表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
97/148

 97 あの曲

 優希さんがアメリカ留学に旅立つ前に、兄貴たちのバンドが優希さんの応援も兼ねてコンサートを開くことになっている。

 出発の前日にコンサートなんて、と思うけれども。

 どうやらオレと愛優ちゃんにも来て欲しいということで、オレの部活に重ならないようにと、その日程になったらしい。


 そこでオレと愛優ちゃんにもステージでの演奏に参加するようにと要請があったのだが。

 高校生のオレ達が大学生の兄貴たちのバンドに……オレは少し迷ったが、大学ではなく、近くのちょっとしたコンサートホールで行うということと、兄弟揃って参加出来る機会なんて滅多にないことだと思い、快く受けることにした。


 オレと愛優ちゃんが一緒の舞台に……それもあの曲で。


 兄貴はオレ達の想い出の曲をステージで、兄貴、優希さん、愛優ちゃん、オレの4人で演奏したいと言うんだ。

 驚いたけど、とても嬉しかった。


 子供の頃から何でもそつなくこなす兄は、オレの憧れの存在だった。

 だから兄貴が野球を始めたら自分もやりたいと言ってマネをして、兄貴がピアノやギターを始めたら「オレもやる」と練習に励んだものだ。


 そして兄貴は野球を辞めて音楽の道に進んだが、オレは野球の道を選んだ。

 でも、いつまで経っても3歳という年の差は埋められず、ずっと兄貴の背中を追いかけている気がする。

 オレが日々の生活の中で、何か悩んだり迷ったりしたときには、時には見守り、そして時にはさり気なくアドバイスしてくれたり励ましてくれたりそっと背中を押してくれたり、しるべを示してくれる。

 いつかは兄貴のように大きなこころで周りを見渡せる人間になりたいと思う。


 そんな兄からの提案。

 断るわけがないじゃないか。


 オレは今でもたまには気分転換でギターやピアノを弾いたりするが、それはあくまでも趣味の領域であって、ひとに聴かせられるほど上手くはない。だけど、兄貴はいつも褒めてくれるし、なにより4人一緒にあの曲をやりたいって言うんだ。



 あの曲。

 オレが愛優ちゃんのことをまだ『涼風すずかぜ』と呼んでいた頃。

 折角一緒に帰れることになったのに、そういうことに慣れていないので、話題が浮かばないというかなんというか結局緊張のあまり思うように話もできず、ただ歩く作業だけで終わってしまった。

 チャンスを活かせず、ガックリと肩を落として家に帰ったとき、兄貴に事情を聞かれて。

 オレを励まそうと作ってくれた曲。


 そして愛優ちゃんと兄貴たちのバンドのライブに行ったとき、はじめて聴いた愛優ちゃんも凄く気に入ってくれた曲。


 兄貴がオレのために書いてくれた歌だけど、兄貴にも重なるところがあるんだろうな。今ではそう思う。


 その時のライブでは兄貴がアコースティックギターで弾き語り。

 途中から優希さんのピアノが入って盛り上げる、という演出だったが、今回はオレと兄貴がツインギターで演奏&歌い、愛優ちゃんと優希さんがピアノ演奏で盛り上げるというカタチにしたいとのこと。


 アルペジオで始まるあの曲……。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ