How are you, 大人?
病気で学校を休んだけど、それがすぐに治っちゃうと、暇になる。まだ治ってないときは、頭が働かないから、暇なんて思わないし、基本的に寝ているだけだから、どのくらい時間が経ったか、わからない。
でも、もういつも通り元気だし、昨日の夕方から今日のお昼までずっと寝てたから、もう眠くなくて、何もすることがないの。
退屈だから、時計とにらめっこをする。
時計は、私とは関係なく、同じ間隔で秒針を動かしているようだけど、私が友達と遊んだり、本読んだり、眠ったりしてて、何かに熱中しているときは、すぐに時間が過ぎてて。かと思えば、こうやって何もしてないと、時間はすごくゆっくり動いている気がして、時計が嘘をついているんじゃないかって思うの。
特にやることがないと、頭の中で、学校の友達は今何しているんだろう、にゃん吉は今どこにいるんだろう、と色々なことを考えてみる。どうしてかわからないけど、本当は学校の机にいるときに、考えられるようにしたほうがいいんだろうけど、私は、こうやってベッドの上で寝そべっていたり、お風呂で湯船につかっていたりする時のほうが、たくさんのことを考えられるような気がする。それどころか、机だと、眠くなっちゃう。
私ったら、ダメね。中学校に入ってもう一か月も経つのに、まだ子供みたい。
私がまだ、赤いランドセルを背負って、黄色い帽子をかぶっていた、小学生のころは、登校中に見る、制服を着た中学生が、すごく大人に見えて、私も中学生になったら、あんな風になれるのかな、って思っていたけど、私は、まだ子供。確かに見た目は、背も大きくなって、ランドセルじゃなくて、スクールバッグを持って、黄色い帽子じゃなくて、セーラー服を身に着けているけど、中身はまだ何も変わっていなくて、子供のままなの。
どうやったら、中身も大人になれるのかしら。
そもそも、大人って何だろう? 私は、まず身近な大人がどんな人かを探ろうとして、でもママとパパは身近すぎたから、学校の先生を思い浮かべようとした。でも、小学校の先生はしっかりと覚えてないし、かと言って中学校の先生はまだ名前すらちゃんとは覚えていなくて、あまり参考にはできなかった。
だけど、中学校の先生を思い出そうとして、昨日学校で何したかを思い出そうとした時、あの、英語の特有のあいさつである、How are you?が、頭の中で鳴り響いた。
How are you?ってなんだか最近、色々なところで使っているような気がする。どうして、この言葉、この挨拶だけが、私の奥深くにまで根付いて、知らないうちに使ってしまうようになったんだろう?
いつもだったら、解決しそうもない、大変そうなことは、さっさと忘れて、もっと楽しいこと、今日は友達と何喋ろうかなとか、どこ行こうかなとかを考えるのだけど、やはり病み上がりで、万全じゃないのもあって、それに暇だったのも合わさって、私らしくない気がするけど、とことん考えることにしたの。




