41話
僕たちがこの空間・・・部屋?に入ってきたのに全く気づいておらず、ドワーフは笑いながらハンマーを振り下ろしている
ここはなんだろう
鍛冶部門の部屋なのだろうか
炉、水場、金床など、壁にも必要な道具がいくつか引っ掛けてある
火事場であることは間違いない
だがもし別の場所に連れていかれているとしたら?
この空間が解けたころには知らない土地だったら?
そんな不安が僕の脳内に駆け巡る
それが表情に出ていたのだろう
ギースさんが僕の肩に手を置き目配せをくれる
僕を見た後、笑っているドワーフ
落ち着いて、仕事をしろって事か
よし・・・
まずは声を掛けようかな
「あのー?すみません、スミスさんですか?」
「げひゃひゃひゃ!うっほほほほほ!!」
「あっダメだ話通じなさそう」
っていうか心くじけそう
今まで広報部門、追放部門と仕事をしてきたけど皆割と話は通じてたし・・・
全く話通じないのは初めての体験である
くそ、もう一回だ
「すみませーん!あなたはスミスさんですか?!」
「やぱやぱぱぱぱ!!けころろろろろ!!!ひぃーひひひひひひ!」
「生き物の笑い声じゃないよぉ!!!」
「かろうじて最後のは人っぽいけど?」
エレノアさんも思わず突っ込んでしまうほどだ
いやそういう問題じゃないんですけどね?!
「これ・・・手を出していいものなんですかね?こっちに興味が来たら、急に襲われそうな予感しかしないんですけど!!」
「うーん、こいつぁ・・・混乱花を吸った奴の症状に似てるなぁ」
今まで笑っているドワーフの様子を黙って観察していたギースさんが口を開いた
混乱花
花粉に幻覚や興奮作用があり、それがとても強いものなのだ
数年に一度大量発生して集団幻覚事件など引き起こすやばい花である
「混乱花ですか?だったら回復魔法で治せますよね?」
「でもなーんか違う気がするんだよなぁ」
「いや多分そうですって!間違って無いですって!僕回復時部門に行って治せそうな人連れてきますね!」
「それか、呪われてるかだな」
「あぁ!」
僕がこの場から逃げ出そうとした時、エレノアさんが大きな声を上げる
「そういえばちょっと前に購買部門に呪いの品が間違えて入荷されたって聞いたわ」
「どんな間違いなんですか?!」
間違って仕入れるものでも、出荷する物でもないだろ!!
どんな取引すればそんなものが買えるんだ!
「貴方たち追放部門が一人購買部門から追放したでしょ?
そのせいでゴタゴタがあって、本来教会に浄化してもらうはずのものがこっちに届いたって聞いたんだけど」
「確かに元の能力が高い販売員を一人追放しましたけど・・・
それだけでそこまでの影響があるもんなんですかね
それに・・・」
「それになんだ?」
「それにスミスの素材の横領はその人を追放するずっと前から起きていたんですよ?
日付けが合わないんです」
呪いの品が何なのかわからないが、スミスはずっと前から貴重な素材を盗んで剣を打っていた
笑っているドワーフがスミスであるとして・・・
今のスミスの様子はどう考えても呪われているようにしか見えない
「もしかして彼・・・多分スミスですけど
スミスは前から横領はしていて、呪われてそれが悪化したとか・・・
考えられますかね?」
これで合っていて欲しい
僕のそこまで賢くない頭はこんな回答しか出せないのだ
「まぁ・・・欲望を爆発させる呪いとかあるし・・・合ってるんじゃないかしら?」
エレノアさんの回答もふわっふわだぁ
でも呪いの専門家でもないわけだし、こんな訳の分からない状況だから推測でもいいんじゃないだろうか・・・
「おい、呪いの品ってアレか?」
僕とエレノアさんに再び声をかけてくるギースさん
ギースさんはずっとスミスから目を離していないようだった
戦闘部門の隊長は油断もせずしっかりと対象を観察していたのだ
僕たちに危険が及ばないように・・・
ちょっと嬉しい
ギースさんの指差す先は笑っているドワーフの首元
怪しく光る宝石のついたネックレスがゆらゆらと揺れている
「あー呪いの品ってネックレスだったのね・・・
確かに購買部門ではたまにアクセサリーも仕入れているし、間違って入ることもありそうだわ
現に私の今着けてるこの指輪も購買で安く売ってたやつよ
ほら、かわいいでしょ?」
そう言って指輪を見せびらかしてくるエレノアさん
その指には小さなピンクの宝石の付いた指輪がきらりと光る
確かに若い女の子が好みそうな品である
魔法部門の隊長がこんなかわいい指輪を着けているとは
ってか魔法の品じゃないんだなぁ・・・
高名な魔法使いは魔法の封じ込められた指輪や首飾りをしてるって昔読んだ本に書いてあったのに・・・
いかんいかん、別の事考えてた
とりあえず、あのネックレスを壊すか奪うかすればスミスは落ち着くだろうか
「ギースさん、あのネックレスどうにかできますか?」
「暴れなければ簡単だが・・・どうなるかな?」
「暴れた場合は仕方ありません、殴って落ち着かせましょう
僕もうここから出たいですし・・・」
「それが本音だろ」
「私はどうする?魔法ぶつけたらあの人ひとたまりもなさそうだけど・・・」
「何か動きを止める魔法は無いですか?体を凍らせるとか、水で足元を滑らせるとか」
「それが良さそうね、でもあなた達に当てないような魔法にしないといけないわ」
「僕も行くんですか?ギースさんだけで・・・」
「俺がもし奴を羽交い絞めにしたら、誰がネックレスを外すんだ?殴って気絶もしなかったら俺一人じゃ上手くいかないかもしれないぞ」
やっぱ何もしないのはダメだよなぁ・・・
覚悟を決めよう
「僕の得意なのは音の魔法です!暴れだしたりしたら音で気を引けるように頑張ります!」
「おう、いいぞ!俺は殴る!蹴る!剣でぶった切るのが得意だ!さすがに剣は使わねえが、軽く怪我くらいはさせると思う!」
「私の得意なのは炎の魔法よ、でも今回は止めておきましょう
なるべく足止め出来る魔法を使うから、射線に入ったりしないよう気をつけなさい!」
戦闘準備は整った
スミスが暴れるかどうかわからないけど、彼の首元からネックレスを奪おう
それで落ち着いてくれるといいんだけど
一心不乱にハンマーを振り下ろすドワーフのもとに、僕とギースさんは近づいていった
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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