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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
99/148

 99 コンサート前日

 いよいよ明後日、優希さんがアメリカに出発する。

 ということは、つまり。

 明日は兄貴たちのバンドが優希さんの応援も兼ねてコンサートを開く日だ。


 コンサートのタイトルは『みんながんばろうぜ!』だって。

 優希さんの留学、オレの秋季大会、それからオレ達は知らないかもしれないひと達へ。

 みんないろんな思いを胸に抱いて、日々の生活を頑張っている。

 そんな全てのひとに向けての応援の意味も込めて、このタイトルにしたということだ。


 きっと、兄貴自身も優希さんとの遠距離恋愛、バンドに勉強、バイトやその他もろもろ、頑張ろうっていう気持ちもこもっているのだろうと思う。


 オレは今日も朝から夕方まで部活に励んだが、明日、明後日は休みなので家で自主トレ。

 そして明日は昼からコンサートのリハーサルと本番。明後日は優希さんを見送りに空港へ。


 いろんな思いはあるけれど、まずは明日のコンサートを頑張らないと。

 夕食の後、自室にこもりギターとハモリの練習をする。

 少ししたら兄貴と合わせてみよう。


 優希さんと愛優ちゃんも家で合わせて練習しているだろうし、オレも兄貴と合わせて細かいところを調節してきた。今日は明日に備えての最終チェックというところだ。


 オレのハモリはサビの部分。

 音もちゃんととれているから、あとは本番に緊張しすぎて声がうわずらないように気をつけること。

 それと、リードギターでは間奏でメロディーを奏でるところに注意して……と。


 いろんなことを浮かべると、なんか緊張してきたなぁ。



 トントントンとドアをノックする音が聞こえた。 


「はーい」


 オレはいつものように返事をする。

 ドアの向こうからは兄貴の声。


「ちょっといいか」


「どうぞ~」


 ゆっくりとドアが開き、兄貴が顔をのぞかせる。

 兄貴の顔を見て、オレの緊張も少し和らいだ。


「ちょっと合わせてみるか」


 ギターを持った兄貴が、そう言いながら部屋に入ってきた。


「おう。オレも今そう思ってたところだよ」



 オレ達は取りあえず合わせてみて、お互いに気づいた細かい点をすり合わせて調整していく。

 兄貴とこうやってコンサートに向けて、同じ目標に向かって一緒に頑張れる日がくるなんて。


 オレ達兄弟は、子供の頃は同じものを見つめ、同じことをし、同じ時間ときを過ごしてきた。

 といっても、オレが兄貴のようになりたくて、兄貴と一緒に過ごしたくて、兄貴と同じものを見、同じことをして、同じ時間を過ごしたくて、いつも後をついて回っていたのだけれど。

 そんなオレを兄貴は嫌がらず、いつも一緒にいてくれて、時には相談にのってくれたりして。


 それもいつの間にかお互いに音楽と野球という違う道に進むことを選んでからというもの、違うものを見ることになったわけで。

 少し寂しい気もしたが、自分が信じる道を貫くことが大切だと教えてくれた。


 そしてまた今、同じものを見つめて力を合わせて頑張れる。

 なんとも感慨深いものだな、なんて。

 

 仲の良い兄弟でよかった。

 お互いを想い合える関係でよかった。

 そう思う。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 99 コンサート前日 拝読しました。 コンサート開始までのドキドキ感が伝わってきますね。 ここで一体何が起こるのか……!? 楽しみです。(^o^)
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