50話
次はカウンセリングである
カウンセリングと言っても、そこまでしっかりしたものではなく、「ちょっとお話ししようか」くらいのものだ
でも、僕は二人の上司だ
上司と一対一での『お話』なんて緊張するよね
現に、二人とも話し始めはガチガチだった
これはこの面談について深く考えていなかった僕が悪い
次にカウンセリングを行う時は第三者を立てよう
二人に聞いたのは仕事をやってみてどうたったか、きつかったことは無いか
給料に満足しているか、この仕事を続けたいか
今後の仕事で起こりえる何かにどう対処するか、などだ
前四つの質問は二人へ
最後の質問はラビヤーだけに聞いた
ニーナは主に事務仕事だからかな、そこまで大きな事件に出会うことは無いだろうと思ったから聞かなかった
僕は購買部門のレストランの隣に併設されている小さなカフェにニーナを呼び出した
普段はコーヒーやお茶を入り口にあるカウンターで買って部屋に戻る人ばかりなので、カフェスペースにはあまり長居する人はいない
ちょっと『お話』することが出来る、いい場所である
「じゃあニーナ、お話ししようか」
「はっ、はっ、はいですぅ!」
「あはは、そんなん緊張しなくてもいいよ
ちょっと聞きたいことあるくらいだからさ」
ここまで緊張されるとこっちは逆に安心するなぁ
そして仕事についての話をする前に彼女の緊張をほぐすため、ケーキセットを彼女に注文して、お茶を飲みながらいろいろな話をした
休日何をしているかから始まって、よく食べるお菓子やお昼ご飯、そこから出かけるときは何処へ行くかなど
友人や家族の話をするときのニーナはとても楽しそうだった
彼女の緊張がほぐれたようなので仕事について聞いてみた
ニーナは、この仕事をしてみて前の仕事とはそこまで変わったことが無いし部屋の掃除等もみんなでやるので楽しい
他の部門に派遣されることも無いので気を使わないから楽だ
書類仕事を一人で行うことがあるときは寂しいくらいで苦に感じない
給料は前より上がったので感謝している
この仕事は楽しいから続けたい
と答えてくれた
確かにニーナを一人で部屋に残して僕達が出ていくことが多い
なにか一人でできる気晴らしとか考えようかな
ぬいぐるみや花でも飾れば寂しくないだろうか・・・とか考えた
一通り聞きたいことを聞けたのでニーナとラビヤーに交代してもらう
「じゃあ次はラビヤーの番だね、よろしく」
「・・・はい、よろしくお願いします」
ニーナに呼ばれてきたラビヤーもとても緊張していた
これを始める前に「ちょっと二人に聞きたいことあるから個別にお話ししようか」なんて言っておいたんだけど、言わなければよかったなぁ
ニーナとの話が予想以上に長引いたので、その間そわそわしていたとラビヤー自身が言っていた
彼女もニーナと同じように個人的な事を先に話した
彼女は前の職場の事を話す時、饒舌になった
斥候部門の仕事は好きだったし同僚もとても良くしてくれていたそうだ
元上司のハイムリッヒさんには、変な感じで追放部門行きを宣告されたからか、少し恨みがあると笑って話していた
関係ない話にだいぶ時間を使ってしまったが、仕事の話に切り替えた
ラビヤーは、前の仕事と違うので最初は戸惑ったが慣れてくると戦闘も無いので気を張らなくて良い
でも対象に気付かれないようにすることは緊張する
給料は少し下がったけど必要経費を多く貰えている分、自己負担が無いのが良い
新しい装備が使えて嬉しい
この仕事は周りに迷惑をかけることも無いので今後も続けたい
と答えた
そして最後の質問にはかなり悩んでいた
まぁちょっと抽象的過ぎる質問だったかな
何も考えずにした質問だったけど、確かにこれは答えるのが難しい
ラビヤーはうんうん唸った後に、ブロアの案件であった臭い等は対処できるようマスク等を買うなどする
身の危険がある出来事が起きた場合には対処できない時は逃げると答えた
僕は難しい質問をしたことを謝り、回答をしてくれたことに感謝した
こんな難しい質問に答えられただけでも良しとしよう
僕は斥候をしたことが無いから、投げやりというわけではないが臨機応変に対応してもらうこととしよう・・・
二人と『お話』が終わった後、少し遅れて僕は部屋に帰った
ドアを開けるとそこには、メガネをかけて僕を待ち受ける、ニーナとラビヤーがいた
「そちらへお座りください」
ニーナが珍しく語尾も伸ばさずに、丁寧に僕を応接用のソファへ案内する
緊張させて『お話』をした復讐だろうか・・・
ニーナはノリノリだけどラビヤーは少し恥ずかしそうだし
思わず笑みがこぼれる
「どうかなさいました?」
「あっいえ、何でもないです」
こんな状況笑うなって言うほうが無理だろう!
僕は大人しくソファに座った
二人は先ほど僕がやった『お話』のようにいろいろなことを聞いてきた
休みの時は何をしているのか、友人はいるのか、最近食べて美味しかったお昼ご飯、最近コーヒーを飲まずに紅茶ばかり飲んでいること、出身の音楽の村について、そして恋人はいるか・・・など
友達はいるか・・・って・・・
友達いなさそうに見えたんだろうか
・・・ぶっちゃけ友達らしい友達は王都にはいません
仲のいい人はみんなギルド員だからだ・・・
同僚から友達に変わるタイミングって難しいよねって話です
友人と呼べるのは地元に残してきたからなぁ
ちなみに恋人はいません
作る暇がない・・・って言いたいんだけど、正直出会いが無いって言ったほうがいい
仕事が終わればすぐに家に帰る毎日です・・・はい・・・
昔は広報部門であるアンジーが猫人だとカミングアウトする前、彼女と一緒に暮らしていたので家に帰って構っていたくらいが趣味だった
それも1週間くらいだったけどね
でかい猫だと思ってたら猫人だったなんて・・・
あんなに小さな猫人はそういないだろう
今は趣味と言えるのは弦楽器くらいだろう
音楽の村出身なのでそれなりに弾ける
広報部門の時には客引きで良く弾いたもんだった
・・・昔話だと僕も饒舌だって?
3人で笑い合った
その後、仕事の話を聞かれた
僕が二人にした質問以外に給料の事なども・・・
二人は僕が給料に釣られて追放部門の隊長を引き受けたことを元上司の隊長達に聞いていたようだった
金に釣られてってなんか恥ずかしいな・・・
でも給料は本当に3倍になったどころか3.5倍になった話をしたら二人ともとても驚いていた
隊長職は追加で手当てがついていたのだ
これは部下にご飯を奢ったりして指揮を上げたりするための費用も含まれているかららしい
確かに、僕がよくお菓子や飲み物を買ってきたり、お昼を奢っているので納得してくれました
他の質問には無難な答えしか出来なかった
ぶっちゃけ高い給料のためならキツい仕事でも耐えられるからね
今のところ使い道が無いんだけど・・・
モチベーションがあるから働けますってだけなんです
お話が終わってお茶を飲みながら三人で一息つく
済んだ4件の追放でどこがきつかったとか、こうすればよかったとか、いろいろ話しながら・・・
話しているうちに思い出したことがあった
「まとめた情報をギルド長に渡しに行ってないや」
休暇を貰う事にしていたけど何日から貰うとか言って無かったっけ
申請すれば割と簡単に許可が出ると、以前ギースさんに聞いたことがあるから、ついでにいろいろ聞いてこよう
僕はここ数日でまとめた書類も持って、ギルド長のところへ向かうのだった
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
感想 いいね ブックマーク よろしくお願いします
Twitterにて更新のお知らせ等しています
@moongekko01




