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『べつにいーけど』   作者: 藤乃 澄乃
第6章 転機
94/150

 94 とある昼下がりの

 さとしと和解して、今後も友人として、良きライバルとして切磋琢磨し合える間柄になれればいいなと思う。

 根は良いヤツなんだけど、きっとあれだな。魔が差したってやつだな。


 オレはこころにつかえていたわだかまりがなくなって、ホッとしていた。

 その後、愛優ちゃんも倉井も以前と同じように悟に接してくれて、感謝している。


 しばらく4人で談笑して、その後カフェで解散となったわけだが、オレは愛優ちゃんを送っていくことにした。

 ほかのふたりに冷やかされながらも、「そんなんじゃねえ!」とかなんとか言って。

 だってさ。オレ達はべつに付き合ってるわけでもないし。

 まあ、以前に比べると少しは話せるようにはなったけど、オレの一方的な片想いに変わりはないし。


 それに夕方とはいえ、こんなに可愛い女子高生をひとりで帰すわけには……てか、オレは少しでも長く彼女と過ごしたかったのかな。


 カフェの前で倉井と悟と別れて、オレと愛優ちゃんは歩き出した。


「次は秋季大会?」


 愛優ちゃんの問いに、オレは答える。


「ああ。秋季大会で優勝して、春のセンバツ高校野球大会への出場を果たす。っていうのが今の目標」


「うん。頑張ってね。応援してる」


「ありがと」


「試合、観に行こうかなぁ」


 な、なんと!

 愛優ちゃんが観に来てくれるなんて!


「ホントに!?」


 めちゃくちゃ嬉しいじゃないですか!


「ほんとに!」


「楽しみだなぁ~。じゃあ、ますます練習頑張らなきゃな」


 とオレはニヤついた顔でガッツポーズをした。


 愛優ちゃんはケラケラと鈴のような可愛らしい声で笑う。

 オレは小さな幸せを、しみじみと感じていた。



 しばらくたわいのない会話を楽しみながら歩いていたが、ふとお互いに黙った。

 だけどその沈黙は心地良くて。なにか話さなければという義務感のない、安らかな気持ちでいられる。

 ああ、このままずっとこうして一緒に歩いていたいな。

 そんな風に思っていると、金属製の風鈴がチリリンと鳴った。


「優しいね」


 いや、風鈴ではなく愛優ちゃんの声だ。


「え、なにが?」


「江崎くんを許してあげるなんて」


「許すっていうか、悟の気持ちも解らなくはないし、ケガもなかったことだし。あれぐらいのことで大事な友だちを失う方が嫌だったのかな。半ばオレの独断で決めちゃったみたいだけど、よかった?」


「もちろん。ちょっとびっくりしたけど、空くんらしいなって思う」


「なら、よかった」


「それに、『誰かを羨ましい、嫉ましいと思ったら、相手を蹴落とすんじゃなくて、自分が相手より上に行くための努力を惜しまず、頑張っていくことの方が大事だし、建設的だ』ってキッパリ言って、カッコよかったよ」


 ……え。今なんと?

 なんと仰いました?


 も、もしかしてカッコいいと?

 うわあ、頬がポッと紅くなるじゃないですか!


 オレは返事に困って、照れ笑いとともに、人差し指で頬を掻いた。


「空くんのそういうとこ、好きだな」


 『好きだな』『好きだな』『好きだな』


 彼女の声がこだまする。


 おお! 愛優ちゃん!

 オレはあなたをお慕い申し上げています!



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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