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シスタークエスト レベルは上がりませんが妹は増えます  作者: 幻月さくや
第五章 墓場迷宮編 少女は月に手を伸ばす
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妹たちの肖像

「シャル」

「なんですの」

「アカリを手元に置いた方がそういうシャルの知的好奇心の補助にはよかったんちゃうの」


 しばしの沈黙。


「あの子が抱いているのは魔法(まほう)使いへの憧憬(あこがれ)です」

「まぁ、そうだろうね。どういう想い出からそうなってのは知らんけど」


 アカリの龍札が『魔導(まどう)』になるくらいには技術化された魔法に縁か興味があったってことだし。


「あかんのかね」


 私がそういうとシャルの神秘的な紫の瞳が揺れた。


「悪くはありません。ただ……」

「ただ?」


 一拍の間。


「今の(わたくし)ではあの子の感情を受け止めきれません。よほどリーシャの方が向いているでしょう」

「おっと、シャルからそういう風に言って来るとは思わなんだ。あの子の想いは今のシャルには重いかね」

「ええ」


 その後、しばらく沈黙が続いた。


「お待たせいたしました。とりあえず異常らしいところは見当たりませんでしたが、なにぶん新型の王機(おうき)です。どこでどういう不調が出るか完全には解析しきれていません」

「そこはしゃーない」


 テーブルの上に猫用のキャリーをおくと一瞬だけ私を見上げた月影(つきかげ)がそのままするりと中にはいった。


「お姉さま、SGMについでですがソータなら何かつかんでいた可能性があります」

「そりゃまた何でよ」

「月音の衣装替え、それとお姉さまの妹融合(いもうとゆうごう)。それらに近いことをソータは神銃(しんじゅう)を使うことで可能としていました」

「ほう」


 さすがというかなんというか。


「ですからソータが残したという山腹のダンジョン、あそこには何かしらのヒントが残されている可能性はありますわね」

「なるほどねぇ」

「それとこの話、リーシャたちにも伝えていただけますか。育成迷宮(いくせいめいきゅう)であれば魔獣(まじゅう)が養育されてますし、資源が取得できるようになってたりもします」

「あー、そっちになるとリーシャたちだわね」

「その他にもレオナたちはあそこにソーマが保管されている可能性を見ていたようですわね」


 ソーマ?

 創作によく出る神酒(しんしゅ)のあれかな。


「どんなのよ」

「透き通るような黄色の酒で高密度のMP(ムーンピース)が凝縮されています」


 高密度のMPねぇ。


「カリス教のエリクサーやアムリタとどう違うんよ」

「ソーマは()()()()()MPが果実酒に固定された代物()()()

「過去形なんだ?」

「製法を知っているのがドヴェルグ達だけでしたので」


 そりゃもう普通の手段じゃ手に入らん品だわね。


「エリクサーが超回復(ヒール)、アムリタが確か強壮剤(ブースト)よね。ソーマはどんな効果があるんよ」

「MPの修繕効果(リペア)が望めます。レビィティリアの災害でMPに甚大な損傷を受けた子がいたのですが、その子の治療に使用しておりました」


 ほー。


「それ、費用(おかね)とか大丈夫だったんかね?」


 私がそういうとシャルが視線をそっとずらした。

 ダメだったんかい。 


「つーか、シャルから直接言えばいいじゃん」


 私がそういうと魔導(シャルマー)を継いだ妹は少し寂しそうに笑った。


「最近少し避けられていますので。次のロマーニ会議までは時間がありますし」

「自覚があるなら直したらどうかね」

「お姉さま、今度、新しい鏡を作りましょうか?」

「ははっ、そりゃそうか。そういうとこは私もだわね」


 そういって私が茶化すとシャルも少し笑った。

 再びシャルの視線がきちんとかみ合ったタイミングを見計らって私は言葉を紡ぐ。


「シャルはさ、寂しくはないかね」

「はい?」


 私の問いかけに一瞬シャルの動きが完全に止まった。


「気持ちの話よ」

「ご心配ありがとうございます。ですが日々作業自体は忙しいですし面談や対話する妹も多いので特には。話し相手であればエウもいますし」


 おっとこう来るか。

 エウ自身が必要がなければ接触してこないタイプだから雑談してるかというとかなり微妙なんだけどな。

 この子の場合は力があったために孤独になったのか、王ゆえに孤独にならざるを得なかったのか今まで判別がつかんかったんだけど、こりゃまた別な問題かもしれんね。

 視線を横にずらすとそこには皆が参加した全体会議を描いたと思われるコズミックホラーが陳列されていた。

 正直、アバンギャルド過ぎてどれがだれの絵姿なのか判別すらつかんのだけど、多分この中に()()()()()()()()()()()()()だろうね。

 寂しいという自覚すらもてないのは、それ自体が寂しいことかもしれんわね。

 しかたない、ちょっと仕掛けてみますか。


「よし、ならこうしようか」


 私が笑みを浮かべながらシャルに前振りをすると警戒したのかシャルが口元をそっと手で隠した。


「そのうちソータ師匠のダンジョン調べるときにはさ、シャルもいこう。ダンジョン探索に」


 一瞬目をしばたかせたシャル。


「それはまた……私はかまいませんが。ですが私が前線に出てしまいますと他の者が経験を得にくくなります」


 ははっ、自分が強いということにおいては謙遜(けんそん)しないあたりがシャルらしいというか。


「そこはそれ。ちょっとリーシャたちとも相談してみるわ」

「ええ」


 ふむ、ならこういうのはどうかな。


「いっそ競争でもしてみるか。リーシャたちとシャルでどっちがより攻略できるか」

「それは、安全に支障が出かねないので私としてはお勧めしかねますが」

「おっと、シャルが危険になるとはおもわんのかね」

「そうなる前には引きますので」


 ここら辺なんだろうな、この子が()()()なとこ。


「なら、安全確保できそうならそういうのはあり?」

「かまいませんわよ。育成迷宮で複数名が競うのはよくあることですし」

「その口調から察するに本気で負けるつもりはないのね」

「無論です。これも伝えていただいてもかまいませんわよ」


 ちょっと目に光が戻ったシャル。

 こういうとこはナオとは別な意味でこの子も男の子的なんだなと思う。


「もしさ、リーシャ達が勝ったらどうするよ」


 私が笑いながらシャルに振るとシャルは口元から手を離してこう答えた。


「万が一にもないでしょうがもしそうなったら何でもいうことを聞きますわよ」

「なんでもと言ったね? ええんかね」

「ええ、その代わり……」


 シャルが再び口元を隠して続けた。


「もしリーシャたちが負けたら絵のモデルになってほしい子がいますの」

「ほう、誰かね」

沙羅(さら)ですわ」


 河童(かっぱ)だからか。

 まぁ、確かに珍しくはあるわな。


「一度、あの子の裸体を絵に起こしてみたいと思ってましたの」


 (あお)ってみたのはいいけどさ、これリーシャたち勝負受けるかなぁ。

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