19話
ギルド長に座るよう言われたステーレンは大人しく椅子に座っている
そしてギルド長に合図された僕が口火を切る
始めよう
「僕は追放部門の隊長マークと申します」
追放の一言でステーレンの体が強張る
そして部屋の隊長達を見回す
彼らは体を一切動かさずにステーレンに視線を送っている
ギースさんを見たステーレンの表情が少し明るくなったかと思えば、腕を組み自分を睨みつける隊長を見て顔色が一気に悪くなった
逃げ場はないと思ったのだろうか
「なぜ呼び出されたかおわかりでしょう?」
静まり返った部屋に僕の言葉が響く
話しかけられたステーレンは体をビクつかせる
しかし返事は無い
僕はギルド長に目線を送った
するとギルド長は右手をゆっくりと上げ人差し指を上に突き出す
そしてステーレンに向かって勢いよく振り下ろすと
「ステーレン、我がギルドから追放とする」
体の芯に響くようなギルド長の一言
いやそれもうちょっと後で言ってもらおうと思ってたんだけど
まぁいいか、雰囲気が締まった
こちらも負けずと少し大きな声でステーレンに話し続ける
「貴方の行いはすべて調べがついていますが聞きたいですか?」
ハッとした表情となり僕を睨みつけるステーレン
さっきのギルド長の一言で腰が抜けていた彼だったが持ち直したようだ
そして彼が発言する
「調べっていったいなんのだ?」
と・・・
ここにきて彼は否認をしたのだ
ギルド長と各部門の隊長に囲まれておきながら
追放を言い渡された彼だったがギルド長ではなく僕になら噛みつけるようだ
不服そうな態度に変わった彼に、まずは証拠を提示するとしようか
「まず横領の件です
貴方は今までの遠征で素材を申告することなく持ち出して勝手に売っていたそうですね?」
「知らねぇな」
ステーレンが否定する
「ではその証拠を提示しても?」
「どうぞどうぞ」
ステーレンが虫を追い払うように手を振る
僕はニーナに合図する
彼女が何枚かの書類を持ってくる
「これは貴方が行った遠征の討伐の記録と採取された素材の記録です
討伐された魔物に対して素材の数が少ないように見えますが」
「記録する奴か素材取った奴がミスったんだろ!俺は記録も剥ぎ取りもしてねぇからな」
「なるほど・・・
次はこの街の金貸しの返済記録です
貴方の名前があるようですね、金に困っていたようで何枚も記録が残っていたみたいですが」
「それくらい誰でも借りることはあるだろ
俺はしっかりと返済してるからな」
「そのようですね」
ステーレンは悪びれる様子も無くふんぞり返っている
ギースの咳払いが聞こえるが僕はスルーしよう
今ギースに話しかけても怒鳴るだけで解決にならなく時間の無駄になる
「では別のことについてお話ししましょうか」
「まだあるのかよ、さっさと終わらねぇか?
俺は別に追放されるようなことなんてしちゃいねぇんだからな!」
僕は指をパチンと鳴らして魔法を使う
【小音爆弾】
部屋の外で破裂音が聞こえる
待機していた彼への合図だ
そして会議室の扉を開けて彼が入ってきた
「どうもチーフ」
「あぁ?ヴェレツ?何でここに」
ステーレンは驚いたような様子を見せるが態度に変わりはない
僕は話を続ける
「ヴェレツさん、貴方は彼の命令で遠征中に怪我をわざとすることがあったそうですね?本当ですか?」
「ああ、本当だ」
「なぜそんなことを?」
「依頼主から追加で金をもらうためだ、俺が護衛中に怪我をして依頼主に難癖付けて金をせびっていた」
ヴェレツがステーレンに臆することなく淡々と話している
酔いながら彼のことが怖いと言っていたヴェレツはもういないらしいね
ステーレンがヴェレツを睨みながら言う
「そんなもん依頼主が勝手に渡してきたもんだ、怪我だってただこいつが弱くてミスってただけじゃねぇか
それに証拠になる傷も無いんだ、こんな奴証人としちゃ弱いんじゃないのか?俺は知らねぇがな」
「あくまでヴェレツさんが弱いせいで怪我をしていたと?」
「そうだ、俺だって迷惑してたんだ
こいつがいつまでも怪我するからそのたびに依頼主が申し訳なさそうにしててよぉ
それにこいつの治療で段取りが悪くなるしで最悪よ」
どうやらヴェレツを切り捨てるつもりのようだ
ヴェレツ恨めしそうにステーレンを睨んでいるがステーレンはどこ吹く風だ
「おいおい!こんなことで俺は追放されんのかよ!」
ステーレンは椅子に座りながらふんぞり返っている
すると
「さっきから黙ってりゃ・・・」
ギースさんの堪忍袋の緒が切れた
ドラゴンの尾を踏んだようだ
だが邪魔をされたくない僕は
【消音】
「てめぇは!・・・」
と言ったところで魔法で彼の声を聞こえなくした
まだ問い詰めている途中でしょうが!
邪魔しないでください
しかし、ギースさんはそれでも止まらなかった
立ち上がり机を飛び越えてステーレンへ向かう
どうしよう
僕は音の魔法は使えてもそれ以外はからっきしなんだ
悩んでいるうちにギースさんがステーレンに殴りかかる
その瞬間
【凍結氷域】
魔法部門の隊長であるエレノア・クラフトさんの魔法が発動し、ギースさんが氷塊になった
いや包まれたんだろうか
彼女が両腕を擦りながら
「寒いわね・・・ギース貴方も冷静になって頂戴、凍えちゃうわ」
今あなたがその魔法を使ったんですよ?と思ったが口には出さないでおこう
あと薄着だからしょ・・・
氷の塊の中でギースさんの視線だけが動いている
「次に暴れたら、ギルド長に処分していただきますよ」
と彼に声をかける
ギルド長は嬉しそうにニコニコしている
貴方も止めてください・・・
そうしてエレノアさんに魔法を解除してもらい、ギースさんが氷の塊から解放されて元の席にどすどすと足音を立てながら戻っていった
途中、彼が口を指差して【消音】を解いてもらおうとしていたが
僕は彼ににっこりと笑っておいた
信用できなかったのでそのままにしておこう
そして殴りかかられたステーレンはバツが悪そうにしている
しかし表情はまだ余裕そうだ
じゃあ秘密兵器を呼ぶことにしよう
続き鋭意執筆中
ライブ感だけで書いているので矛盾があったら教えて欲しいです
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