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シスタークエスト レベルは上がりませんが妹は増えます  作者: 幻月さくや
第三章 歪曲都市編 優しい幸福がそこにはあった
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サニアとメアリー

 素性も知らぬ二人の妹が交差する。


「そこっ!」


 切り込むサニアの斬撃をメアリーが何とかかわす。

 そこにさらに切り込まれるサニアの剣。

 メアリーが防戦一方のままじりじりと舞台の端へと追いやられていく。


「はっ!」

「ぐっ」


 鋭く切り込んだサニアの攻撃をとっさに張られたエアロシールドが防ぐ。

 それを見たアカリが立ち上がった。


「補助もなしにエアロシールドだと!」


 エアロシールドというのは魔導士が多用する防御シールドの一種だ。

 その原理はシンプル、風の守護を受けて風と真空の幕を張りそこに物理障壁があるかのような疑似シールドを展開するというのものだ。


「ちっ、やるな」


 シールドに阻まれたサニアが飛びずさり下がった。

 メアリーが指を立てサニアの方に打ち出す形をとるとその先から氷の塊がサニアに飛んでいく。


「アイスバレットッ!」


 氷雪系はシャルが多用するから私も見慣れてる。

 連続で打ち込まれる氷の弾丸。

 それをサニアが曲芸じみた体術でかわしていく。

 その時、メアリーが不意に足をもつれさせた。


「そこだっ!」


 鋭く斬りこんだサニア。

 つーかサニアの動きもなんというかぬるぬるしてる上に早くて残像が出るようなすさまじい動きなんだけど、それにもましてメアリーの体の動きがおかしい。

 サニアの後ろに移動したメアリーに対してすぐに体の位置を切り替えたサニアが再び斬撃の雨を降らせる。

 その剣の嵐をとっさにはったエアロシールドで必死にしのぐメアリーが声をあげる。


「ランドモーフィングッ!」


 さらに攻勢を強めるサニアの足元に不意に穴が開いた。

 攻撃のために踏み込んでいたサニアが大きく体勢を崩す。

 それを見たメアリーが今度は両手の動かし弓を構えるような仕草を見せた。

 すると光の矢が出現する。


「うっそだろ、今度はライトニングアローかよ」


 以前、アカリに聞いたことがある。

 魔導というのは私の元の世界でいうならプログラミングの塊のようなものでその発動にはシビアな条件がある。

 例えばこの地下だと風系は発動しにくい。

 だからアカリは仕方なく水系の魔導を多用してるわけだけど、ステージにいるメアリーはその風に関連する魔導を連続で使用してるわけだ。

 放たれた矢をのけぞって交わしたサニアは今度は前かがみになるとそのまま一気にメアリーのところまで距離を詰めた。


「!」


 サニアの斬撃が決まりメアリーから血が噴き出したのが見えた。

 これは勝負あったかね。


「悪いな。我が夢の為には勝利を重ねなければならんのだ。たとえこの身を海賊に落としてもな」


 そう言って刀の血を払うとサニアはメアリーに背を向けて元の位置に戻ろうとし……


「それは、私もだから」


 サニアが胸を貫く雷の矢をゆっくりと見やる。

 ゆっくりと振り返ったサニアの視線の先には光る時計盤の表示を背に立ち上がったメアリーの姿があった。


「おいおいおい、今度は冒険者の回復タレントまで使うとか、チートじゃねーか」


 呆れたようにアカリが呟いた。

 そもタレントって何よ。


『タレントいうんは赤いのが仕立て上げた冒険者連中が使う疑似スキルや。あれは回復のタレントやな』

「アカリがチートって言ってるのは?」

『そりゃ魔導と時間系の回復は普通は併用では覚えられんからや。時間系は他とめっちゃ相性悪いからまともに覚えるなら単独で覚えるしかないで。少なくともさっき発動したんはタレントでない方の普通の魔導やな』


 ふーんタレントにも魔導あるのか。

 アカリが赤龍機構に龍札預けてるってのと関係するのかな。

 視線の先、ステージの上ではサニアがゆっくりと倒れ伏しそれをメアリーが見下ろしていた。


「勝者、メアリー!」


 周囲の観客が沸き立つ中、私はメアリーを見つめていた。

 あれ、メアリー・スーかね。

 それにしてはどうにも強さが足りんのだけど。

 メアリーを見てる視線を再びリーシャの方に向けるとその後ろのアレとまた視線が合った。


 久しぶりに訳が分からないわ。

 いいねぇ、わくわくする。

 夢ってのはやっぱこうぐちょっと理解不能であるべきなんよ。


『お前の夢はどうなってるんや』

「そりゃ、全世界を妹三昧にすることよ」


 遠くの怪異の視線以外に近くからも熱い視線を感じるのは何でかね。


「優姉、一つ言っていいですか」

「何よ」

「この状況、半分あんたのせいじゃねーかっ!」


 はは、違いない。

 だけどたまには言い返してもいいよね。


「まーね、でもさアカリ、一つ収穫があったわ」

「へー、言ってみてくださいよ。どーせろくでもないんでしょうけど」

「マーマン、血を飲ませれば妹転換できるっぽい」

「そうじゃねーだろっ!」


 何故切れる。


「どうすんだよ、あのメアリーとかヤバいぞ、強さ」


 正直こっちの世界に来てから強さとかの話すると、古い女子高生的な「ちょーやばー」みたいな表現しか聞かんのだけど私の気のせいかね。

 ああ、いや幼女神(ティリア)が作った世界だからとりあえず「強い?」って聞かれるのは普通なんかもね。


「いくら夢だっていってもなんでもできるやつとか相手じゃ勝てねーだろ」


 ふむ、アカリはそこは読み切れんかったか。


「アカリアカリ、あの子は何でもできるんじゃない」

「実際できてるじゃないですか」


 妹転換なら大体わかるからね。

 妹に変化して発生するのは基本ワンスキルだけ。

 シャルやアカリみたいに元から使えたものは継続するみたいだけどね。


「あれはスキルよ、アカリと一緒」


 私がそういうとアカリが首を振った。


「スキルって……いやいや、ないですから。どんな能力でも発動できる文字って『模倣』とか『偽造』とか『捏造』あたりですけど、そのあたりでしたらできること大体わかってます。あそこまでじゃないですよ」

「でもさ、妹転換した子はワンスキルしか使えんのよ。アカリは分かってるよね」

「そりゃそうですけどリーシャ姉が夢だから何でもありと化した可能性とかあるじゃないですか」


 それはないかな。

 夢なら何でもできるってわけじゃないからね。

 確かに夢というものは不条理だらけになりがちだけど、見てる間はその夢に同化しないといけないのよ。


「それだったら怪異なんてもんは出現しない。あれは現実が世知辛く理解不能が敷居を超えた時に出るものよ」

「わけがわかんねーよ」


 師匠の誰かだったもうちょいうまい説明できたんだろうけど、私は怪異の専門家ってわけでもないからね。

 夢の中ではオンミョウジやってるけどそれもできる範囲でしかないわけだ。

 ということで、頭を抱えたアカリの肩をポンとたたいて声をかけた。


「もうちょい肩の力抜こう。あとで乳もんであげるからさ」

「おっさん相手にセクハラすんな、このトンチキ女子高生!」


 キレに磨きがかかてきたアカリ。


「トンチキとか久しぶりに聞いたわ。今日日、言わないわよね、それ」


 目を丸くしたセーラ。

 それはいいとして私は妹達を見渡した。


「どのみち今日は見学に徹する。もうちょい個々の仕組みがわかって妹転換に対応できるようならんことにはね」


 私の言葉にレビィが唸った。


『できるんか? あれユニークスキルの一種やろ。初見殺しはともかく、一々対応するのも大変やで』


 ふふ、こういう時は姉にお任せなのだよ。


「任せてっ! 私にいい案があるっ!」


 私が胸を張るとマイシスターズが何故か不安そうな顔をした。

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