54話
「着いたぁー!!」
ニーナが馬車から降りると一目散に走りだす
向かった先は音楽の村の門
一応『ようこそ音楽の村へ!』なんて看板が立っている
あれを見てテンションが上がっているようだ
とても楽しそうだ
あっまた転んだ
転んでしまったニーナのもとへ3人分の荷物を持って駆けつける
何故3人分なのか
ラビヤーは馬車に酔ってしまったようで、ジェーンに担がれて運ばれてきた
「隊長すみません・・・」
「いいよいいよ、しょうがないさ」
「ジェーンさんもありがとうございます・・・」
「気にすんなって、どっかでしばらく休めば良くなるさ」
ジェーンの気風の良い応答にラビヤーはぎこちない笑顔で返す
途中の砂利道、酷かったからなぁ・・・
初めて村の外に行った時、僕も酔ったよ・・・
「毎度ありがとうございました!また御贔屓に!!」
御者が僕たちに声を掛ける
他の客は途中で皆降りてしまい、残ったのは僕達だけだった
この定期馬車の終点は音楽の村だったので、彼はここで一泊した後、明日の朝に王都へと戻るらしい
そして、その護衛であるジェーンはというと・・・
「で、どこに泊まるんだい?あたしも泊まれるかなぁ?」
僕達と一緒に行動するらしい
護衛の仕事は音楽の村までで、ここで別の護衛と交代する予定だったそうだ
温泉に一度入った後、次の日の便に護衛でなく同乗して帰るつもりだったと道中で聞いた
小遣い稼ぎとたまの贅沢、だったようだ
護衛の仕事では何も起きることが無かったので、暇だった彼女は僕達とずっと話していた
僕達の仕事の詳しいところまでは話さなかったけど、ギルドの事を聞いていた彼女はもっと聞きたいと思い、僕たちの旅行に同行することに決めたそうだ
この旅行が終わったら『牡牛の角』に応募するらしい
あと、ニーナとラビヤーとすごく仲良くなったのも理由の一つだろう
3人で楽しそうに話をしていた
女の子に囲まれて、少し居心地の悪かった僕は御者と喋っていたけどね・・・
「一応僕の実家に泊まる予定だよ」
「ありゃ、あたしが行ってもいいのかい?」
「田舎で家がでかいからさ、ジェーン一人くらいどうってこと無いよ」
「じゃあ・・・お世話になるね!よろしく!」
その後、御者から護衛の代金を貰うジェーンを待ってから、僕の実家のある方へと向かう
久しぶりの実家だ
家族は元気だろうか・・・
歩いているうちに畑のあるエリアに差し掛かる
すると・・・
「婆ぁさぁぁぁぁああああああああああああん!!!!!!!」
畑の方から男性のすごくでかい声が辺りに響いた
ニーナはびっくりしてひっくり返るし、ジェーンはラビヤーを落としてしまった
僕は・・・長年聞いて来たから少しは耐性がある
久しぶりでちょっとびっくりしたけどね
「な、なんだ?!」
ジェーンは腰から剣を抜き臨戦態勢に入る
ラビヤーは耳を抑えてうずくまり、ニーナは背負った荷物が重すぎて起き上がれない
僕はジェーンに剣をしまうように言い
「あれはこの村の名物爺さんだよ」
と、声のした方を指さした
そこには兜を被ったお爺さんが畑の外のお婆さんに向かって手を振っている
安心した僕の同行者たちはそれぞれ体勢を整えた
するとニーナが思い出したようにアッと言った
「もしかしてあのお爺さん、ジャスティさんが言っていたお爺さんですかぁ?」
「うん、合ってるよ、その爺さんだ」
ニーナ、よく覚えていたね
最初の案件の時の証人の一人である戦闘部門のジャスティが話していた『音楽の村の兜を被ったでかい声でお婆さんを呼ぶお爺さん』だ
彼は毎日のようにこれを続けている
なのでこの村の名物となっているのだ
しかも呼ぶのは決まって昼の12時頃と夕方の17時頃
あれが聞こえるのは昼飯の時間と家に帰る時間なので、村人は時報として利用している
「本当にいたんですねぇ・・・」
「うぅ・・・声が大きすぎる・・・」
「びっくりしたけど、面白い爺ちゃんだね」
皆の反応はそれぞれだ
・・・ってそうか、ラビヤーには声が大きすぎるもんな
聴覚保護の魔法をかけてあげよう
【音障壁】
「隊長~・・・ありがとうございます~」
ラビヤーは涙目で僕にお礼を言った
「ニーナとジェーンは?」
「私は大丈夫ですぅ」
「あたしもアレくらいなら平気だよ」
「そっか、了解」
僕はおもむろに、大きな声を出していた老人に近付いた
そして声を掛ける
「爺ちゃんただいま、元気にしてた?」
「ん!!!!!???マークじゃないか!!!!!」
「爺ちゃん音魔法切ってよ、仲間がびっくりしてるから」
「なんだって????!!!!!もっと大きな声で喋れ!!!!!!!!」
【消音!】
僕は祖父に【消音】を掛けた
あの音量ではまともな会話が出来ないからだ
「これで聞こえるでしょ?ただいま爺ちゃん、音魔法は切ってね」
祖父はコクコクと頷いている
被っている兜がぶらぶらと揺れる
サイズが合ってないんだよなぁ・・・
さぁ、仲間たちに祖父を紹介しよう
「これが僕の祖父で、この村の村長のマクシミリアンです」
祖父が皆に向かってピースしている
仲間たちは皆、驚いた顔で固まっていたが、少ししてから大きな声を上げる
「「「えぇ~~~~!!!???」」」
さすがに僕の祖父だとは、誰も思っていなかっただろう
皆を驚かせることが出来たようだ
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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