プロローグ
初めまして五ノ神 ガロアと申します。初投稿です。
これから、宜しくお願い致します。
母親に言われるがまま中学までは過ごした。
小中9年間成績トップを貫いたが、中学校卒業と同時に盛大な反抗期を迎えた。
高校には一度も通わず、いつの間にか退学していた。
さすがに申し訳ないと思って高卒認定を取り、国内最難関の国立大学に合格したがこちらも1日も通うことなく除名処分となった。
結局、中学卒業から28歳までの約13年間で家から出た回数は指折り数えられる程度。
1日3食の食事と毎日1時間の読書以外の時間はほとんど寝て過ごしていたが、母親への贖罪のためか食事は母親とともにとっていたため規則的なニート生活を行っていた。
ちなみに父親は貿易関係の会社をいくつか経営していたらしくほとんど家に帰ってくることはなかった。
そんな単調なニート生活を13年間続けていたわけだが、人生そんなに甘くはなかったらしい。
いつも通り母親と昼食をとった後自室で眠ろうとベッドに入った瞬間、俺の体は浮き上がり天井をすり抜け、雲を抜け、気づいたら真っ白で何もないただただ広い空間にいた。
俺は死んだのだと、そう確信するも走馬灯として浮かんでくるような記憶もなく、今読んでいる小説を最後まで読んでおけばよかった、などと薄っぺらい思考を巡らせていたところで、目の前に如何にも天使というような羽根を生やし、頭に光るリングを浮かべる少女が現れた。
「えーっと、あぁここここ。コホン、えー永井 栄人さん、あなたは『第1回誰をあの世界に送ろうか会議in天界』にて見事『送る人』に選ばれましたので『あの世界』括弧、世界の名前を言ってもどうせ伝わらないので言わなくて良い括弧閉じ、あぁここはいいのか! に送り込まれます。つきましては、この天使リリスの導きによって『あの世界』へ転生してください。」
などと、急に現れたと思えば分厚い本を開きながら音読し始める。
「リリスは悪魔だろ」
仕方なく突っ込みを入れてやった。
そのままリリスは俺のつぶやきを聞くこともなく続ける。
「栄える人、次の人生では名前通りの人になれるといいですね! まぁ名前は変わっちゃうみたいですけど」
全く失礼なクソガキだ。
「状況をつかもうとしているのが馬鹿馬鹿しいのかもしれないが、つまり異世界転生というやつをするのか?」
もはやこれが現実であろうとこの世界に未練はないし、夢ならばどうなっても構わない。そんな思考から俺はこの奇妙な空間を受け入れることにしていた。
「えぇっと、向こうの世界に行っても記憶だけは引き継ぐそうです。向こうの世界ではこの世界のことを言ってはいけないらしいです。あとは……うーん、めんどくさいので自分でこれ全部読んでください! 道中長いので!」
と言い放ったリリスは持っていた分厚い本を俺に投げる。
本の裏表紙にはこの本を人間に読ませてはならないの文字。なぜ人間に読めるような文字で、ましてや日本語で書かれているのかは見当もつかないが、天界とやらにはこんなやつばかりいるのだと納得することもできた。
もはや俺の質問に答えないことには思考が回っていない。
「あ! そうそう、『向こうの世界に行ってくれるボーナス』? で1つだけ願いを、大天使様が叶えられる範囲内でなんでも叶えてくれるそうです!」
「願い……そうだな、かあさん――いや、俺の部屋の本を全て処分しておいてくれ。」
これで、良かったよな。
「? わかりました! その程度のことなら私でもできますが、一応伝えておきます!」
本当にこいつは。次遇ったら絶対――
「それでは、『向こうの世界に送る儀式』を始めます! この世界への未練とか、余計なことを考えたりすると失敗しちゃうので気を付けてください!」
そういうとリリスは右手を前に出し、魔法陣を出現させた。
あの世界なのか向こうの世界なのかはっきりしてくれ、などと呟こうとしていたのもつかの間。
「これが向こうの世界につながる道の入り口です! 通っちゃってください!」
自信満々にそういう彼女だが、その魔方陣は入り口というにはあまりにも小さすぎた。
「さすがに小さすぎるだろ。その魔方陣、両手で作るらしいぞ」
俺は呆れながら先ほど渡された分厚い本の魔法陣に関するページを開いて見せる。
「し、知ってるにきまってるじゃないですか! 試したんですよ!」
ため息をつくことさえ忘れた俺は持っていた分厚い本を投げ渡し、相手に発言する間も与えずに
「もう読んだ。」
そう述べながら躊躇なく魔法陣の中に入った。あの時の俺の顔は史上最高に格好良かっただろう。
魔法陣の中はピンク色のような肌色のような、長い長い一本道が続いていたため歩き出したが、リリスの大声で『行ってらっしゃーーい!!』が聞こえた後の記憶は曖昧だ。
こうして俺のこの世界での人生が始まった――