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たった一つのまほろば -It's an only Magical World-  作者: 宙乃夢路
第四章 たった一つの色彩設計
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たった一つの色彩設計05:水の魔法使い①

「──というわけなんだ」


 町長は一人目の魔法使いについて語り終える。


「やはり、ピトゥーラさんは魔法使いだったのですね」


 しかし、彼女はこの町の外に出たこともなければ、灰の悪魔と戦ったこともないらしい。

 そうなると悪魔について新しい情報は得られそうになかった。


 だけど、魔法については彼女本人と話をすれば何か発見があるかもしれない。


 水を自在に操ることができるという彼女の魔法。

 私の魔法はゼロからイチを生み出すことができない。対して、水の魔法は水のみに限定されはするけどイチを生み出せる。

 水や火に氷など、魔法に属性を当てはめるとすれば私の魔法は何になるのだろうか。それが分かれば、この魔法でもイチを生み出せるようになるのだろうか。


「それから、二人目の魔法使い──ミール・Wウィル・インゲニオについて話そうじゃないか」

「はい、お願いします」

「彼女は魔法や悪魔、ひいてはこの世界を対象に研究している科学者なんだ。研究の拠点をこの町に置いているのだけど、それが厄介な所にあって、数年に一度しか行けない場所なんだ」

「数年に一度……ですか。それはどのような理由があるのでしょうか」

「君たちはこの町の奥に広がる地底湖には行ったかな?」


 私は毒に参っていたためずっと休んでいた。だから、珍しいものばかりのこの町にとても興味は惹かれるけど、まだ観光のようなことはできていない。

 私の回復を待つ間は時間に余裕があったマイカさんもまだ行ってないようで、首を横に振った。


「そうかい。あそこも中々の景色だと思うから観光することをオススメするよ。まあ、話を戻すとだね。あの湖の水位は時期や時間帯によって大きく変わるのだけど、数年に一度くらいの頻度で溜まった水がほとんどなくなってね。すると洞窟の更に先へ続く道が現れるんだ」

「その洞窟の先にミールさんの拠点が隠されているということですか。ですが、それではミールさんも外へ出られないのではありませんか?」

「彼女には魔法があるからね。詳しくは分からないけど、魔法で別の場所に移動できるらしいよ」


 だから、数年に一度しか開かれない秘境はミールさんにとって何でもない所なのだという。

 滅多に人も動物も寄り付かず、それでいて定期的に管理してもらえるのは彼女にとって理想の環境だったのではないだろうか。


「しかし、困りました。わたしの魔法では水中を移動することはできませんし……」

「これはアレじゃない。通れるようになる時期がすぐそこまで迫ってるのよ」

「いいや。正確な時期は分からないけど、少なくともまだまだ先のことだね。ただ、ルキフェル先生の水の魔法なら通ることができると思うよ。先生にお願いしてみるといいんじゃないかな」


 ピトゥーラさんの魔法で水を自在に操れるのなら、水中で自分の周りの水だけを押し退けることもできることを意味する。


 彼女も昔はちょくちょく湖の中に入って遊んでいたらしい。だけど、理由は分からないけどある時を境にその遊びもやめてしまったという。


 町長との面会を終えた私たちは早速ピトゥーラさんに会いに向かうことにした。

 魔法少女になってから、クーニャさんのいる方角が何となく分かるようになった。その感覚を道標にすれば、きっと彼女たちがいるはずだ。


 …………………………


 町の奥へ進むに連れて建物も人も見かけなくなっていく。

 本当にこの先にクーニャさんたちがいるのか些か自信がなくなってきたけど、小高い丘の上から聞き馴染みのある声がしてそっと胸を撫で下ろした。


 丘を登ると、モニュメントのような建造物が見えてくる。

 町長の話で出てきた地底湖をバックに悪魔の左腕を具現化させてポーズをとるアリエさんと、それをモデルに絵を描くピトゥーラさんがいた。


「へぇー、上手いものね。躍動感もあってカッコ可愛く描けてるじゃない。今度、あたしのことも描いてよ」

「それなら、さっき描いてたよー」

「い、いえ! それは見せられません。あわ、あわわ……」

「そう? まあ、無理に見たりしないから安心しなさいよ」


 町長との話の直後は落ち込んでいたように見えたけど、今は元気を取り戻しているようで安心する。アリエさんがうまいこと何かしてくれたのだろうか。

 年下の少女に見境がなくなっている気のするマイカさんはともかくとして、アリエさんとも互いに打ち解けているようだ。


「ピトゥーラさん。話したいことがあるのですが、お時間をいただけませんか。後で構いませんので」

「あわわ……お、怒りますか?」

「い、いえ、怒る理由なんて一つもありません」

「よ、よかった。あ、これは遊びの絵なので今からでも大丈夫です」

「遊びでこの出来栄えですか。清書して色もしっかり付ければ売れそうに思いますが、そう上手くいかないものなのですか?」

「は、はい……好きなものを形にしたらこういう絵柄になったのですが、需要はないみたいです……」

「なるほど……」

「アリエ知ってるよー。こういうのを萌え絵って言うんだってー」

「モエエ……? それはアリエさんの知る異世界での話ですか?」

「そうだよー」

「それなら、異世界でのその……モエエ? の使われ方を参考にすれば需要が生まれるかもしれませんね」


 アリエさんが異世界の記憶を持つことは今朝聞いた。理解の及ばない話ではあるけど、それは私にとって信じない理由にはならなかった。

 自分自身が魔法という人知を超えた力を持っているからなのだろう。


「い、いつかその話、聞かせてください、アリエ……ちゃん」

「うん! 任せてよー」


 逸してしまった話が一段落ついて、ピトゥーラさんはどんな話題を振られるのか不安そうな表情で怯えながら私を見上げた。

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