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53話

 休暇二日目

 僕の故郷、音楽の村に行くための定期馬車に乗るため、朝一番に馬車停留所にやってきた

 少し涼しくなってきたくらいだけど、故郷の方はどうだろうか

 あっちも涼しくなっているだろうか

 それともこちらとあまり変わらないだろうか

 1年か2年ごとにしか帰郷しないから寒暖差まだよくわからないんだよね

 おととしは年越しの後だったから寒かったし、その前に帰った時は真夏だったので川の水が気持ちよかったことしか覚えていない

 丁度いい気温の時に故郷に帰るってあまりないよね


 さて・・・


 ニーナが来ない


 僕がここに着いたのは馬車が出る30分ほど前だ

 さっき停留所にラビヤーがやってきて、朝の挨拶をした

 じきに出発すると、御者が待機している僕らや他の客たちに呼びかける


 まだニーナは来ない

 そういえば、あの子の追放されかけた理由は寝坊とか言ってたな・・・

 このタイミングでかよ!!

 でも、責めてはいけない

 多分、旅行にワクワクして寝付けなかったとか

 そういう理由だろう

 僕だって小さい頃はイベントの前日は寝付けなかった経験がある

 理解はできる・・・

 でも焦るって!!!

 日頃、時間前行動をしてるこっちからすると、来ないんじゃないかってのはメンタルに来るものだ

 ラビヤーもさっきからそわそわして、周りを見渡しているし・・・


 御者が最後の確認を始めた


「あれ?こちらさん三人のはずですよね?」

「ええ、どうやら一人遅れているようで・・・」

「どうします?次の便は明日ですよ」

「どうしますって・・・どうしましょう・・・?」


 思わず聞き返してしまった

 寝坊の可能性を考えていなかったもんで・・・

 さすがに、ニーナを一人置いていくわけにはいかない


「その荷物だと帰省か旅行ですよね?乗らないとなると諦めるか、割高の個人御者を探すしかないですね」


 むう・・・

 ニーナが間に合わなければ、しょうがないよね・・・

 置いていくのは無い

 彼女が来るまで待つか・・・

 他の乗客たちが全員乗り込んで、御者が御者席に座る

 僕とラビヤーが馬車を見送り、御者が馬を走らせようとしたまさにその時


「まってぇえぇえぇえぇ~~~!!!置いてかないでぇぇぇぇ!!!!」


 リュックを背負って涙目のニーナが現れた


 ・・・あ、転んだ




「ニーナが間に合ってよかったよ」


 音楽の村に行く道中、馬車の中での会話

 馬車が出発する前で本当によかった


「しゅみましぇん・・・」

「やっぱり旅行前日だから、眠れなかったとか?」

「えぇ~なんでわかったんですかぁ?!」


 ニーナが大きな声を出す

 他の客がくすくすと笑っている

 遅刻理由が分かりやすい寝坊で良かった

 これならまぁ許せるし・・・

 なにか事件とか起きてなくて、良かったよ


「僕も小さい頃とかよく次の日の予定が楽しみだと眠れなかったよ」

「むぅー!それって私がちっちゃい子みたいじゃないですかぁー!」

「僕から見ればちっちゃい子だよ」

「ニーナは背も低いから、子供に間違われそうですよね」

「・・・よくお菓子屋さんでおまけしてもらえますよぉ」

「もしかしてお使いだと思われてたり・・・」

「むぅー!むぅーー!!」

「あははは!」

「ふふっ」


 ニーナが膨れながら唸る

 彼女のご機嫌を取るために、僕は荷物の中からお菓子を取り出して二人に分ける

 お菓子を貰って少し機嫌が良くなったようだ

 現金な奴め・・・


 その後、休憩まで他愛もない話をして過ごした



「はい、道中は長いですから今のうちにお花摘みとか行ってくださいねー!」


 音楽の村に行くまで半分ほど来たところだった

 午前いっぱいを馬車で過ごす予定だったが、さすがに皆トイレには行きたい

 一応道中の村とかに寄るので、降りる客はそこで降りる

 まだ乗り続ける客はそこで、トイレを借りて済ませる

 道中の茂みなどで済ませてもいいが、定期馬車では安全のためにそういう事はあまりさせない

 トイレするために茂みに行った女性が攫われるなど、よくある話なのである

 そのため、女性客が多い場合は女性の護衛がつくこともある

 今回も女性の護衛だった

 僕は男なのでさっさと済ませたが、同僚二人は女性なので時間もかかる

 僕が同行者を待って暇していると、今回の定期馬車の護衛の女性に話しかけられた


「やぁ、今回の客の『牡牛の角』のギルドの人だね」

「どうもー」

「あたしはジェーンだ、今回の護衛だよ、よろしく」

「マークです、護衛よろしくです

 よく『牡牛の角』だとわかりましたね」

「あー、あたしあんたと前に会ったことあるんだよ

 ギルド員募集のチラシを貰ったんだ」


 そうか、僕が広報部門の仕事をしていた時の事か

 ギルド外の冒険者にギルド勧誘のチラシを渡す仕事はよくあった

 こちらは覚えていないのが、少し申し訳なく感じる


「まーこっちはチラシ貰っただけだからね

 覚えてないのも無理ないさ」

「すみません」

「いーよいーよ、謝ることじゃない

 ところであんた・・・」

「はい?」

「何か依頼でもこなしに行くのかい?

 冒険者じゃないギルド員が王都の外に出てくるのは珍しいからさ」

「あー、僕は帰省ですけど、一緒にいる子たちとの旅行なんです」

「へぇー、旅行ねぇ・・・羨ましいよ」


 ジェーンは唇を尖らせてそう呟く

 ギルド外の冒険者は旅行に行くことは滅多にない

 休むことはあっても、依頼を受けて稼ぐことばかりの毎日だ


「あたしも『牡牛の角』に入れば、気軽に旅行に行けるのかねぇ」

「うちのギルドに興味があれば、前に渡したチラシに書いてあるところに連絡してみてください

 一応試験や面接などありますけど・・・」

「給料は良いの?」

「うーん、仕事の稼ぎ方によりますよね・・・

 今稼げている方なら続けたほうがいいかもしれませんが、給料が下がった人も多いですし・・・

所属となると福利厚生や怪我しても回復魔法を使ってもらえるなど、保障がつきますよ」

「ふくりこうせい・・・ね」


 言葉の意味を分かっているのだろうか・・・?

 なんとなく言ってみたようにしか聞こえない


「マークさん、お待たせしました」


 そんな話をしていたら、ニーナとラビヤーが戻ってきた

 そろそろ出発するようで、御者が客を数えている


「おっと、もう出発か

 いい暇つぶしになったよ、この後もよろしくね」

「ええ、こちらこそ、護衛頼みましたよ」

「ああ、任されよ!」


 ジェーンは犬歯を見せて笑い、護衛の仕事へと戻っていった

 彼女の実力は分からないが、気持ちのいい人である


 信頼して護衛を任せられそうだ

 実力を見ることが出来れば、戦闘部門辺りに紹介してもいいかもなぁ

 いや、何も起きないのが一番だけどね



 そして、その後は何も起きることなく、音楽の村へと到着するのだった

続き鋭意執筆中

ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです


感想 いいね ブックマーク よろしくお願いします

Twitterにて更新のお知らせ等しています

@moongekko01

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