12/102
たった一つの主人公12:物語の始まり
この世界には灰の悪魔と呼ばれる怪物が跋扈し、人々だけではなく沢山の生き物が脅威にさらされている。
魔法使いのミナたちはその脅威を終わらせるために旅をしている。
そして、僕には魔法使いのミナを魔法少女に変身させる力があるらしい。
どうしてそんな力が僕にあるのかは分からない。そんなことを言ったら、灰の悪魔という存在も、どうすれば脅威を終わらせることができるのかだって分からないことだらけだ。だけど、こればかりは一つ一つ解決していくしかないのだろう。
分からないことも多いけれど、この世界の物語は至ってシンプルだ。みんなにとっての絶対悪が存在して、僕らやこれから出会うたくさんの者たちがそれに立ち向かう。ただそれだけなのだから。
つまりは、ここから紡がれていく物語は僕を主人公としたものではないという意味でもある。
そして、僕はこのたった一つのありきたりな物語をこう形容するのだ。
優しい世界で詠う優しさのアンチテーゼ──と。