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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
96/150

 96 それから

 それから数日が経ち、オレは相変わらず平日は毎日朝から夕方まで部活に励んでいた。

 さとしともこれまで通り仲良くやっている。というか、ある意味以前より仲良くできているかもしれない。

 それはあの一件があったからだけど、お互いに相手を思いやることの大切さを学んだ気がする。

 今は共通の目標に向かって、励まし合いながら頑張れていると思う。


 共通の目標。

 それは、甲子園に出場すること。


 オレは全国高校野球選手権大会、つまり夏の甲子園に出場した際にピッチャー返しを受けて左足を痛めた。しかし今ではすっかり回復し、投球時もなんの違和感もなく投げられるようになっている。

 それどころか新しい球種の投球練習もはじめたところだ。

 

 ストレートで押すのもいいが、たまには変化球で相手の意表を突くことも必要だから。

 ピッチャーは投げられる球種が多いほど有利だが、あまりムリはできない。

 変化球は肘への負担が大きいからだ。

 自分のペースで少しずつ、少しずつ目標に近づいている感覚が励みになり、やる気も出る。


 バッティングの方も力みすぎていないか、ちゃんと身体をひねられているかなど、フォームの見直しをしながら練習に励んでいる。


 今から秋季大会が楽しみで仕方がない。


 しかし悔しかったあの試合のことを思い出すと、今でも胸の奥がチクリとする。

 次は、次こそは。


 そのためにも、高校野球秋季大会を目指して頑張ろう。

 秋季大会で優勝して、春のセンバツ高校野球大会への出場を果たす。


 それが今のオレの、そしてチームの目標だ。



 夏休みも残すところあとわずか。

 今は平日は部活に明け暮れているが、週末は子供の頃兄貴とよくキャッチボールをしていた公園に通っている。

 あの夏の甲子園の前日にも兄貴とキャッチボールをした公園だ。

 そして開会式リハーサル前日に、ある出会いがあった公園。


 オレの前に転がってきたボールを投げ返したことからはじまった縁。

 その公園でキャッチボールをしていた少年たちに、野球を教えて欲しいと声をかけられ、あまりの熱心さに練習の合間にでもいいならと引き受けた。


 礼儀正しいその少年たちは、小学5年生と3年生の兄弟ということで、ふたりとも野球が好きで上手くなりたいとか。でも、周りに教えてくれるひとはいないし、少年野球チームに入ると両親に負担をかけるから申し訳ないなんて、なんとも健気で、オレの部活の合間を縫って空いている時間でよければと、夏休みの間に数回練習に付き合うと約束を交わしたんだ。


 この少年たちはとても熱心で、覚えも早い。

 ひとの話はちゃんと聞くし、アドバイスを少しでも自分のものにしようと一生懸命に練習をしている姿を見ていると、オレの方も力が入る。


 時間を忘れてつい、夕方まで練習に付き合ったりしたものだ。


 しかしこの練習も夏休みが終わるまでとの約束。

 9月には学校も始まるし、オレは秋季大会に向けての練習で部活時間が増えるからだ。


 楽しい時間が過ぎるのは早いな、と感じる。




 * * *


 そしていよいよ優希さんがアメリカに旅立つ日が近づいてきた。

 オレは当日、兄貴と愛優ちゃんと3人で空港まで見送りに行く約束をしている。

 兄貴と優希さんの気持ちを考えると、少し切なくもあるが、みんなで元気に明るく見送ろうと思う。


 1年なんてあっという間だよ。きっと。

 なにか特別なことがない限り、優希さんの留学期間は1年ということだ。

 そのぐらいの期間なら、離れていても乗り切れるだろう。

 あのふたりなら、きっと大丈夫。

 オレはそう思う。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 96 それから 読みました。 野球の練習をしていて良かったです。(^-^)
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