51話
ギルド長の部屋の前までやってきた
ここ数日でまとめた書類を提出するのと休暇を申請するためである
休暇の申請は通常は秘書部門に、隊長の場合はギルド長秘書のキャサリンさんに申請するんだけど、今回は追放部門まるごとの休暇である
3人しかいないけどね
仕事に慣れてきたくらいのタイミングだけど、根を詰めすぎてもいけないと判断した
単に、たまには大きな休みが欲しいってのもある
週一くらいでしか休んでなかったから体も頭も休めれば、次の仕事も頑張れるだろう
さて、そろそろギルド長の部屋に入ろうか
この時ばかりはいつも緊張する
最近彼から威厳を感じなくなってきたけど流石に上司だ
しかもこのギルドのトップ
そんな上司となら、緊張感をもって接するのが丁度いいだろう
僕はギルド長の部屋のドアをノックした
「入りたまえ」
ノックの返事が返ってきたのでドアを開ける
「失礼します、追放部門のマークです」
「うむ、今日は何用かな?」
入ってすぐに用件を聞かれる
彼はこちらを見ることなく書類仕事をしていた
珍しい・・・ってのは失礼だな
今までギルド長に会ったときは、彼は大抵待ち構えていたから
それは多分わざとだろうけど
いつも事前に訪問することを知らせてあったし・・・
今回は休暇の申請もあって僕自らやってきたのだ
「前2件の追放の報告書、追放部門の運営状況をまとめた書類を提出しに来ました」
「ああ、そうだったのか、ではここにおいてくれたまえ」
ギルド長は今見ている書類から目を背けることなく、デスクの隅を指で叩く
とても真剣な眼差しで書類を読んでいる
正直人をからかうことを楽しむおふざけエルフだと思っていたから、この姿はカッコよく見えるぞ
さすがに何の書類を見ているのかは見ないようにして持ってきた書類を置く
盗み見は失礼だし重要なものだったらいけないからね
「他の要件もあるんじゃないのかな?」
「えっ」
書類を置いた途端に彼がこちらを見ながら聞いてきた
いつものにやけ顔で
尊敬しかけたのに台無しである
そしていつも通り考えや動きを読まれてるのかな
「あー、追放部門全体で休暇の申請をしようと思いまして」
「だろうね、書類の提出だけならばキャサリンに渡せばいいからね」
はい、読まれてます
あるいは直属の部下とやらにまた、こちらを探らせたんだろうか・・・
姪御さんだっけ
いつかニヤニヤ顔で読まされた報告書に載っていた
これだけ大きなギルドを運営してるんだ
身内だって只者じゃないに決まっている
「休暇か・・・私も久しく取ってないなぁ」
ギルド長は窓を見ながら黄昏るように呟いた
大手ギルドでトップを張っていると忙しいんだろうなぁ・・・
「いいぞ、許可する
何日くらい必要なんだ?」
あっさり許可が下りた
ギースさんに聞いていた通りだ
福利厚生はとことん厚いなこのギルド
「1週間を予定しております」
「そうか・・・もう少し長くてもいいんだぞ?」
「いえ、さすがに4件しか片付けていないので・・・」
「それだけでもこちらは仕事を評価しているというのに・・・」
ギルド長はちょっと不満げである
・・・評価してるって言った?
褒められるとは思わなかった
うれしい
「きつい仕事を頼んだからな、君たちがそれだけでいいと言うならこちらは了承する」
「ありがとうございます」
こちらを理解するようなことまで言ってくれる
これが理想の上司か・・・
僕も部下たちにこういうことを言えるようになりたいものだ
「ところで長い休暇を取って何をするんだ?故郷にでも帰るのか?」
「さすがにそこまでは決めてません・・・多分普通の休みの延長になるかと・・・」
「ふむ?帰省か旅行に行くなら旅費くらい出すぞ?」
「え?」
今ギルド長なんて言った?
旅費が出る?
「多分この休暇はリフレッシュも兼ねているのだろう?
ならば旅行にでも行けばいいさ
うちのギルドでは部門旅行等の旅費は出すことになっているんだ
君の故郷は音楽の村だったな?そこなら温泉もあるだろうし存分に英気を養ってこい」
まさかの好待遇である
給料も上がったうえに旅行費までも出るだなんて・・・
でも、さすがに独断で旅行を決めるわけにはいかない
「では、部門に戻って部下と相談してみます」
「ああ、しっかりと休んで来い
休暇が伸びる場合は魔法通信鳩でも飛ばしたまえ」
「ありがとうございます!」
まさかのまさかだった
旅費が出るなら二人に旅行を提案してみよう
ギルド長が言っていたように、僕の故郷の音楽の村なら温泉がある
リフレッシュになるし親睦も深められそうだ
この朗報を急いで戻りニーナとラビヤーに伝えよう
僕は小走りで追放部門へと帰っていった
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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