父が集めた信頼のおける人物たちから依頼の詳しい事を聞く予定だった

 まさか覆面男に襲われるとは思ってもいなかったのだ

 こいつがどんな情報を持っているのか

 有益な情報であると嬉しいのだが・・・


 ちなみに覆面男は、漁に使われる網でグルグル巻きにされている

 他にこいつを縛るものなんか無かったからね

 剣で斬り裂かれてはいたが、それは網の格子状になっている細い部分で、それを囲んでいる太い紐は無事だったからだ

 それを何重にもグルグルと覆面男に巻いた

 ちょっと変に絡まったと思って、少し戻そうとしたらもっと絡まって、固結びのようになってしまった

 ・・・まぁ、これなら簡単に逃げられないだろう


 そんな、ジェイクに担がれている、二度も川に落ちた覆面男から、川の水がポタポタと滴っている

 二度も落ちているからか、かなり水分を吸っているみたいだ


「冷てぇなぁ~・・・素っ裸に剥ぐわけにもいかねぇしなぁ・・・」


 ジェイクはぶつぶつと文句を言いながらも、迷うことなく夜道を進んでいく

 王都では魔法道具の街頭がそこらにあった

 だから夜は明かりも無しに出歩けたけど、ここにはそんなものは無い

 今は月の光で照らされた道を外れないように、慎重に歩かねばならない

 先導者がいる分、逸れないようにすればいいだけだけどね

 こんなに暗かったんだなぁ

 この村に住んでいたころは気にも留めていなかったことだ

 そんなことを考えながら、ふと上を見上げる・・・


「おぉ・・・」


 思わず声が漏れる

 さっきまで気にしてはいなかったが、たくさんの星が輝いている

 今住んでいる王都は明るいから、久しぶりにこんな星空を見た

 ・・・ちょっと感動

 ラビヤーも、僕が声を出して空を見上げていたことに気づき、同じように空を見上げた


「うわぁ・・・綺麗ですね・・・」

「うん・・・ニーナたちにも見せたかったなぁ・・・」

「休暇はまだ続きますし、明日教えてあげましょうね」

「そうだねぇ」


 そんな僕たちの会話が聞こえたのか、ジェイクの笑う声が聞こえる


「上を見るのもいいけど、足元に気をつけてしっかりついてこいよ」


 む・・・

 彼の注意はもっともである

 星空を楽しむのは、安心できるところに帰ってからにしよう・・・




「爺様方よ、戻ったぞ」


 ジェイクが村の集会所の扉を開けながら言った


「ジェイク!入り口から急に消えて、家にでも帰ったのかと思ったぞ!

 マークも一緒か!」


 爺ちゃんがこちらに走り寄ってきた

 どうやら心配してくれていたようだ


「まぁ・・・いろいろあったんだ」

「ジェイク?戻ったか」


 彼の父である酒場のマスターもジェイクに気が付き近寄ってきた


「建物の入り口の地面に、昔お前たちに教えた緊急事態を知らせるマークが書かれているのを見つけたんだが・・・

 無事だったか、一体何があった?」

「おう親父、その話は後でマークがするからよ

 先にこいつを、どっか逃げられないところに閉じ込めておきたい」


 ジェイクは担いでいた覆面男を乱暴に降ろす


「った!」


 覆面男が声を出した

 いつの間にか気が付いていたようだ


「お前が起きてたのはとっくに気づいていた

 逃げる素振りも無かったからそのまま担いできたが・・・

 諦めて吐く気になったか?」


 覆面男は舌打ちをしてそっぽを向く

 ジェイクはため息をつくと、床に座る男の太ももを蹴り上げた

 覆面男の顔が痛みで歪む


「おい、どうなんだ?」


 ジェイクがもう一度、覆面男に聞くのだが・・・男は痛みで歯を食いしばり、顔を赤くして震えている

 ひょえー・・・容赦が無い・・・

 またもやジェイクの知らない一面が出てきた・・・


「おいおいジェイク、そんなことは後でやりなさい

 今は爺様たちもいるからな?」

「・・・わかった、とりあえず倉庫にでもぶち込んで、見張っておくわ」


 ジェイクがマスターに叱られた

 奥の方では爺ちゃんが呼んだであろう数人の村人たちが、こちらの様子を窺っている


「ふぅーー・・・悪い親父、頭に血が上ってたわ」


 ジェイクは深呼吸をして、自分を落ち着かせている

 マスターに言われて即座に怒りを抑えることが出来るのもすごいなぁ

 僕がまだ広報部門で働いていたならば、スカウトしてるだろう


 ジェイクの引退理由は聞いていなかったけど、これならまだ全然やっていけそうだよ

 彼も落ち着いたようで、僕を見て言った


「・・・よし、落ち着いた

 さて、俺はこいつを連れて行くが・・・・マーク、こっからはお前の仕事だ

 爺様たちを頼んだぞ」

「分かった、任せて

 ・・・ジェイク、助けに来てくれてありがとう」

「ん」


 ジェイクはこっちを見ずに親指を立て、そのまま覆面男の足を掴んで引きずりながら、建物の奥へと消えていった


 そして僕は残ったメンバーのほうを向く


「・・・じゃあ、さっきまでのことを報告するよ」



「なんと・・・侵入者が・・・

 こんな村を襲っても何もないと、よく言われたんじゃけどなぁ・・・」

「ふん、大方、王様からの依頼で温泉を新しくしたことが知られたんじゃろうて

 工事も長かったし、出入りも激しかったからのう」


 爺ちゃんに意見するのは、この音楽の村の楽器作りを長い間一人で担ってきた『さえずり』の店主

 バルトロ爺さんだ

 僕の初めての楽器もバルトロ爺さんの手製である

 木でできた横笛だったけど、とても丈夫で、初めて買ってもらった7歳の頃から20年近く壊れる様子もない

 王都の自分の家の棚に大事にしまってあり、暇なときには街中で演奏して小銭を稼いだものだ・・・

 バルトロ爺さん、今は弟子の育成に忙しくしているらしい

 楽器作りの大半はもう弟子任せらしいけど、さすがに大事な顧客の楽器だけは作り続けているそうだ

 この話は晩飯の時、婆ちゃんに聞きました


「しかし、盗賊が村に現れたって事は、彼らはもう下見どころじゃ無さそうですね

 そろそろ何かを起こそうとしているのかもしれません・・・

 怪我人が出る予感がします」


 こちらはこの村唯一の薬師

 大体300歳くらいのサキュバス、ミアさんだ

 小さい頃から見た目が変わっていない・・・

 物心ついた辺りで彼女の年齢を聞いたけど『300過ぎたら忘れちゃいました♡』と誤魔化すので、とりあえず300歳くらいって事にしておく

 村を出る前辺りで、なぜサキュバスが薬師をやっているのか聞いたところ、『フェロモンで男を惑わす自分の性質を解明したら、薬を作れるようになった』らしい・・・

 長年生きてるだけあって、彼女の貯えた知識もとんでもないのだ

 うちのギルド長と、いい勝負しそうである


「嫌だなぁ、怪我人だなんて

 僕達は守ってもらえるんですよね?」


 そして最後に情けないセリフを吐いたのは、この村の温泉を代々管理してきた一族の現在の当主

 生まれ変わった温泉施設の前オーナーのサンスケ・テルマエさんだ

 10年ほど前に先代から一族の当主を受け継いだ

 一族と言っても、別に少し人数の多い普通の一家だけどね

 ただし、ここらへんでは見ない顔つきをしている


 サンスケさんの先祖は、遠い東の国からやってきた移民だ

 そのご先祖様が、この村の温泉と当時この村で一番の美女に一目惚れして住み着き、そのままずっと温泉を守ってきた一族なのだ

 最初は温泉の建て替えに反対していたそうだが、王命であること、王宮の監督官からこの先大幅な利益が見込めると聞いて、すぐに意見を変えたそうだ

 実はずっと、建物の老朽化に悩んでいたらしい・・・

 しかし、サンスケさんの父親は最後まで、反対していたそうだ・・・

 素朴な温泉が豪華なリゾートに変わることに耐えられないと訴えていたらしい

 これも全部、婆ちゃんに聞いたことです


「何が起きるのか、今は分かりません

 ですけど、その解決口になるかもしれないので・・・

 この村で起きたいろいろなことを僕たちに教えてください」


 今から僕とラビヤーは、彼らから情報を集めることになる

 この村で一体何が起きているのだろう


 夜明けはまだまだ先である・・・

続き鋭意執筆中

ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです


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Twitterにて更新のお知らせ等しています

@moongekko01

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