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33話

 思いがけない人物が追放部門に来訪して5日後

 僕たちは会議室に集まる

 ギルド長と購買部門の隊長マイルズさん、そしてアントンを呼び出した


「今からアントンの追放についての話をします」

「なっ」


 マイルズさんが驚いている

 過去2回ではギルド長の一言から話を始めていた

 マイルズさんは数日前に、今日の話し合いに備えて過去の追放の調査記録と結果報告書を事前に読みに来ていた

 いきなり僕が過去2回と違うことをやりだして、驚いたのだろう

 そして、アントンに追放を宣告するのではなく、ただ『追放の件』と言ったこと


「アントンさん、まずあなたに確認したいことがあります」

「はい」

「貴方は横領をしましたか?」


 これも前の2件の追放案件でやらなかったこと

 いきなり本題に入ったのだ

 マイルズさんの困惑はまだ続いているようで固まったまま動かない

 そしてアントンが答える


「はい、私は横領を行いました」


 アントンはあっさり横領を認めた

 本来だったら、ここで追放をして終わりだろう

 しかし、この件は思っていたよりも複雑だった

 僕はアントンに質問を続ける


「なぜ横領をしたんですか?」

「娘の治療費のためです、そしてもう一つ・・・


 ある男に脅されていたからです」


 この話は5日前に遡る




 5日前


 追放部門の扉がノックされたので僕は「どうぞ」と言い扉の前にいる人物に入ることを許可する


「失礼します」

「えっ?!」


 入ってきたのはなんと今回の調査対象のアントンだった

 まさか彼を調べていることが知れてしまったのか?

 僕たちが困惑していると彼が口を開く


「私は追放対象となっているはずです

 ですが、その前にどうか、話を聞いていただけませんか?」


 アントンが腰を90度に曲げて頭を下げる

 僕たちの困惑は続く

 アントンが頭を下げたまま動かなくなってしまった

 追放の調査対象が乗り込んでくるとは思ってもいなかったのだ

 とりあえずこの状況を整理したいので


「・・・わかりました、話を聞きます

 こちらにお掛けください」


 僕はアントンに座るよう促した

 一息ついてからアントンが話を始める


「実は私・・・横領をしてるんです」


 いきなり調査対象が白状しだした

 もう訳が分からん

 誰かこの状況を説明してくれ

 ニーナとラビヤーも口を開けたまま動かないし

 ・・・とりあえず話を最後まで聞こう


「横領、ですか?」

「はい・・・こちらは追放部門ですよね?

 ギルドにとって悪い、いらない人物を追放するという」

「え、ええ・・・一応そうなっています」

「私の横領がもしもバレてしまっているんだとしたら、いずれ追放されると思ってここに来たんです

 まだ私はお金を稼がなくてはなりませんから・・・」


 ・・・なるほど

 アントンに調査のことがバレたのではなく、追放されたくなくて自分からここに来たのか

 釈明・・・罪悪感からなのだろうか・・・


「では、詳しくお話しいただけますか?嘘偽りなく、お願いします」


 僕はアントンにしっかりと頭を下げて頼む

 こちらもしっかりと話を聞くぞ、という態度を示したのだ


「わかりました、嘘偽りなくすべてお話しします」


 そうして、アントンは横領に至った経緯をゆっくりと説明しだした




 自分の経営する店が潰れて一週間で、私は家族を養うために働きに出ました

 ここは王都ですから仕事はすぐに見つかりました

 最初に就いたのは元取引先の荷運びでした

 自分の店が潰れた時も最後まで取引をして下さっていて、潰れた後にすぐに雇っていただけました

 しかし、体力が続かずそこはひと月で辞めてしまいました


 次に就いたのはこのギルド『牡牛の角』からさほど遠くないところにある道具屋でした

 そこは老夫婦が経営していて、店主が腰を痛めたので代わりの店番として雇われたのです

 二カ月ほど働いた後、店主が復帰するとのことで仕事が無くなることに焦っていたところ、タイミングよく『牡牛の角』の購買部門の販売員募集の広告を見つけ、ここで働くに至りました


 ・・・一年前の事です

 一週間の休暇を貰い、家族を連れて王都の西にある湖の街の宿に旅行に行きました

 そこでは楽しく過ごしていたのですが五日目に娘のルリが迷子になってしまいました

 娘は仕事で忙しくしていた私にプレゼントを贈りたいと街の外にある花畑に花輪を作りに行っていたのです


 そこでルリがスライムに襲われました

 見つけたのは通りがかった冒険者でした

 冒険者が見つけた時にはルリは頭をすっぽりとスライムに覆われて意識を失っていました

 冒険者はすぐさまスライムを引きはがして治療してくれましたが、その時にはもうスライムが気管に入り込んでいたらしく、ルリはスライム肺炎となってしまったのです


 そして私は娘の治療のためにと、より一層精を出して働いていたのですが・・・

 治療費が私の給料では賄いきれなくなってしまったのです


 私はギルドの販売員の休みの日も働くために仕事を探しました


 そこで昔の仕事仲間のダイスと出会ったのです

 ダイスは私に仕事を紹介してくれました

 彼が今務めている、そして私の昔の仕事場でもあった『王都良品』です

『王都良品』の雇い主は私を歓迎してくれました

 しかし、そこでの給料でも必要な金額には届きませんでした

 娘の容体は一向に良くならなく、いつ体調を崩してもおかしくはありませんでした

 妻は娘にかかりきりで私一人で家族を養っていたのですが、日々の食事もままならなくなってしまったのです

 少しでも金を稼げる仕事は無いかと私は焦っていました


 その時、ダイスが新しい仕事を私に提案してきました


 それは『牡牛の角』の購買部門での横領でした


 久しぶりに会った彼は店の仕事の息抜きにギャンブルをしていたのですが、かなりはまってしまい借金のある生活から抜け出せなくなっていました

 そこで金貸しから裏の仕事を紹介されていたのです


 それは王都の裏路地にある買取屋に訳アリのアイテムを売る仕事でした

 少しくらい傷があっても気にしない人物に武器や防具、アイテム、はたまた家具などなんでも売る仕事でした

 ダイスは『王都良品』で売れ残って廃棄になるはずのアイテムやゴミ捨て場から拾ったアイテムをそこに売っていましたが、それでも借金をすべて返しきれていませんでした

 その時、金を稼ぐのに必死な私に久しぶりに出会ったのです

 そうして彼の『仕事』に誘われました


 私は彼の誘いに乗りました

 娘の治療費や家族の食事代、それに王都の税金など

 私が倒れてしまったりでもしたら終わってしまうと思ったからです


 初めは購買部門での破損品や賞味期限が切れて廃棄になるものを盗んでいました

 盗んだ食べ物は家族の食事に、破損品などはダイスを通して買取屋に流れていきました

 そうして横領をし始めて半年ほど経った頃です

 借金がかなり軽くなったダイスがまたギャンブルにのめり込み始めました

 彼は大勝ちした日には酒を浴びるように飲んでいたのです

 しかし賭博場で酒に酔い問題を起こした彼が捕まってしまいました

 まだ娘の治療が終わっていなくて、さらに私は横領したものを買取屋に流す手段を知りませんでした

 そこで、事故報告書を偽造して高価なものを盗み、知り合いの店に売りました

 その金をダイスの保釈金へと充てたのです


 ダイスは最初こそ私に感謝していましたが、ギャンブルはやめませんでした

 そしてまた借金を作った彼は私に肩代わりをさせようとしたのです

 彼の保釈金は私が事故報告書を偽造してまで作った金でした

 彼はまた偽造して金を作るように言ったのです

 私は出来ないと断りました


 彼は


「購買部門にバラされたくなければ続けろ、娘の治療はまだ終わっていないだろう?」


 と言ったのです


 そうしてダイスの借金返済と娘の治療費、家族の生活費のための横領はエスカレートしていきました


 横領を続けてしばらく経ってのことです

 ギルドで追放部門の設立を知りました

 私はそれを知っても横領を続けていましたが、家族を連れて今の環境から逃げ出す算段を始めました

 さらに金を作って外国へと逃げて娘の治療と新しい生活の事ばかり考えて、事故報告書の偽造や横領はさらに加速しました


 しかし、度重なる盗みへの罪悪感と娘の終わらない治療、家族を養うこと、ダイスへの送金、そして追放される事への恐怖に、私は耐えきれなってしまったのです


 そして今日、私はすべてを白状するためにここに来ました


 そして場面は、アントン追放の話し合いの場に戻る

続き鋭意執筆中

ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです


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Twitterにて更新のお知らせ等しています

@moongekko01

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