35話
追放者の調査報告書
ステーレン 元戦闘部門遠征隊チーフ 現在無職 旅人
追放の翌日に王都を出立
三日後には隣の国の港町へたどり着く
酒場で酒を呑むも1杯だけ飲むと宿へ入る
翌日街を我が国とは反対方向へ発つ
この町で接触したものは入町審査官、警備隊員、市場の店主(乾物屋)、酒場の店員、宿屋の女将のみ
ギルド長の宣告通り我が国へは戻らぬようなので調査を打ち切る
ブロア 開発部門 ポーション開発者 継続雇用
追放されなかったため開発部門に残る
開発部門のギルド員との関係悪化の恐れ、及び継続が懸念されたが問題は起こらず
1週間開発の様子を調査
『臭い爆発するポーション』は現在開発していない模様
殺菌剤の開発もブロアは外される
殺菌剤の開発を押し付けた彼女の先輩ギルド員は二カ月の減給処分
開発部門隊長カミーラは管理不足として3か月の減給処分
ブロアはポーションに魔力を込めると効果が増すという発見について増給
1週間の調査が終了し問題が無かったので調査を打ち切る
次はアントンの調査を致します
2週間後には結果を報告できるでしょう
P.S. 叔父上、エルフの里に帰るときお土産を買うのでお小遣いが欲しいです
お土産を送る転送魔方陣も用意してください
なお、里長は手紙にて王都の酒50本をご所望とのことです
ですが父には酒とジュースを20本ずつで良いでしょう
酔うとめんどくさいので
ギルド長専属調査員兼可愛い姪っ子より
「ギルド長・・・これは・・・?」
アントンの追放が終わったので解散となった
ギルド長から僕だけ残るように言われる
アントンはマイルズさんに連れられて部屋を出ていった
僕はニーナとラビヤーに先に戻るように伝えた
そして見せられたのがこの書類である
ギルド長はニヤニヤと笑みをこぼしながらも僕の様子を窺う
「読んでみてどうかね?」
僕の感想を待っているようだった
いや、追放の話し合い後の彼らの情報を貰えるのは嬉しいんだけどさ
下に書いてあるのはどう考えても僕に見せるものじゃないでしょ!
なんか重要そうで僕が知ってもいいのかわからないこととかも書いてあるし!
「・・・僕らの仕事の結果が見れたのは嬉しいです」
僕はなんとか無難な答えを絞り出した
(なんだ、反応が薄いな)
ギルド長がとても聞こえないような声で悪態をつく
僕、音の魔法を得意としてる分耳がいいんですよ・・・
言いたかったけど飲み込んだ
ギルド長はため息をついた後続ける
「これからも追放した者の調査は行うつもりだ
君たちは追放することだけを仕事にしてくれたらいい
今後も期待している
では、仕事を続けてくれたまえ」
「わかりました、ご期待に応えられるよう努力致します」
ギルド長に一礼した後、僕は部屋を出ていこうとする
ドアに手をかけた時にギルド長に声を掛けられた
「そうだ、酒とジュースを20本ずつ買いたいんだが、いい店を知らないか?」
と、また不敵な笑みで・・・
まだ僕に面白いリアクションを期待しているのだろうか
人をからかうのがとことん好きな人だ
「・・・購買部門のおススメを買うと良いんじゃないでしょうか」
またしても面白いことなど言えずに無難な答えしか言えなかった
ギルド長がまた、ため息をついた後手をヒラヒラとさせたので
僕はそのまま会議室を後にした
真面目に仕事してるんだから面白いリアクションなんて取れないし、からかわないで欲しい
僕は釈然としない気持ちで追放部門の部屋へと帰っていった
2日後・・・
アントンの調査内容を書類にまとめたり、調査にかかった経費などをまとめたりしていた仕事が大体片付いた
アントンは昨日、家族を連れてエルフの里へと発った
戦闘部門の護衛を数人連れて
発つ前に親子三人で僕らの部屋にも挨拶に来てくれた
・・・右目の上に青あざを作って
どうやら奥さんにがっつり絞られたようだった
綺麗な奥さんだったが、美人な分、怒ると怖いんだろうな・・・と予想できる
娘さんも薬草の入った特殊なマスクのようなものを付けて僕らに頭を下げていた
あのマスクにもかなり金が掛かっていたのだろう
まさか歩いてここまで来るとは思ってもいなかったが・・・
小さい子が健気にも父の起こした過ちを謝るとは
彼の追放をした側の人間として、かなり複雑な気持ちである
・・・願わくば、あの子の病気がすぐに良くなりますように
3件の追放案件が終わり、僕らは仕事の達成感と疲労感で少しだらだらとしていた
この3件の仕事は設立してひと月ほどの部門にしては出来たほうなんじゃないかと自負している
一度、休暇を取っても良いだろうか
上がった給料分は働いたんじゃないかなぁ
そんなことをぼんやりと考えていたら部屋のドアがいきなりでかい音を立てた
ドドォン!
しかしドアは大きな音を出しただけで開かず、壊れることも無かった
ギースさんの蹴りには耐えるドアが無い、と前に購買部門で言われたけどまぁまぁな耐久力のドアを経費で落とせていたのだ
しかし、うちの部屋のドアにはみんな何か恨みでもあるのだろうか・・・
「いってぇなちくしょう!!なんだこの戸は!!!」
ドアに衝撃を与えた人物が、そのドアの前で悪態をついているのが聞こえた
ニーナがその声に身を震わせている
・・・仕方ない、暴れられても面倒だしさっさと部屋に引き入れよう
僕は扉に向かう
「今開きますから、扉に攻撃しないでくださいねー」
そう言いつつドアを開くが誰もいない
じゃあさっきの騒ぎは誰だったんだろう
遠くから髭の生えた男がすごい速度で走ってくる
僕は思わずドアを閉める
ドォーーーーーーーーン!!!
閉めたドアに髭男がそのままぶつかってしまったようだった
しかし扉はびくともしなかった
いい買い物ができたようだ
ドアの性能に満足しつつ、ドアを開きぶつかった人物に声をかける
「ドアを壊そうとしないでくださいよ?ゴブニュさん」
「はっ!生意気にもこの儂を拒むドアなんぞに気を遣うか!」
ぶつけた肩を押さえながらもすぐに立ち上がったのは
鍛冶部門の隊長のドワーフのゴブニュさん
人族女性よりも小さな身長ながらも、筋肉量は通常の人族男性の何倍もある種族だ
「今日は何の用ですか?ドアを壊しに来たのでは無いでしょう?」
「いつまで経ってもヤツのことを追放しないからな!
早く奴を追い出してくれ!」
ゴブニュさんはドアに恨みがあるわけではなく、ただ仕事の進捗に文句を言いに来たようだった
前の面接では名前と役職、部門の様子、仕事について、そして追放したいものがいるかくらいしか聞いていなかったし・・・
「こちらとしてもギルドに重要な案件から先に片付けていたので遅れてしまって申し訳ありません」
とりあえず形だけでも謝っておこう
彼の気が済めばいいんだが
「フン!まぁ次のところは儂のとこだからな!」
どうやら懐柔に成功したようだった
「スミスのせいで貴重な素材が尽きる前に早くしてくれ!」
『スミス』
それが次の追放対象で、鍛冶部門の素材を枯渇寸前まで追い込んだ人物の名前だった
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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