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シスタークエスト レベルは上がりませんが妹は増えます  作者: 幻月さくや
第五章 墓場迷宮編 少女は月に手を伸ばす
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冒険の査定

「よしっ、じゃぁ、今日の本題に入ろうか。シャル、アカリ、例のものを」


 私の指示に頷いたシャルとアカリがそれぞれ隣に座っていたクラウドと幽子(ゆうこ)に品を手渡した。

 シャルからクラウドに手渡されたのは毛皮のコートに手の平サイズの水晶玉と一冊の書籍、アカリからは小さな箱と大きめの土色の魔石(ませき)が幽子の手に渡った。


「これはまた……」

「なにこれ、あたしこんなの作ってるって聞いてないんだけど」


 シャルから渡された毛皮のコートや水晶玉を観察するクラウドとアカリから手渡されたコンパクトほどの大きさの魔導機(まどうき)と魔石を見つめる幽子。


「うちから納める幽子の結納(ゆいのう)品よ。つーてもどれも試作品なんだけどね、話に聞く赤の龍王様達なら希少金属(レアメタル)とかよりそっちの方が面白がりそうだと思ってさ」

「それは確かにそうだけど……いいのかい、これは君たちにとって貴重だろう」

「まーね。でもそれ一つで終わりってわけでもないからさ。粗さが目立つかもしれんけど最初の品はここまで投資してくれたクラリスの顔を立てるためにも早めに渡そうと思ったのさ。そんでもってクラリスが手に持ってる一品目、毛皮のコートの方は()()()()()ならぬ火鼠の外套(ファイアラットコート)よ」


 前回の戦いで吉乃(よしの)から分離し素材として手に入ったファイアーラットの皮衣。

 というかあの時点でチューキチは()()()()()()()()()()ってのがよくわかる結果でもあるんだけど、中身の部分は妖怪に化身(ようかいか)した一方で『完全耐火(かんぜんたいか)』の権能の方は巨大な皮となって現地に残った。

 それをリーシャたちが回収して小分けにした後で外套の形に加工、シャルが後から龍札(たつふだ)ほどじゃないけど耐水、耐圧、耐刃、耐毒、対魔などの補強をかけてくれたものがこの一品だ。

 サニアたちが旅に出るときにはできれば一人一着づつ、この火鼠の外套(ファイアラットコート)を持たせてやろうと思って皆に作ってもらってた。


「これは確かに貴重だね。こっちの玉は何だい? 中から青の龍王様の力を感じるってことは王機(おうき)関連なのだろうけど」


 ほう、やっぱわかるんか。

 真剣な表情で見つめるクラリスにシャルが小さく頷いた。


「ええ、それはランドホエールから飛び出した王機の一部であった権能(けんのう)を固めて安定させたものです。お姉さまが龍玉(りゅうぎょく)と名付けました」


 しれっと答えたシャルの言葉にクラリスが硬直する。

 これは少し前に頼んだ奴で元はランドホエールを封印していたシールドと同じものだ。

 エウが再現したそれにシャルが確保していたランドホエールが持っていた権能を封じてみたんよ。

 ちなみにいうと名前は竹取物語(たけとりものがたり)からの借用やね。

 そんな試作品の龍玉をじっと見つめるクラリス。

 その少しぎこちない笑みになったままの口を開いた。


「これに入ってる権能は使えるのかい?」

「ええ。少なくとも私とアカリは利用可能でした。それに封入されている権能は『複製生成(クローンクリエイト)』ですので魔導で利用した場合にはマナを含まない品の複製が可能でした。ただ、実行に大量のマナを消費するので多用はできません。結果、私たちでは運用は厳しいという結論に至りました」


 ぶっちゃけ言うと今のシスティリアでは使いあぐねたのよね。

 王機(おうき)直結でも数回回すともうマナが足りんとなるとさすがにどうにもならんのだわ。

 冒険者ギルドを運営する赤龍機構(せきりゅうきこう)ならなんか使い道もあるんじゃないかな。


「それはそうだろうね。こちらの本は?」

「本にはそれを形成するにあたって調査した関連事象をすべて記述あります。現在のランドホエールや月影(つきかげ)の診察情報も記載しましたのでドラティリアでも確認してくださいまし」


 レビィがさ、龍札の中身はソングマジックだって言ってたから夢幻武都(むげんぶと)を包むシールドができた時にもしかしたら似たことができんかと思ったんよね。

 そんでシャル達に振っておいたらできたって感じだ。

 めずらしくひきつった笑いを浮かべたクラリス。


「つまり再検証しろということかな?」

「ええ」


 悪びれる様子もなく答えたシャルにクラリスがため息を漏らした。


「前から思ってたんだけど二人って仲いいよね?」

「そうでしょうか」


 不意に割り込んできた幽子の言葉にシャルが煮え切らない返事をする。

 そうか、幽子はこの二人が昔からの知り合いってことにまだ気が付いてないのか。

 結構丸わかりなんだけどね。

 まぁ、そこらはそのうちクラリスの方からいうだろうから私が無理に言うこともないか。


「ハニー、言っておくけど君が思うような甘い関係とかではないからね」


 半眼で見つめる幽子にクラリスが言い訳をした。


「ふーん。べっつにクラリスが誰と仲良くしてようが構わないけど」

「彼女との件についてはそのうち僕から改めて説明するよ。ハニー残りの品について聞こう」

「わかった」


 少し口をとがらせながらも頷いた幽子に、クラリスがさっきとは別な意味でのため息をついた。

 クラリスは幽子にはほんとベタアマだわね。

 頷いた幽子がアカリの方に向き直って箱を手に取った。


「アカリ、こっちは何?」


 コンパクトサイズの魔導機を目を輝かせながら興味深げにひっくり返したりして見つめる幽子に手渡したアカリが説明する。


「それは持ち運び型の怪獣(かいじゅう)警報装置です。カイジュウアラートって名前にしました」

「ふえっ!? ちょ、ちょっとまって、怪獣の警報ってそんなのできんの?」


 幽子のみならずクラリスも驚いた表情でそれを見つめてる。

 ほー、こういうの他のとこにはないんかね。


「私としちゃ前回、外の詰め所で完全に不意を打たれる形でチューキチに襲われたからそこんとこ何とかならんかと思って個人的にシャルとアカリに依頼してたのよ。これも試作品やね」

「外で深度二相手に数回しか試せてませんけどね。後ろの左にあるのが起動スイッチで右にあるのが感度センサーの切り替えスイッチです。標準だと感度は深度三に設定してあります。それと感度の設定は深度一からだとトライや私達にも反応してしまうので二以上にしかできなくしてあります」


 シャルの方を向いたクラウドが口を開いた。


「これ、どこまで動くんだい」

「今のところは設計通り動いてますわね。細かい設計はアカリがしてるのでアカリに聞いてくださいまし」


 振られたアカリが視線を幽子からクラウドにうつした。


「どういう原理なんだい?」

「基本は波動検出器です。怪獣の波動についてはシャル姉が()()()()()()()()を調査して割り出したものを実装しました」

「動作に必要な使用者のマナは?」

「いりません。正確にはこの魔導機はランドホエールから供給されるランド属性のマナだけで動きます」

「ちょ、ちょっとまつんだ」


 額を抑えたクラリス。


「僕の知ってる魔導機(まどうき)はマナを外部から供給しないと動かないものばかりだ。けれどそれはマナの補給はいらないんだね?」

「はい、いりません。正確にはランドのマナでしか動きません。シャル姉、そこの説明はお願いします」


 頷いたアカリが説明をシャルに丸投げする。


「追加調査の結果、ランドホエールから供給されるマナは他の王機より純度が高いことが判明しました。イニシャライズした影響でしょうね。マナと言っても伝わるときは波動ですからノイズが少ないといったほうが正しいですわね。その純度の高いマナに怪獣の波動が重なるときに起きる波動のずれを検出するのがその装置です。かなり細かい作りになってしまったので製造にはアカリの魔導機がないと厳しいですが素材があれば量産可能です」

「どんな素材を使うんだい?」

「それは私から。鉄、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム、イットリウム。それと魔導回路用にMP(ムーンピース)が必要です。金属で書き込んだ魔導回路のコア部分が波動を検出することで動きます」


 すらすらと答えたアカリにクラリスとシャルが顔を見合わせた。


「シャル、君はあれ造れるかい?」

「いえ、私が出来るのは魔導での完全模写(パーフェクトコピー)までですわね」


 聞いた相手が悪いと思うんよ、クラリス。


「じゃ、じゃあこっちは?」


 少しひるみ気味な幽子が魔石を指さした。


「そっちには私が組んだ魔導式の簡易版を入れてあります。主に放送や会話用の奴がメインですね。かなり軽くしたんで多分赤龍機構(せきりゅうきこう)の方でも動かせると思います」

「ふえっ!? えっとそれって優がよくやってるゲリラ配信とかも?」

「はい。まぁ優姉の指示ですから、なんでやるかは知りませんよ」


 アカリの言葉を受けて私に全員の視線が集まった。


「他でも使えた方が面白そうだから」

「それだけかい?」

「先に渡しちゃった方が後ですり合わせなくて楽でしょ」


 私がそういうとクラリスが半眼でシャルの方を見た。


「君だね、この入れ知恵は」

「ええ。確かオープンソースでしたか。パテント代よりも仕様を抑えた方がメリットがありますので」


 よく見るため息をクラリスがついたところで私は最後の交渉に入ることにした。


「つーことでその四つが結納品ってことで」

「これ、君たちのアピールも含んでるよね」

「そりゃね。さてと、三つ目の話はここからさね」

「まだあるのかい……」


 珍しく困惑がはっきり出てるクラリス相手に頷いた私。


「実はさ、ギルド開くにしても外貨(ギルドポイント)の元手がなくてさ」

「それはそうだろうね。君たちは交易以前に僕以外との外部交流はしてないわけだし」

「うん。それで結納品の納入の後でいいんだけど、私の()()でまとまったお金が借りれないか聞いてみてくれんかね。買取でも(しち)でもいいんだけど」

「かまわないけど何を出すつもりなんだい?」

「いやー、シャルもちょっと値段はわからん言うてたし月音(つきね)自身もわかってないみたいだしさ」

「ちょっとまつんだ。君は一体何を出そうとしてるんだい」


 妹たちが見つめる中、私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()てテーブルの上に置いた。


「『創世神(ティリア)の涙』さね」

「ふえっ!?」


 事前に教えてなかった幽子の声と、声も出さずにクラリスがガタっと立ち上がった音が響いた。

 私はいつものように笑いつつクラリスに言葉を重ねる。


「赤の龍王様に査定していただけないもんかね。夢の冒険の報酬を」

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