62話
盗賊らしき男は剣を構えながら僕たちに迫る
僕とラビヤーは二手に分かれる
ラビヤーは男から見て剣を持った右側、僕は左側に
「ちぃっ!」
僕らが同時に別方向へ避けたので、男は一瞬混乱したようだ
その隙を見てラビヤーが男に蹴りかかる
「ぐおっ!」
男は右腕で剣を持ちながら脇を締めて蹴りを受けとめる
しかし男の体幹が崩れない
結構実力があるようだ
僕はその時、男の左腕に切り傷を見つける
先程ラビヤーが投げたナイフは、男の左腕に当たっていたようだ
結構深めの傷なので、自分でナイフを抜いたのだろう
僕は足元から砂利を拾って、男の傷目掛けて投げつけた
「ぎぃあっ!・・・て、めぇ!!」
男がこちらに振り返る
最初の標的を僕にしたようだ
怒りの表情で僕に突っ込んでくる
「ひゅっ!」
「うわぉっ!」
男の振るう剣を何とか避けた
男はすぐさま次の一撃を振るう
次も避ける
・・・避けても避けても、男は僕を狙い続ける
今は村の中で安心しきっていたから、武器なんてものは持っていない
ラビヤーが持っていたナイフも一本だけだったようで、彼女は男の隙を伺っている
防具も何も無いから、受け止めることができない
男の攻撃を避け続けるしかない!
僕が攻撃を避け続けて、男がイライラしている様子が伺える
奴は何も持っていない無防備な僕がしぶといからか、さっきから剣を当てることを狙っているようで、避け辛くなってきた・・・!
「隊長!」
少し前から男が僕しか見ていなかったから、ラビヤーが離れていたことに気づいていなかった
彼女が男に向かって、何かを投げつけた
「っんだこれはぁっ?!」
男に投げられたのは、川で魚を捕るための網だった
どうやら男の攻撃を避けているうちに、川の近くまで来たようだ
そうか、漁で使われて川の傍に干してあった網を持ってきたのか・・・!
「隊長これをどうぞ」
男が網の中で悶えているうちに彼女に渡されたのは長い棒
僕の身長よりもかなり長い
・・・これ、物干し竿かな?
網を干していたものだろうか
彼女は持っていない
多分一本しかなかったのだろう
「振り回せば距離は取れますよね」
「確かに・・・ありがとう」
ラビヤーにお礼を言ったところで、男が網を剣で切り裂いて脱出した
その表情はいまにも爆発しそうな怒りで満ちていた
しかし僕とラビヤーはここから攻勢に出る・・・!
「うおっ・・・くそっ!」
ぶおんと風を切る音
男が僕の振り回した竿を避ける
当てなくてもいい、奴から距離を取れればいいんだ
男が避けた時を狙ってラビヤーが石を投げる
結構な速度で飛んできた石なのだが、男はそれも避ける
「それくらい当たってくれよ!」
「だぁれが当たるかってんだ!!!」
また竿を振るも当たらない
男は軽快な足取りで避け、少しずつ距離を詰めようとしてくる
焦るな!
今は近寄らせないことだけ考えろ・・・!
男の足元、胴を狙って竿を振るい続ける
・・・物干し竿って結構重いよね
長ければ長いほど重さが増すし、長く持つとさらに重く感じるものだ
やばい、疲れてきた・・・!
「どうやら戦闘はご無沙汰かぁ!?振りがおっせぇぞぉ!!」
「くっ!!」
どうやら僕の疲労を見透かされてしまったようだ
僕は力を振り絞って振るうも、だんだん竿の速度は遅くなってくる
ラビヤーも石を投げ続けるが一向に男には当たらない
「そういえば!隊長のお爺様って!今何してるんでしょうかね?!」
唐突に、ラビヤーが祖父のことを口走る
いきなりなんだ?!
なんのことだろうか
「何、わけのわかんねぇこと、言ってやがる!!」
男が僕の竿を避け、地面の石を蹴り上げた
ラビヤーに向かって飛んだそれは、彼女の額に命中した
「っあぅ!」
「おっ!ラッキー!」
男が標的を僕からラビヤーに変えて、彼女に向き直る
奴がラビヤーに向かったら、僕じゃ追いつけそうにない
・・・考えろ
ラビヤーは急になんでじいちゃんのことを言ったんだ?!
考えろ・・・!
爺ちゃんって・・・?
「・・・っそうか!ラビヤー!」
分かった
彼女の言いたかったことがようやく!
【大音拡声!】
僕は息を吸うと、ラビヤーが耳を塞いで頷いたのを確認する
男は気づいていない
僕は魔法の効果が乗った大声を発した
『たぁすけてくれぇえええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!』
「ぐおぉぉあああ!!!」
「・・・・!!!」
辺りに魔法で大きくした声が響き渡る
ラビヤーは耳を強く抑えてうずくまる
魔力の乗ったその声は木々や僕たちの体をも揺らすほどだった
あまりの声の大きさに、盗賊らしき男は持っていた剣を落として耳を塞ぐ
僕はその隙見逃さなかった
そして男の胴を、物干し竿で横から一気に降り抜いた
「おぶぅ!」
男の横腹に物干し竿がぶつかり、男がそのまま川に落ちる
水音が響く
僕は奴がすぐに起き上がらないのを確認したら、ラビヤーに走り寄った
彼女は額から血流して、それは垂れて横顔を伝っていた
「ラビヤー、大丈夫!?」
「はい・・・ちょっとくらくらしますけど・・・」
くらくらするのは石がぶつかったからなのか、それとも僕の大声のせいなのか
とにかく僕は懐からハンカチを取り出してラビヤーに渡す
本当は濡らして渡したいけど・・・
ザバァッ!
男が川から立ち上がった
「てめぇ・・・!女にハンカチなんか渡して余裕だな・・・!」
男を倒せたわけじゃない
ただ横腹に打撃を受けて、その衝撃で川に落ちただけだった
こっちは疲労困憊の僕と額から血を流すラビヤー
あっちは横腹を押さえてはいるものの、まだまだ余裕がありそうだ
彼女を守りながら戦っても、いずれは斬られるだろう
もうできることは無さそうだ・・・
男が落とした剣を拾いながら言う
「これで俺の勝ちか・・・めんどくせぇ奴らだったぜ」
男がゆっくりと近づいてくる
奴が持った剣が月の光で反射して光る
斬られることは決まったようだ
ラビヤーだけは守り切ろう
僕はラビヤーを抱き寄せ、男に背を向けた
「へっ!庇ったところでよぉ!!!」
男が剣を持ち上げた様子が、月に照らされた影で見えた
僕はラビヤーを抱く腕に力を入れて、目を閉じる
「うおおぉぉぉ!!!!!!」
金属音が辺りに響く
何かがすごい速さで僕の横を通り過ぎた
僕は斬られなかったことに驚き、通り過ぎたものを振り返って確認した
「・・・ジェイク!」
「よぉく頑張った!!!」
剣を受け止めたのは、僕の幼馴染だった
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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